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「それじゃあ、試験5日前は授業もなくなるらしいから、そこからしようか?」
「間に合いません!なので・・・今日から5日前まで授業終わりで交互にしましょう。」
「レオーネの言う通りだな。そうした方が頭によく入るな。」
なんかもう試験に備えてが凄すぎる。
「わかった。そうしようか・・・。俺も王国史が少し心配だから教えてほしいかな?」
「それぐらいならいくらでも教えますわ!」
一応話はまとまり、今日は勉強を見ることとなった。
「場所は男子寮でいいかしら?」
「構わないよ。じゃあ、ご飯の材料を少し買いに行ってくるから先に帰っててくれるか?」
「わかったわ。先に始めとくわよ?」
「あぁ。じゃあ後で。」
そう言って門で別れた。
目的もあったので、買い物では間違いなかったのだが、昨日の毛皮の加工のことであった。
「毛皮は知られるわけにはいかないしな。」
「そうですね。この格好もばれたくないですもんね。」
今の格好はギルド仕様である。
「さてと、マスターに言われたのはここだけど・・・営業しているのか?」
「そうですね・・・。普通の家っぽいですけど・・・。」
見た目はすごく普通の民家であった。
「ここでするのか?とりあえず、訪ねてみよう。」
ドアをノックし、少し待つと、物腰の柔らかい女性が出てきた。
「あらあら・・・。珍しいですわね。どういった用件でしょうか?」
「こちらに、毛皮加工の最高な方がおられるとギルドマスターより紹介いただいてきたのですが。」
「そうですか。ですが、何年も前に店を辞めているので・・・ほら、普通の民家でしょ?」
「ですが、話・・・いえ・・・現物だけでも職人に見てほしいのです。」
「・・・分かりました。私が代わりに見させていただきますので、中にどうぞ。」
中に案内されて進んで行った。
家の中は整頓されており、物も綺麗に並んでいた。
「こちらにお座りください。飲み物を持ってきます。」
「いえ。お構いなく。このままでいいですよ?」
「私がのどが渇いた・・・ってことにしましょう。話が長引きそうな予感がしますので。」
「では、お言葉に甘えさせていただきます。」
女性は奥に行き、飲み物を用意しに行った。
「これって茶菓子を出した方がいいよな?」
「そ・・そうですね。あのサクサクした奴でもどうでしょうか?」
「クッキーね。それがいいかも。だけど、サクサクしたのは粉が飛ぶからしっとりの方を出そう。」
アイテムボックスから袋に入れておいたクッキーを取り出した。
「お待たせし・・・あら・・・それは何でしょうか?」
「魅惑の食べ物とでも申しましょうか?」
そういいながら、袋の口を開け皿にのせると焼きたての匂いを漂わせ、魅了していく。
「こ・・これは何て言う食べ物でしょう?」
「これはクッキーといいます。まずは一つお召し上がりください。紅茶とものすごく合いますよ?」
リュシオルに進められ、プレーン味のクッキーに手を伸ばし、一口食べる。
すると、顔がすごく緩み幸せそうな顔になった。
「他にも味があるので食べてみてください。」
そう言い、ナッツ入り・紅茶・ゴマ・アプジャム入りを取り出し、皿に並べる。
女性は目を剥き、驚いた後手を伸ばしゆっくりと他の味も食べていく。
リュシオルとルーチェもお気に入りの味を食べていた。
「これは凄いですね。これはどこに行けば買えるのですか?」
「申し訳ないですが、クッキーは売っていません。」
「なんですと・・・じゃあこれは・・・。」
「私の手作りです。」
「・・・・・そうですか。・・・・では、少しズレてしまいましたが、本題に移りましょうか?」
「そうですね。ではこちらを見ていただきたい。」
少し考えた女性だが、出された毛皮の切れ端を見て驚いていた。
「こ・・これは・・・」
毛皮を見た瞬間に、知っているような目をしていた。
「なんの毛皮か分かりますか?」
「たぶんですが、ケルベロスのではとお見受けしましたが・・・。」
「さすがですね。やはりあなたが職人の方でしたか。」
「!!!よく見破りましたね。そしてケルベロス毛皮を見るのはこれで2度目です。」
「毛皮を見る目を見れば分かります。それで、加工はしていただけるでしょうか?」
リュシオルはジッと女性の目を見て返答を待った。
女性は目を離さず、見つめ合い、何かを見目た目をしてから目を離した。
「いいでしょう。加工します。しかし、私の思うままに加工させていただけますか?」
「一流の職人がしてくれるのであれば思うままに。用途だけ果たせれば大丈夫です。」
「わかりました。そして代金ですが・・・。」
「いくらかかりそうですか?」
「そうですね・・・。今日のクッキーを1年分としましょうか?」
「「へ?」」
女性の言葉は耳を疑うようでした。
「だから、クッキーを1年分です。先ほどの袋の大きさを1日と考え、1年分を報酬とします。」
「そ・・・それでいいのですか?」
「マスターから聞いているでしょ?私が変わっているって。」
「え・・・頑固とは聞いていましたが・・・。」
「あながち間違いではないわね。私は報酬はお金はいらないの。もうたくさんあるから。その代り変わったものを報酬としてもらうことにしているの。で、今回はクッキーというわけ。」
「そうですか・・・。」
「食べ物だからアイテム袋に入れないといけないわね・・・。」
「そちらも用意しますのでそれでどうですか?」
「あら!ありがたいわ。では、頑張って作って頂戴ね?」
「はい。必ずそろえて持ってきます。」
握手を交わし、名前を名乗った。
「私はエーヌよ?」
「私は・・・シャドーブラックとお呼びください。こっちはシャインゴールド。」
「では・・・案の方を聞いていこうかしら?」
そこから何を作ってほしいか要望を伝え、エーヌの家を後にした。




