~105~
リュシオルは気まずい思いをしながら、顔を伏せていた。
「楽にしてくれ。そしてこのまま別室に行ってゆっくり話を聞かせてくれ。」
「はっ!わかりました。」
王に案内されるがまま、別室に案内された。
「さあ座ってくれ。」
「はい。失礼します。」
案内されたのは、個人の話し合いをするようなそんな部屋だった。
「まずは礼を言わせてくれ。本当にありがとう。」
王は座りながらだったが、頭を下げていた。
「王様。ギルドで活動してる冒険者風情に頭を下げないでください。」
「これは、王としてではない。この子の一人の親として頭を下げているのだ。」
「そうですか・・・わかりました。どういたしましてです。」
素直に礼を受け取ることにした。
「それで、どこに攫われていたのだ?」
「少し離れた山の中腹になります。そこに洞窟があってほぼぐるぐるに巻かれて監禁されていましたね。」
「そうか。何もされていなかったのだな。それはよかったなグローリアよ。」
「よかったのかわかりませんが・・・貞操は守れたので良かったのかもしれません。」
「そうだな・・・。侍女長!」
王が大きな声を上げて、侍女長を呼んだ。
「はい。何でしょうか?」
ものの数秒で侍女長は現れた。
「グローリアを部屋に案内して欲しい。怖い目にあったのだ・・・。ケアをしろ。」
「っは!かしこまりました。姫様行きましょう。」
「え・・・はい・・・。」
この場所から離れたくなさそうな顔をしながらグローリアは下がった。
「『あの顔は・・・この冒険者に惚れたようだな。』すまないな。君は最近名前の挙がっているシャドーブラックか?」
「はい。そう呼ばれています。」
「そうか・・・素顔は見せてくれぬか?」
「あまり見せたくないのですが・・・。」
王に顔を見せてほしいと言われたが、あまり見せたくないので断ろうと思ったのだが・・・。
「どうしても見たいのだ。他には内密にするから見せてくれぬか?」
「・・・わかりました。内緒にするのを約束してくださいね?」
王は頷き、了承した。
しぶしぶ仮面を外し、素顔を晒した。
「!!!それは本当の偽装だったのか!見つからないわけだ・・・。」
「探したのですね。」
「あぁ。やはり有名になってくる冒険者は身元を調べたりして知っておかないとならんのでな。君のことを調べていたのだが、どこからも上がってこなかった。」
「まぁ変装していましたからね。それに私は今学生ですし。」
「!!!君はまだ学生なのか?!」
学生だったことにびっくりしていたようだ。
「はい。だから今変装していないといけなかったんです。」
「もしかして、グローリアと同じクラスか?」
「ご察しの通りです。ばれると大変ですからね。」
「『それ以前に大変な気がするが・・・。』そうか。でも、直接話せてよかった。これからはこれを持つといい。」
リュシオルが手渡されたのは、メダルの付いたペンダントである。
「これは何でしょうか?」
「これは私が許可した者しか持てないものだ。私の信頼の証だな。」
「こんなもの貰えないです・・・。」
「いや。これを渡すだけの実績があるはずだ。たぶん港町の烏賊は君だろ?」
「!!!わかっていらっしゃったんですね。」
「いや。特徴しか聞いていなかったからカマをかけたのだがそうだったか・・・。実力と人柄は問題ないからなこれを渡しておくのだ。これからももしかすると世話になるかもしれないでな。」
少し茶目っ気にウィンクをしながら渡してきた。
「そうですか。わかりました。」
素直に受け取った方がいいだろうと思い、受け取った。
「ところでこれが2つあるのは?」
「相方に渡しといてくれ。たぶんシャインゴールド・・・ルーチェと言ったか?」
「・・・お見通しだったんですね。」
「学院の優秀な者は知っておかないと、将来勧誘できないであろう?」
「それでですか・・・。わかりました。」
やられっぱなしである。
「やられっぱなしだと思っておるか?」
「いえ!滅相もない!」
「顔に出ておったわ。実際にこうでなくては貴族相手に腹芸が出来ぬのでな。」
「はぁ~王も大変なのですね。」
「色々とあるのだ。早く息子に代わってほしいものだ。変わった後は王妃と旅に出ようと約束しているのでな。」
「もう引退宣言ですか・・・。もう少し頑張ってください。」
「そうだな・・・。話はこれぐらいにして・・・礼に食事を用意させよう。もちろん他にも礼は用意するがな。」
王様から食事の誘いがあった。
「ありがとうございます。ですが・・・。」
「寮の方にはもう知らせたから大丈夫だが?」
「いつの間にですか・・・。さっき分かったとこでしょう・・・。顔を見て確信しただけで、そうだろうと思って先に走らせたのだ。なに、ばれないように伝えてるから大丈夫だ。」
「でも・・・。」
「シャインゴールドも呼んで構わぬぞ?」
「ありがとうございます。『ルーチェ。聞こえるか?』」
すぐにルーチェに連絡を取った。
『何でしょうかリュシオル様。』
『王に食事を誘われたんだけど来る?』
『奴隷の私がいいのでしょうか?』
『いいんじゃないか?それに料理法を覚えてまた作ってほしいから来てくれないか?』
『そういわれたら行くしかないではないですか・・・。わかりました。シャインに乗ってすぐに行きます。』
「連絡が取れました。虎に乗ってくるので通すように言っていただけますか?」
ルーチェに連絡をし、仮面を被りなおした。
「わかった。近衛隊長はいるか?」
呼ぶとすぐに現れた。
どこかで盗み聞きしているのではないかと思うぐらいである。
「シャインゴールドも来るから通すように。」
「っは!かしこまりました!」
勢いよく部屋を近衛隊長は出ていった。
初感想をいただいて、興奮しております!!
それにブックマークも増えてきて・・・。
感無量です^^




