~104~
洞窟を出ると、ヴァイスとシャインがすでに荷馬車に盗賊を積んでくれて、元の姿に戻っていた。
「この子達は?」
「私の召喚獣です。」
「なるほどね。それにしても綺麗ね・・・。」
「「お褒め頂きありがとうございます。」」
「しゃ・・・喋った?」
ヴァイスとシャインが喋ったことに驚いていたようだ。
「この子達は上位なので喋ることが出来るんですよ。」
「なるほど。わかりましたわ。帰りはどうしますの?」
「わたしと一緒に乗っていただくことになります。」
ヴァイスの背中にひらりと乗り、手を差し出す。
姫様は差し伸べられた手をつかみ、ふわりと浮かびリュシオルの前に納まった。
「魔法を使いましたの?人間がこんな簡単に浮かぶわけないですもの。」
「よくわかりましたね?その通りですよ。」
にっこりと微笑みかける。
さすが王族だと思える対応をしてくるが、心の中はこんな感じである。
『何この人カッコ良すぎますわ・・・。騎士より強くて貴族より紳士的・・・。顔も半分見えないですけど確実にイケメンですわ!それに白馬とかおとぎ話の王子様ですわ!』
絶賛興奮中であった。
「じゃあ、この後を頼んでもいい?」
「かしこまりました。後ほど連絡をください。」
「わかった。では、姫様行きましょうか?」
「え?一緒に帰らないのですか?」
「こっちの方が早いので。しっかり捕まっててくださいね?お願いね?」
「はい。ブラック様。」
ヴァイスが返事を返すと、駆け出し羽ばたいて空に駆け上がった。
『え?え?ほんとに飛びますの?すごいですわ!すごいですわ!王子さまは飛べますのね!是非とも素顔を知りたいですが、それはたぶん叶わないので匂いを覚えますわ!クンクン・・・はぁ~いい匂いですわ・・・。』
表情に出さないがまだ興奮中である。
「そろそろ王城に着きますが、どうしますか?門から入りますか?それとも入口まで行きますか?」
「門からは入口が遠いので、入口まで行って?でも結界が張って合って無理ですわ。」
「あぁ~あれですね~。問題ないですよ?すり抜けます。」
「!!可能ですの?」
「あなた様がいらっしゃいますので。普段は壊さないと無理ですね。」
「どういうことですか?」
「少しお手を借りていいですか?」
王城に近づいてきたので素直にリュシオルの手を取った。
すると、自分の魔力を少し触られる感覚がした後、その魔力をリュシオルに補充され、ふんわりと魔力の膜に包まれた。
すると、結界にぶつかると思ったらスルッとすり抜けた。
「こういう仕組みです。王族の魔力がキーになっています。この方法はご内密に。」
シーっといたずらが成功したような仕草をして、さらに姫様を魅了していたとは、誰も突っ込む人がいない。
「「「誰だ!!」」」
「「侵入者だ!!」」
リュシオルが侵入したことにすぐに気づき対応した。
「兵は優秀ですね。」
「自慢の兵ですわ。でもこれでは降りれなくなってしまいますので・・・。控えなさい!!私は、グローリア・ロワ・ヘイナードですわ!!」
「「姫様?!」」
「近衛兵を呼べ!!姫様のご帰還だ!」
下は騒がしくなったが、降りるための場所が開けられた。
「あそこに降りてくださいませ。」
「はい。」
ふわりとヴァイスを着地させ、リュシオルは軽やかに降りた後、グローリアの手を取り降ろした。
「ここまでご苦労でした。この後も少し付き合っていただけますか?報告しなければなりませんので。」
「承知しています。」
「姫様!その者はいいのですか?!」
「恩人に刃を剥けることを禁じます!何をしているのですか。早く降ろしなさい!」
「仕方ないです。これを見せたら少しは分かってもらえますかね?」
まだ、敵視されていたので、二つ名になっているギルドカードを見せた。
「あなたは・・・失礼しました。どうぞお通りください。」
「隊長!どういうことですか!?奴は!!」
「安心しろ。あの方は正真正銘のシャドーブラック様だ。」
「え・・・あの人が・・・。年齢も俺より若そう・・・。」
衝撃の事実で若い兵士は茫然としていた。
「案内をしなさい。王は今いずこに?」
「姫様を心配されて、まだ広間におられます。」
「では向かいます。ブラック様いいですか?」
リュシオルは頷いて姫様の後を付いて行った。
付いて行ったのはいいが、中々目的地に着かない・・・。
「王城ってこんなに広いのですね。」
「無駄にね?いつも困っていますの。」
「そうですか・・・。」
会話もなくなり、黙々と歩くこと数分。
やっと目的地の広間に着いた。
「開けなさい。」
「「グローリア姫の参上です!」」
「さぁ入りましょう。」
開かれた扉の中には、大臣やらなんやらと人でごった返していた。
「これはすごいですね・・・。」
「まぁ~私が攫われたのですからね。」
二人でため息をつきながら中に入って行った。
ザワザワと騒がしかった広間は姫様が入ると静かになり、あっけにとられた者もいるようだった。
王の前に着き、膝をつき、臣下の礼をした。
「よく戻ったグローリアよ。」
「ご心配をかけました。こうして無事に戻ってきたことを報告します。」
「ということだ。お前たちは皆下がり、帰りなさい。」
王は他の者を帰らせてしまった。
「何をしている?兵も下がらせよ。」
「ですが王!得体のしれない者がいるのに!」
「黙れ。そして下がるのだ。」
「はっ・・・畏まりました。」
王は全員下げてしまい、残ったのは王と姫とリュシオルだけである。




