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プロローグ
〈プロローグ〉
安城春菜は不安をかき立てられ、思わず立ち止まった。
カバンの中にある携帯端末はチカチカと、メールの着信を知らせる光が点滅している。その点滅の激しさがメール内容を表しているようで、春菜の鼓動が早まった。
振るえる手で携帯端末を操作し、メールを開く。
差出人は一つ年上の幼馴染み、内田風羽子。
不安は的中した。
『これって、ヒイロくんだよね!?』
疑問形で聞いているが、確信のある物言い。風羽子は同意を求めるために、春菜にメールを寄越したのだ。
春菜は添付ファイルの画像を見て愕然とする。
「こんな事、出来るのは、ヒイロだけ……」
春菜は絶望を感じ、その場に立っている事が出来なくなった。
膝から崩れ落ちる。
そして人目もはばからず、怒りをあらわにした。
「二年も経って、どうして……あの時、カードは全部、燃やしたのにっ!!」
春菜は携帯端末を握り締め、反対側の手で何度も、地面に拳を打ちつけていた。