いざ、魔王との決戦!
「タイガー、俺達はついに魔王の城にやってきたんだな」
「遠くからは毎日のように見てきたけど、こうして目の前で見ると案外でけーな」
ぼうけんとミスタータイガーは魔王の城を見上げた。
「でも、この城ってどうやって入ればいいんだ?」
魔王の城の正面には大きな扉で閉ざされていた。ぼうけんはこの扉を勝手に開けてしまってもいいものなのか悩んでいた。開けるにしてもどうやって開ければいいかもわからなかった。見るからに頑丈で鍵が無いと絶対に開かないような扉である。ミスタータイガーは強引に開けようと扉に手をかけたがピクリとも動かなかった。「ダメだ。この扉動く気配が全くない」その様子を見たぼうけんは何かに気がついた。
「インターホンがあるぞ」ピンポーンと確認もせずに鳴らした。数秒後にインターホンに誰かが出た。「誰だ?」迷わずぼうけんは返事をした。「宅配便です」まっぴらな嘘だ。ミスタータイガーはその手があったかと感心をしていた。しばらくして、扉がゆっくりと自動で開いた。こうしてぼうけん達は魔王の城への侵入に成功した。外見が外見だけに中もとてつもなく広い。「魔王の部屋はどこだ」ミスタータイガーは周りに見えるたくさんの部屋を見渡し、混乱していた。「タイガー」ぼうけんはひとつのドアを指差し言った。そのドアは他の部屋のドアと比べてやたらと大きく、さらに魔王の部屋と書かれていた。「この部屋だな」誰もが見て一瞬にしてわかることだがぼうけんは確認した。「あぁ」ミスタータイガーは頷いた。そして、ぼうけんはドアを開けた。そこには魔王が大きな椅子に座っていた。
「ふふふふふふ」魔王はぼうけんを見るなり、笑みを浮かべた。「何がおかしい」ぼうけんは魔王を睨み叫んだ。「ふはははははは、ついに来たか。楽しみにしていたぞ」魔王は待ち望んでいたのであった。「俺も楽しみにしていたぞこの時を」ぼうけんも同じくして、この日を待ち望んでいたのであった。魔王は椅子から立ち上がりぼうけんに向かって言った。「ごちゃごちゃとうるさい。さっさとよこせ、バガボンド全巻を」その瞬間場が静まり返った。無言の間がこの場を包んだ。先に口を開いたのは魔王であった。「え、宅配便じゃないの?」魔王が何を言っているのか理解するまでに数秒かかって思い出した。「そういえば、そんな嘘ついたなぁ」ぼうけんは、さっきついたばかりの嘘をすかっり忘れていた。「ふざけるな!!!!!!!」魔王は机を思いっきり叩いた。魔王は怒りに震えていた。
「だったら、貴様らは何をしにここに来たというのだ」
「おまえを倒しに来た」
それを聞いた魔王は何も言わず、ものすごいスピードでぼうけんに向かって走ってきた。
「まぁ待て」ミスタータイガーが二人の間に入った。「なんだ貴様は」魔王は動きを止めた。
「バガボンドなら俺が貸す」その一言で魔王の表情は和らいだ。だけど、それは一瞬に過ぎなかった。「借りては意味がない。自分のものにして初めて意味があることをわからんのか!」
魔王の拳はミスタータイガーを直撃した。ものすごい勢いでミスタータイガーは吹っ飛んだ。
「次は貴様だ」ぼうけんを睨み拳を構えた。「この勝負、俺が終わらせる」ぼうけんも拳を構えた。
そして同時に拳は繰り出され、お互いの拳に直撃した。凄いパワーのぶつかり合い。両者一歩も引かずに拳は拳を捉えたまま止まっている。だが、だんだんとぼうけんが下がっていく。
魔王の方がパワーはわずかに強く、ぼうけんはどんどんと押されていった。
「これで終わりだ」魔王は力をさらに上げた。
「気づかないのか」ぼうけんは魔王の拳が目の前に迫っている中、呟いた。
「俺達は負けない」俺とは言わずに俺達とぼうけんは呟いたのだった。
魔王はミスタータイガーを飛ばした方向を見るがそこには、ミスタータイガーの姿は無かった。
ミスタータイガーは魔王のすぐ目の前、懐まで駆けつけていた。そして懇親の拳でアッパーをした。
それによって、魔王の拳は解き放たれた。そこをぼうけんは見逃さず、素早く拳を腹部にぶつけた。
「俺達の勝ちだ」倒れている魔王に向かって言った。ぼうけんはミスタータイガーの怪我を心配していた。「タイガー、大丈夫か?」「なんとか大丈夫だ」ニッコリと笑ってみせるミスタータイガー。
「おっと、明日はバイトだっけか。そろそろ帰るとしますか」ぼうけん達が部屋を出ようとしたときだった。「まだ、終わっちゃいねぇ」魔王が起き上がっていた。「まだ、立てるのかよ」ぼうけんは驚いた。「さっきは油断したが次はそうはいかない」拳を構える魔王を見てぼうけんは思った。勝てる気がしない。今の魔王を倒すことができないことを悟っていた。さっきよりすごいスピードでぼうけんに向かって魔王は走ってきた。
だが、魔王はぼうけんの目の前に来ることもなく倒れた。
倒れている魔王の前に一人の少年が立っていた。「魔王もたいしたことないな」少年はつまらなさそうに呟いた。「おまえは誰だ?」ミスタータイガーは少年を指差し言った。
「オレ?オレはドグマ。強いやつを倒しに来た。君たちは強いの?」
ぼうけん達は答えられなかった。「まぁ、魔王なんかに手こずってるようじゃ弱いね。オレ弱いやつには興味ないから」少年は一瞬にして消えたと思ったら、ぼうけんの背後にある大きなドアを開けていた。そしてそのまま去っていった。ぼうけんには少年がどうやって魔王を倒したのか見えなかった。
そして、今も少年の姿が見えなかった。何もわからないままぼうけんとミスタータイガーは魔王の城を出て、それぞれ自宅へと帰った。