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花屋の娘  作者: a-m
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2

ロシュ・ガルシナはウォネール王国が誇る、王直属騎士団、第1騎士団の団長であった。


いつも無表情、そして戦場では恐ろしいほど冷酷な司令官。


だが、巷に流れる彼の愛妻ぶりを現した"おとぎ話"は騎士団の仲間内でも酒のつまみとされていた。






そんなおとぎ話が世に広まる原因が起こったのは約4年前のある日のこと。



その当時は副団長であったロシュ。


彼は金曜日の夜は、絶対に同僚と酒場に行く事もなく、足早に城をあとにする。


そして月曜日の朝、畏怖を抱く程、整った顔が少しだけだらしなくなっているのだ。


その当時の団長であった、ロシュと幼馴染兼親友でもあるモーガンが皆の好奇心を代表してロシュに尋ねた事がある。


「お前、怖いぐらい綺麗な顔して、そんでもっていつも無表情だから、さらに怖くなってたりするのに、なんか月曜日はいつもちょっとだけ機嫌良さそうに見えるよな。何で?」


一回りも年上であるモーガンを射抜くように見たロシュは、興味津々に盗み聞きしていた他の隊員をも、驚かせる言葉をさらりと口にした。


「平日は騎士団としての仕事がゆえ時間が取れず会えない愛する者と、休日は時間を気にする事なく会えるからな。」



モーガンは本当に団長か?と疑われても仕方ない程までにだらしない顔をして親友の顔をまじまじと見た。


他の騎士隊員はというと、現実であると受け止められなかったのか、皆固まっていた。




「何だ、そのアホ面は。気を引き締めろ。」


一人我関せずといった態度で訓練の続きを始めたロシュにモーガンはため息をついた。


「お前・・いつからそんな愛妻家になったんだ?」


そんなモーガンの言葉にロシュは一瞬だけ動きを止めたが、何も言い返す事はなく訓練を続けていた。


それからである。


巷に有名な"おとぎ話"が流れ始めたのは。






おとぎ話が世に浸透して早4年。


金曜の夜、ロシュは愛する者を腕の中に抱いていた。


「エレナ・・俺から離れるな。」


会えば必ず口にするロシュの言葉にエレナはいつもと同じように微笑んだ。


「ロシュ様が私を望んでくださる限り、私はロシュ様のお側を離れません。」


これも決まって言うエレナの答え。



エレナはそっと瞳を閉じ、たくましいロシュの胸に己の身を近づけた。


「エレナ・・寝るのか?」


優しく問いかけるロシュにエレナは何も答えず、今あるこの幸せを噛み締めていた。







ロシュ様


早く私をお捨て下さい


私がこれ以上欲を出さない内に早く私をお忘れ下さい


もし、貴方様が私をほんの少しでも愛していなければ、私は捨てられる事を望みはしなかったでしょう・・。


ですが、貴方様が私に与えて下さる愛が虚偽ではないと気づいてしまったから・・・。


お願いです。


私が貴方様に対して独占欲を出す前に・・早く私をお捨て下さい。


私が貴方様に真に愛される奥様を嫉妬してしまう前に私からお離れ下さい。


貴方様は優しいから私以上に今のこの関係を苦しんでいらっしゃるでしょう


ロシュ様・・・覚悟は出来ているんです。


最後の時、私は貴方様の幸せを願ってお別れ致します。


我が侭など言いません。


精一杯の笑顔でお別れ致します。


だから、ロシュ様。


私を捨てて下さい。


ちょっと設定間違えて編集しました。

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