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魔王はハンバーガーがお好き

魔王は殺人鬼がお嫌い

作者: 28号

「魔王はハンバーガーがお好き」の外伝小説です。

【Episode31 変身】の裏話。ハロウィンでお化け屋敷で殺人鬼なお話。

「嫌だ」

「そう言わずに」

「断る」

「でもせっかくだし」

「絶対に入らない」

 私が言うと、師匠が拗ねた顔でうつむく。

 そんな表情をされると頷きたくなるが、これだけは、これだけは嫌である。

「せっかくのハロウィンなんだしいいじゃない」

「ハロウィンとはお菓子を貰う日であろう? なのに、何故こんな…こんな恐ろしい物に入らねばならない」

 そう言って私が指さす先には、古い廃墟を利用して作られた恐ろしい屋敷がある。

「お化け屋敷に入るのも、ハロウィンの醍醐味よ」

「でもお化け屋敷と言うことはお化けもいるのだろう」

「大丈夫、作り物だから」

「しかし先ほどから悲鳴が聞こえてくる」

「あれは大げさなだけよ。ちょっと怖がらせるだけ」

「自分の存在を棚に上げたことを言うが、怖いのは嫌だ」

 そう言うと、師匠はがっくりと肩を落とす。

 言い過ぎてしまっただろうか。そう思って慌てて伺うと、師匠は更に恐ろしいことを言い出した。

「じゃあ、チャーリーと入ってくる」

 丁度そこにいるしと師匠が指さした先では、なにやらチャーリーがこちらを必死に伺っている。

「元々はあいつに誘われてたんだけど、魔王と入りたいから一回断ったの」

 その言葉に何故だか胸が熱くなる。

 自分を選んでくれたことは嬉しい。それがお化け屋敷のパートナーでなければと思うが、それでも凄く嬉しい。

「…でも、そんなに嫌ならもう良いわ」

 そう言ってきびすを返す師匠の腕を、私は何故だか掴んでしまった。

「やっぱり、私が入ろう」

 その上口が勝手にそう告げていた。

 これはまずい。絶対後悔する。

 そう思っていたのに、気がつけば師匠と一緒にお化け屋敷の中に足を踏み入れていた。

 うれしさのあまりちょっと我を忘れていたのだろう。

 これは失態である。

「……師匠、音楽がもう怖いんだが」

「まだなにも出てきてないわ」

「むしろ出てきて欲しくないのだが」

「出てこなきゃ面白くないでしょ?」

「ちなみに、具体的には何が出てくるのだ?」

「今年は殺人鬼特集だから、レザーフェイスとかブギーマンとか……」

 それ以上は聞けなかった。

 私は目をきつく閉じ、それから師匠に縋り付く。

「やはりダメだ、私にはお化け屋敷は無理だ!」

「そっそんなにくっつかないでよ!」

 なにやら師匠が焦っている声がするが、目を開ける勇気はもちろんない。

「頼む、このまま出口まで連れて行ってくれ!」

「…わっわかったから、もう少し離れて」

「いやだ、怖い」

 更に力を込めて、私は師匠を抱き寄せる。

 すると腕の中の師匠が、小さく飛び上がったのがわかった。

「これじゃ歩けないでしょ! ちゃんと連れてってあげるから、すこしだけ腕ゆるめて!」

 歩きにくいと言われたので、私は渋々師匠に身をゆだねることにした。

「本当は私が抱きつく予定だったのに……」

「何か言ったか?」

「何でもない」

 不満そうな声と共に、師匠がゆっくりと歩き出す。

 腕の中の師匠の温もりで、私は叫び声を上げることなく出口までたどり着くことが出来た。

 途中なにやら物凄く怖い声や物音はしたが、そう言うときは師匠をギュッとしてやり過ごした。

「……いいわよ、目を開けても」

「もう外か?」

「うん」

 恐る恐る目を開けると、目の前には不機嫌な顔の師匠が居る。

「そろそろ、腕を放してくれる?」

 そこでようやく、私は師匠を抱きしめたままだったことに気付く。

 だがしかし、あまりの恐怖で体が固まってしまったのか、腕がなかなか外れない。

「すまない、もう少しだけこのままでいてもいいだろうか?」

「ずっと目を閉じてたのに、そんなに怖かったわけ?」

「音楽は不気味だし、叫び声とかは聞こえたし」

 耐えられないほどではなかったが、怖いことにかわりはない。

「だからもう少しだけ」

 むしろもっと近くで師匠を感じたくて、私は師匠の髪に顔を埋める。

「ちっ近すぎる!」

「遠いと困る」

 そう言って師匠をギュッと抱きしめると、ようやく安心することが出来た。

「師匠」

「なによ」

「お化け屋敷は、嫌いだ」

「……私は、好き」

 だから来年も入ろうと言われたが、私は聞こえないふりをして師匠の温もりに縋り付いた。

 とはいえ師匠が入ると言ったら、また体が勝手に動いてしまう気もする。

 お菓子が貰えなくなるのは嫌だが、来年のハロウィンが中止になればいいと思った。


「魔王はハンバーガーがお好き」完結に伴って色々素敵なハプニングが起きましたので、小さいながらもお礼もかねて投稿させて頂きました。

日本ではお化け屋敷と言えば夏ですが、アメリカではハロウィンが本番。

結構えげつない物も多いですが、師匠はえぐければえぐいほど燃えるタイプです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい [気になる点] そんなに怖くなかった。 [一言] ハロウィンにお化け屋敷に入る発想が面白かったです。 次回作、楽しみです^^ なんか小説家になろうのサイトの皆さんが文章力がすご…
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