02月07日、土曜日
「帰りたくねえー」
「はいはい」
部活のあと、ごねる藤也の手を引いて、私は須藤造園に向かっていた。
「昨日、ちゃんとバイト行くって言ってたじゃん」
「やっぱ嫌だ! あの親父の『はいはい』って態度がムカつくんだよ!」
「うちのママもそうだよ。どこの親も同じだって。60日目なんだから、頑張って」
「そうかもしんねえけどさ!」
喚く大男を引きずるのは目立つけど、男子の尻を叩くのはサッカー部で慣れてるから、私は躊躇も容赦もなく藤也を連れて歩いた。
「ほら、もう着くよ」
「やだ! メイサをうちに連れて帰るのもやだ……」
「じゃあ私帰るから、自分で帰って」
「俺も連れてけよ!」
「はいはい、行くよ。お邪魔しまーす」
お花屋さんを覗くと、藤也のお父さんと、もう一人、背が高くて目つきの鋭い男の人がいた。デカい……怖い……。
「メイサちゃん、こんにちは。瑞希、この子、藤也の彼女」
「へえ。藤也、連れて帰ってきてもらってんの? ウケる」
「伯父さん、なんで!?」
瑞希さんと呼ばれた人が覗き込むと、藤也がバッと立ち上がった。
「納品。ついでにお前らと昼飯食おうかと思ったんだけど」
ジロッと睨まれる。
私は藤也から手を離して下がった。
「あっ、私は帰ります。藤也を連れてきただけなので……」
「藤也?」
「んだよ、クソ親父」
「他所のお嬢さんに迷惑かけて、お前はそこで不貞腐れてるわけ? 瑞希も睨まない」
「に、睨んでねえよ。悪いな。こういう顔なんだ」
「……メイサ、ごめん。ありがと。夜、連絡する」
「うん、がんばってね。えっと、失礼しました」
頭を下げて花屋さんを出た。
須藤家の人たちは、みんな背が高くて顔がいいから緊張する。
親の前で不貞腐れてる藤也は、かわいかったけど。
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