異変探し
今日も今日とて、俺こと桐山要は学校の屋上で、友である山崎直人と一緒に弁当を食っていた。
ここは天野水高等学校。約七百人の生徒がおり、地区の中で一番生徒数が多い高校としてなをはせている。
そんな高校に入っている俺は、この世界の秘密を知っていた。
「なあ、何ジロジロ見てんだよ、、、そんなに俺のこのツルツル頭が気になるのかよ」
直人はそう言って、そのゴールデンボールと化した頭を触る。
そう、この世界は、俺の身の回りに何かしらの異変が起こる世界なのだ。しかし、異変は俺以外の人にとっては常識となっている。現に今、茶髪が生えていた直人は、ハゲになっており、当の本人は気づいていない。そしてそれをおかしいというクラスメイトや人は、誰もいない。
そんな直人を、俺はジロジロ見ながら笑っていた。直人のハゲを見れるとは。本当に、この異変は過去一番面白いと言っても過言じゃないな。
「おい笑うな!!吐くぞ!?」
「きたねぇよ」
渾身のボケに、俺は間髪入れずにツッコミを入れる。直人とは昔からの仲で、いっつもそばにいる。直人との関係は、俗に言う親友。というものだろう。
「そんあじゃ、ちょっとトイレ行ってくる。そこで待っててくれ」
「あいよ。早く戻ってきてくれよ?俺、要のこと大好きなんだから、いなくなっちゃうと死んじゃうんだから」
「ヤンデレかよキッショ」
そう、息のあった漫才もどきをして、俺は屋上の扉を開け、トイレに駆け込むことにしたのだった。
「さて、今回の異変は、、、」
右ポケットから、古びたノートを見つける。このノートは、桐山家に代々伝わる伝説のノートであり、異変を解決するためのノートである。これがないと、異変は解決できないどころか、世界の秩序が、異変によって乱れてしまうのだ。桐山一族は、そのため国の上層部から、大切な存在として敬われていた。
そして俺は、その少し黄ばんだページに、今回の異変の内容を綴る。
「山崎直人の頭がはげている。っと」
笑うのをこらえながら、それを綴り終えたあと、俺は直人の下へ行くために、屋上へ走っていくのだった。
「おそかったじゃんか。なにしてたん?」
直人の茶色の髪の毛が、風によってなびく。よかった、治ってくれて。いや、ハゲのほうが面白かったから、直さなかったほうが良かったんじゃ?
「おい、お前今絶対俺の醜態を想像しただろ」
「ナチュラルに人の心を読むな。超能力者かお前は」
「ふふふ。我が漆黒の、、、」
直人はそうイタい事を言おうとした瞬間、黙り込んでしまった。うつむきながら必死に何かを考える直人。そこで俺は、直人がどうしてこんなにも考えているのか理由がわかってしまった。もしかしてお前、その先考えてなかったのか?
「そうだよ!わるいか!」
「だから、俺の心を読むんじゃあない!!」
そんなふうに談笑していたら、昼休みはあっという間に終わり、僕は授業を軽く受け流しながらいろんな事を想像していた。あのアニメ、どうなったんだろうなぁ。はやく、前応募した漫画のコンテストの結果でないかなぁ。など、そうしているうちに、気がつけば放課後まで、時間は進んでいた。
「ちっ。アイツもう帰ったんかよ」
流石は帰宅部のエース山崎である。っていうか、俺を置いて行くって、アイツには人の心というものがないのだろうか?そう思った、今日このごろだった。
ドンドンドン。と、僕がいつも起きる時間よりもかなり早い時間に、玄関の叩く音と、インターホンの音が一人暮らしをするために買った俺の家の中に響き渡る。
「う〜ん。だれだ?」
部屋着のまま俺はインターホンがある一階にまで降りて、インターホンに出る。
『要!どうして開けてくれないんだ!?なぁ、遊びに行こうぜ?そして開けてくれよ!!』
「なんで朝っぱらから遊びに行かんとならんのだ。そして、俺はお前に起こされてひじょぉぉに気分が悪いんだ!お前の誘いになんて乗るものか!!」
『いいじゃねぇか!!なあ、開けてくれよ!!もしかして、俺のこと嫌いか?謝るから!!悪いところ全部教えてくれ!!全部直すから!!』
「BLヤンデレ野郎が、野草でも食って犬に噛まれちまいな!!」
直人の言動を聞いて、これが異変によるものだと察しがついた。おそらくこの異変は、『直人がBLヤンデレ系男子になる異変』である。
率直に感想を言おう。キッショ。今にも吐きそうである。吐き気を抑えながらノートを取り出そうとするが、そこで俺は違和感を覚える。ない。ノートがない。過去の記憶を探る。
『どうせ異変なんて学校でしか起こらんから、俺の机にしまっとくか』
そういって俺は、大切なノートを机の中にしまった。
俺の大馬鹿やろぉぉぉぉ!!過去の俺を思い切りぶん殴って病院送りにしてやりたいところである。時計を確認する。時刻は6時半。学校が開かれるまであと1時間。それまで俺は、こいつをどうしろってんだよ!
熟考し、いろいろな案が思い浮かぶが、どれも良いものではなかった。どんどんと、直人がトアを叩く音が大きくなっていく。
「クソッ。こうなったら.....窓からの緊急脱出だ!!」
部屋着のまま、俺は窓の鍵を開け、直人の裏をかくのだった。
ダッシュする俺。道中、「お〜い、待ってくれよ!」「どこへ行こうというのかね!?」という、状況的に一番聞きたくなかった声が聞こえたが、何かの聞き間違いだろう。
俺は、近くの公園にある、全体が覆われているすべり台の道中に、身を潜めていた。ふぅ。と、落ち着きを取り戻した俺は、いという持ってきた時計を見ながら状況整理をする。まず、俺の友の直人はBLヤンデレ化して俺を必要に追いかけている状況。そして、異変を解決するためのあのノートは教室にある俺の机の中に入っていて、学校開校まであと三十分。走って十五分くらいだから残りは十五分。余裕と思うけど、相手は五十メートル6.10の男。
「結構積んでるな」
と、率直な感想を口に出す。が、周囲からの反応はない。まあそれもそうか。今この状況は誰もいない。
そう思った瞬間だった。近くの草木から物音がした。急いで滑り台をおりて正体を確認する。直人かもしれない。と、逃げるん準備をしながら草木を確認した。しかし、そこにいたのはカエルだった。
「なんだカエルか。脅かしやがって。って、ん?」
そう、いった直後、僕はあることを悟ってしまった。うん、確実に俺は今フラグを立てた。じゃあつまりさ、、、、。恐る恐る背後を振り向く。もちろん、そこには不敵な笑みを浮かべる直人くんがいて、、、、、、。
「な、なあ。少し喋らないか?話せばわかるはずだ。な?俺達、親友だろ?」
対話を持ちかける。しかし、それを無視するかのように、直人は俺に迫ってくる。
「俺と離してくれるのはとても嬉しいんだけどさ、さっきの親友って言葉に俺はすごい悲しくなったよ。だって俺は、こんなに要を愛しているのに」
うぇぇぇぇぇぇぇぇ。マジでキショすぎる。だけど、今はそれを感情に出すわけには行かない。
迫ってくる直人に、俺は後ずさって距離を取ろうとする。しかし、それに気づいた直人は、何故か嬉しそうにする。え、こっわ。常人では理解できない状況に、困惑する。それをやばいと悟ったのは、直人が俺との距離を残り十メートルまで詰めた時だった。
「あ!UFOだ!」
「ダニィ!?」
彼が少し油断したその瞬間、俺は逃げた。
「こっちは陸上部副部長でもあり、影ではクズの象徴ともよばれたんだよ!!舐めんじゃねぇ!!ガハハハ!!」
大口とは裏腹に、とんでもない速度で直人から遠ざかっていく。
そして、なんとか直人を巻いた俺は、無事に校門前までつくことができた。学校はすでに開いており、時刻は七時半を回っていた。
行っけぇぇっぇ!!そう言って、校舎に入った時だった。
「ここにいたのか。はぁ、はぁ。けどもう逃げ切れないさ。絶対にね」
背後からとんでもない足音を奏でる直人が迫ってきた!?
ヤバイヤバイヤバイ!!なんとか教室に逃げないと!!走る走る。走る続ける。気がつけば背後からの足音は消えており、俺は、無事に教室にまでたどり着くことができていた。
「さあ、これで終わりだ」
そういって、俺はノートに『直人がBL系ヤンデレ男子になっている』とかく。
さて、これで終わったな。そう思った瞬間だった。がラララ。と、教室の扉が開き、一人の女子生徒が現れる。そこで俺は、自分の服装を思い出す。そう、俺は今、部屋着だったのだ。
その後、もちろん女子に叫ばれ、挙句の果てにはその日から、俺のあだ名は『部屋着野郎』になってしまった。直人が慰めてくれたが、感謝より直人に対する怒りがかった。
俺が異変を恨んだ、初めての日である。
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