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Cross✖Fragments  作者: 弦月雪啼
17/22

fragment.2:Forget-me-not Ⅷ

12/25 ネヴァAM.11:15


ステンドグラスで彩られた集会場は戦闘でボロボロになり幾人もの人が倒れている。

立っているのは警察隊の隊服に身を包んだ自分と黒いパーカーを着た男女とも区別の付きにくい協力者(モナー)のみ。

「協力感謝するぜ、モナー。お陰で手早く終わった。」

「どういたしまして。まあロビンからの依頼でもあったからな。んで、ソイツは?」

そう指示されたのは自分と同じ隊服を着た中年の男。焦点の定まらない目で何かうわ言を呟いている彼は紛れもなく警察隊の隊員だが、同時にこの教団の信徒でもあったらしい。様子から察するに(ヤク)で洗脳でもされていたようだが。

「真逆、警察隊に信徒が居るたァな?この様子じゃまずは病院行きだわな。ま、こんなとこでサンプルが回収出来たのは幸運だったよ。」

そう言って回収したサンプルを見せる。

「後始末はこっちでやるさ。まあアタシはレヴェリー地区まで行かなきゃならねェ用事があるワケだが。」

「あーそう言や向こうってサームしか居ないなんだっけ。行ってやろうか?」

「マジ?助かる。向こうの協力者に連絡してから行くか。」

「了解。」

短く会話を終えるとミタマへと電話を掛けた。

『どうされました?』

「いやー進展つうか、悪い知らせがあるんだが良いか?」

『まあお聞きしましょう。』

「端的に言えば警察隊が信用ならなくなった。」

『はい?…詳細を。あんたはんが頼るように言ったんですから。』

間髪入れずに鋭い声が飛んできた。当然の反応だろう。

「おお怖。あーっと、警察隊の中に教団に洗脳されてるっぽい奴が居たんだよ。此奴以外にも居る可能性が高い。だからお前に動いて欲しいんだが、どうだ。」

『…成程。安全な場所は用意出来ますか?』

「うーん……まあマスターんとこしかねェな。商業エリアの北東部に“魔道具屋|Tradescantiaトラディスカンティア”って店が有るんだが、その二階部分がカフェになってるんだよ。店名は“Masquerade(マスカレイド)”。そこなら誰も武力行使が出来ねェからさ。」

『……………良いでしょう。』

物凄く渋った様だが、了承は得られた。彼女としてもこの案しか無かったのだろう。

(疑ってんなァ…まあ、当たり前か。これであっさりはいそうですかとか納得されたほうが怖いしな。)

「んじゃあ宜しくな。」

『ええ。』

電話を切り、モナーの方を振り向いた。

「んじゃ行くか。」

「え、このまま放置?」

「後処理部隊が来てっから良いんだよ。」

______________________________________

珠霊AM.11:20


ネヴァから届いた突然の知らせは最悪な物だった。

(警察隊に逃げ込めと言ったそばから当の警察隊がやられとるとは…何と言ったら良いのやら。“Masquerade”とやらが信頼出来るんかは判らんけど行ってみるしかないか…)

そっと溜息を吐きフレイヤの方に向き直る。彼女はきょとんとした顔で此方を見ていた。

「どうしたの?なんか怖い顔してたけど…」

「ちょっと良くない知らせが入りまして。…フレイヤはん二日程宿泊できる用意をして下さい。移動しますよ。」

「え?な、何?ほんとにどうしたの?」

「詳しくは向こうで話します。校門前で30分後に集合で、良いですね?」

有無を言わさぬよう強めに言い部屋から出るように背中を押した。私の鬼気迫る様子に何かを感じ取ったのだろう。少し怯えた様な素振りを見せ、小さく

「わ、分かった。」

と言って自分の寮へと戻って行った。

“魔道具屋Tradescantia”には行った事があるから場所は把握している。何があっても良いように準備を怠ってはいけないと思い自分も持ち物を準備し始めた。

「…にしても黄金の淵教団ねぇ。“黄金の淵”……どっかで聞いた気するんやけど…」

聞いた時から引っ掛かっていたのだが思い出せずにいた、“黄金の淵”と言うワード。口に出して反芻してみればピンときた。

「黄金の淵…嗚呼、成程アレか。だとしたら随分と無謀な事してはるけど…万が一を考えれば動かなあかんな。」

納得して独り言ちた。

約30分後、校門前で待っていると荷物を背負ったフレイヤが現れた。確り準備してくれたようで安心した。

「行きましょうか。」

「う、うん。」

差し出した手を彼女は取ってくれたので、そのまま手を繋いで歩き出した。

______________________________________

リーゼロッテAM.11:08


ノック音の後、扉越しに聞こえて来たのは従業員の方の声だった。

「あの、警察の方がいらっしゃってまして…」

(思ったより早いですわね。この辺りも捜して下さっていたのでしょうか?)

そう思っていると

「はい、大丈夫ですよ。」

とノタリアが応えた。すると扉が開き、その向こうには従業員の方と制服に身を包んだ若い男性が居た。そして男性が問い掛けて来た。

「ノタリア・アシュリーさんとそのお友達かな?」

「はい、友達やお爺ちゃんが通報してくれたと聞いたんですけど…」

「そうだよ。私達が保護するからもう安心だよ。支部の方でお話を聞きたいんだけど大丈夫かな?」

目線を合わせて笑顔で対応する彼には好感が持てる。しかし、タイミングが良過ぎて怪しんでしまう気持ちもあった。マユキも同じように考えたのか訝しげに彼を見ていた。とは言え嘘を吐いている様子は無いし不自然な行動も無い様に見える。それでも警戒は解けない。有事の際には心配し過ぎるくらいが丁度良い筈だから。

「皆、大丈夫そう?」

「良いよー。」

ノタリアの問い掛けにリヒトが応え、私も少し考えて頷く。しかし、マユキから待ったが掛かった。

「…少し聞きたいのだが、良いでござるか?」

「どうしたんだい?」

「お主は此処へ一人で来て、拙者達を支部まで送るつもりでござるか?相手は烏合の衆やもしれぬが、それにしても少々無謀だと思うのだが…」

「ああ、応援は呼んでいるから安心して。」

そう言った途端、穏やかだったマユキの眼差しが鋭く彼を射抜いた。

「成程…つまり玄関前に集まりつつある気配は警察隊のものでは無い、と言う事でござるな?」

その言葉で警察隊を名乗る男は驚愕に目を見開いた。

「其れと、異国の者だから知らぬと思っておる様だが、拙者もこの国の警察隊が“基本は二人以上での行動を義務付けられている”事くらいは心得ているのでござるよ。」

「えっ!?」

「…!警察隊に所属している事と教団の信徒である事は両立するという事ですわね。」

事態を把握して血の気が引いたが、即座に魔導宝珠を取り出して応戦出来るよう構える。しかし、彼はなおも笑顔を浮かべてこう続ける。

「余程酷い目に遭ってしまったみたいだね。大丈夫、警察隊で保護するから。おいで?」

私にとってはこれが決定打となった。確実に嘘を吐いたのだ、“警察隊で保護する”と。

「従業員さん、申し訳ございません!」

そう謝りつつ私は小規模な爆破魔術を発動し窓を破壊した。申し訳ないが逃げ道は此処しか思いつかなかったのだ。

マユキは短刀を構えて牽制してくれている。なので私は他の二人の腕を引っ張って窓から逃げ出した。後ろを確認すれば彼も付いて来ていた。

(良かった、これでまた逸れる様な事になったらどうしようかと…窓が玄関と反対側に面していて助かりましたわ。)

「あ、あの…警察隊も信用出来なくなっちゃったし、ど、どうしよう。」

息を切らしながらノタリアが皆に問う。それに答えたのはマユキだった。

「魔術協会に逃げ込むのが確実であろうが、今考えるべきは彼等を撒く事でござるよ。」

その通りだろう。彼の言うように建物を使って逃げた。

暫く逃げ幾つか建物の角を曲がり細い路地に隠れた時、マユキから声が上がった。

「お主達、身を隠す術は有るか?」

「え?えっと、私ともう一人は付与術(エンチャント)で出来るよ。」

(わたくし)はマントが有りますわ。」

「俺は無いよ。」

皆、一旦足を止めて答えた。

「…承知した。ならばお主達は其れで逃げてくれ。……挟み撃ちにされている。」

「えっ…」

「マジ!?」

「ダメですわ!逸れたら危ないと話したばかりでしょう。」

挟み撃ちと言う事態に驚いたのは私だけではなかった様だ。其れより彼の提案は賛同しかねるものだった。彼に実力が有るのは確かだ。しかし同時に自分達に化ける事が出来る敵が居る事は彼が身をもって知っている筈。別行動をした後、合流した相手がその敵だったらと考えると危険過ぎる。例えこの魔眼であっても視認出来なければ見抜けないのだから。

「心配無い、拙者はもう合流せぬつもりでござるから。」

私の心配は見抜かれていたらしく言葉にする前にそう言われた。合流時の様子から彼の聴力が尋常でない事は分かっていた。それを利用すれば私達を避ける事は可能だろうが、その行動の意味する事は……囮になると言う事。それが分かって思わず顔を顰めた。

「貴方が危険過ぎますわ!」

「殆ど包囲されていると言って過言でない状況下、お主達は逃げる為の手段は選んでいられぬでござろう?拙者は残念ながら人を守る事は得手では無い。故にお主達は身を隠し、拙者が彼等を引き付けた方が逃げられる確率は高いのでござるよ。」

「だ、だめだよ!そんなの。」

「アンタの実力は分かってるつもりだけど、マジで言ってる?」

彼の言っている意味を理解したのだろう。二人は顔を青くして慌てて反対する。しかし、私でも聞こえる程近くまで複数の足音が迫っていた。

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