fragment.2:Forget-me-not Ⅲ
12/25 珠霊AM.06:37
朝日が昇り始める頃。
レヴェリースート魔法学校クラブ寮の一室で私は目を覚ました。顔を洗い、寝巻きから私服へ着替えて同じ寮の一室へと足を運ぶ。
昨日から同寮の友人であるノタリアが体調を崩して伏せっており、其の看病に行く事になっていたのだ。
コンコン
まだ寝ているかもしれないが一応ノックをして扉を開ける。しかし……
「失礼しますよ。……って、ノタリアはん…?」
寝台の上に彼女の姿は無かった。
御手洗にでも行っているのだろうかと思うくらいには部屋は綺麗なままだが、昨晩着ていた寝巻きが寝台に脱ぎ捨てられていてハンガーも散らばっている。靴箱も不自然に一足分空いている。
真逆と思い窓を確認すれば昨晩閉めた筈の鍵が開いていた。
(…状況だけ見れば家出やけど……無意味にそんな事する子やないし、大体あの体調で動き回れるんか?って話やし…うーむ……いや、待てよ?電話すれば分かるのでは?)
誘拐ならば犯人が出るだろうし、家出ならば本人が出るだろう。もしこの部屋に有るのだとしたら誘拐の可能性が高くなる。さてどうなるか、と思い呼び出しボタンを押す。
――呼び出し中
――呼び出し中
『はい。』
電話越しに聞こえたのはノタリアでは無い少女の声。
確か夏頃に聞いた…
「リーゼロッテはん?」
『はい。私リーゼロッテですの。今ノタリア様と一緒に居るのですが…その、電話に出られる状態では無くて、代わりに私が出ておりますの。』
「何故、彼女と一緒に居るんですか?」
思わず鋭い声が出てしまった。電話越しにも緊張が走った事が伝わって来る。
『詳しく話すと長くなりますので簡潔に申し上げますわね。私達、とある宗教団体の儀式を阻止したいんですの。それで……』
その先の言葉を遮る様に轟く爆発音。
「ちょっと、大丈夫ですか!?」
問い掛けに応える余裕は無いらしい。電話越しに聞こえるのは慌てた様な少年の声と、指示を飛ばすリーゼロッテの声。
『ヤバい!場所バレたっぽい!』
『分かっていますわ。貴方とノタリア様が捕まる訳には参りません。少し時間を稼ぎますので彼女を連れて逃げて下さいまし。』
『でも、アンタ戦えんの?』
『私は未だ姿を見られていませんわ。誤魔化しが効きますので御安心を。』
『それってどう言う…』
『良いから早く!』
『わ、分かった!マジ死んだりしないでよ!』
『ええ、また後で合流致しましょう。
ミタマ様、申し訳ございません。余裕が有りませんので失礼致しますわね。』
「いや場所が分かれば……って…」
切れてる。
彼女達が明らかに子供が関わって良い事では無い大事に巻き込まれている事は分かったが、居場所も状況も分からず終いだ。
(…さて、フレイヤはんをどう誤魔化すかやなぁ。
ノタリアはんが失踪した事は隠しようがない。放っておいたら探しに危険なとこまで行きかねんな……
校長にも連絡せなアカンけど、まあそっちは全部伝えて丸投げでええとして……詳細が一切分からへん…
ダメ元で先輩に聞いてみる?この手の情報は持ってそうやし。)
ふと携帯に目を落とせば時刻はAM07:05。
下手をすれば叩き起してしまいかねないが、此方も緊急事態。
先ずは校長へと連絡を入れる。
――呼び出し中
『はいはい。どうしたんじゃ?神代君』
「お早う御座います。校長先生。少々お伝えしたい事が……」
と先程までの出来事を簡潔に説明する。
「…と言う事で、通報とかそう言う事はお任せします。」
『うむ、分かった良いじゃろう。代わりにフレイヤの事は任せて良いかの?』
「まぁ善処しますよ。ほなら失礼しますね。」
『気をつけるんじゃよ。』
次に先輩へ。
――呼び出し中
――呼び出し中
――呼び出し中
――呼び出し中
『あァ?どうした?後輩。』
「朝早くからすみません。ちょっとお聞きしたい事が有るんですけどええですか?」
『あんま暇じゃねェんだけど…まぁ良いぜ。言ってみな。』
「有難う御座います。では、今事件起こしてる宗教団体とか知りません?武力行使してる感じの。」
『…お前なんでこんなタイミング良く聞いてくんの?
まァたあの爺さんにでも頼まれたのか?』
「いえ、今回は友人が巻き込まれた様なので。」
『マジか……アタシが追ってる連中なら割とヤベェんだけど。』
「詳しく。」
『あいよ。今暴れてんのは“黄金の淵教団”。生贄の為に誘拐事件まで起こしてる連中だ。
手段問わずに闇ルートから仕入れた武器なんかも使ってんだとよ。まあ暴れ過ぎて目ェ付けられてるわけだが。』
「へえ。随分野蛮なお相手やね。目を付けられていると言うのは?」
『あーっと…』
少し逡巡する様子を見せるがすぐに口を開いた。
『アタシが監視してる情報網で奴らの討伐依頼が出てんだよ。何人か受諾もしてる。だからそのうち壊滅するだろうけど、抗争中とも言えるわなァ。』
「え、実は今めっちゃ物騒やったりします?」
『裏通りじゃあ日常茶飯事だよ。今回も成るべく表に出ねェよう最善は尽くすが、規模がデケェ。その上一般人が逃げ回ってるとなりゃァ厄介だな。』
「何なら逃げ回っとる子にそっくりな双子の子が探しに行きかねないんですよねぇ。」
『それはお前が如何にかしてくんねェかな⁉』
「…表通りでの聞き込みまでにとどめさせるのでそっちで逃げ回っとる子ら保護して貰えません?」
『出来たらやるよ。こっちも忙しいから期待はしないでくれ。』
「了解です。またなんか在ったら連絡しますわ。」
『OK。じゃあまたな。』
と電話が切れる。ノタリアの写真をネヴァに送っておく。
そろそろフレイヤも起きて来る頃だろうか。
上手いこと言いくるめて目の届く範囲に居って貰おう。最悪、襲われたとしても私が対応出来る様に。
(それにしても“監視している情報網”ねぇ。後で聞いてみよかな。)
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12/24 とある掲示板サイトにてAM.07:15
【Robin murdersの御茶会議】 全体ルーム
Robin:皆さんに“黄金の淵教団”という宗教団体を潰して頂きたいのですが、手の空いている方は居ませんか?
shroud:お前から依頼なんて珍しい。何やらかしたんだソイツ等。
psalm:良いよ~情報送って!
blood:仕方ないな。船長に聞いてみるか。
grave:料金はいつものとこによろしく~
あ、単純に潰しちゃえば良いんだよね?
mourner:うちに正式に依頼する?それともこっちで秘密裏に処理した方が良い?
Robin:@ grave 承知しました。ええ、潰して頂ければ結構です。
@ mourner 此方側で処理して頂ければと。
clerk:マジか…顧客だったんだけどなぁ…
shroud:手を切った方が賢明かもな。この調子じゃすぐ潰れるぜ。
clerk:だな。代わりにお前らに売りつけるわ。
blood:許可はとれた。滞在期間も延ばしたから協力は可能だ。
shroud:あ、こっちはいつも通り成り行き見ながら協力するからそのつもりで宜しく。
Robin:では皆さん宜しくお願い致します。
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12/24 とある掲示板サイトにてPM.10:40
【Robin murdersの御茶会議】 全体ルーム
blood:@ Robin 悪い、急用が出来た。暫く依頼の件は協力が難しくなった。
Robin:@ blood 承知致しました。




