第七話 戦闘機操縦士食事事情
前回のあらすじ:遂に凪と七海の直接対決。
凪は初の艦上機である事から、後席に羽賀大尉を据えて七海に挑む。
戦闘は拮抗し、長時間の戦いとなった。
この戦いを制したのは七海の方であり、この結果に七海は大喜びであった。
それから約1か月、千歳基地に戻った凪はいつも通りの日常へと戻る……。
3月17日… 11:52… 千歳基地…
「ねぇ、葵」
「ん?」
「結局どうなったのかな、あれって」
「あれ?」
「ほら、うちの滑走路の民間使用」
「あー、どうなったのかな、あれ」
2018年以降に検討とか言ってたけど、2023年になった今でも民間使用はされていない。
使っているのは相変わらず軍用機と海保の機体だけ。
「消えたのかな、その話」
「消えたんじゃないの?多分」
「ふーん」
正直、民間機も離着陸するとなると、スクランブルに支障が出そうで怖い。
でも、それを言ったら百里基地は民間機と共用だから大丈夫なのかな。
…良く考えたら、茨城空港と新千歳空港じゃ発着本数がまるで違う。
国内線も多いし、その上国際線も就航している。
同じ様に考えるのはやめた方がいいかな。
「あ、スクランブル」
スクランブルの機が18Lから飛び立って行く。
昨日も今日もスクランブル、きっと明日もスクランブル。
毎日スクランブル発進。
「よく毎日懲りずに飛んで来るよね」
「困ったよねー」
「ねー」
そう言えば、今日の昼食は何だろう。
そろそろお昼ご飯の時間だ。
営外に住んでるから、朝と夜は基本的に家で食べる。
お昼も給料から天引きされる。
「今日のお昼ご飯何かな」
「ステーキだって」
「おぉ〜、楽しみ」
最近は食事が豪華になり、量も増えた。
前まで、おかずは切り身が1個だけの時もざらにあった。
献立が豪華になって私は嬉しいよ。
食堂… 12:00…
食堂はいつも1番乗り。
ご飯を止めれられるまで装う為だ。
ビュッフェスタイルで、1人1つづつおかずを取る。
ご飯は一番最後。
「ステーキ♪ステーキ♪」
ご飯はおかわり自由。
おかずは1人1つまで、1つ位おかわりさせて欲しいんだけどなぁ。
「今日はステーキとスープとサラダだね」
結構大きいサーロインステーキとコンソメスープ、それとサラダの3つ。
後、パイロット用の加給食の野菜ジュース。
「ステーキ後3枚は欲しい…」
「凪ちゃんだけ食費3倍で良いと思う」
食卓…
適当に座席を選んで、葵と一緒に食べる。
あー、お腹空いた。
「「いただきまーす」」
今日もご飯が美味しい。
私は幸せだよ。
「美味しいね」
「凪ちゃんは何食べても美味しいって言うよね~」
「だって美味しいんだもん」
「何でも美味しいって思えるの良いね~」
「あ、ステーキ無くなっちゃった」
「相変わらず食べるの早いねぇ…」
葵はちょっと引き気味。
これも日常。
サラダも食べちゃったし、スープも飲み干しちゃった。
後はご飯だけだ。
「ふりかけふりかけっ」
食堂にはふりかけが沢山常備されている。
これでご飯を沢山食べる事が出来る。
今回はのりたまをかける。
「今日もおかわり行くの?」
「ふぇ?ふぁふぁひぃふぁふぇふぁん」
「飲み込んでから話してよ」
「んんっ、ごめんごめん」
「もう…って、もう全部食べ終わってるじゃん」
「おかわり行ってくるね」
「はーい」
配膳台へ向かい、また止められるまでご飯を装う。
もっとおかずの量を増やして欲しいと毎日思っている。
「はーい、ストップー。こんなに食べてるのになーんでそんなにスリムなのかしらねぇ…」
「戦闘機乗ってるからじゃないの」
「あっ……そうね……」
ご飯を装えたから、また食卓に戻る。
今回はごま塩で食べようかな。
「うわぁ…また山盛り持って来たね…」
「え?そう?」
「うん、毎度の事だけど盛りすぎ」
「うーん、そうかなぁ」
「食費ヤバそう」
「そんな事無いよ」
「エンゲル係数は?」
「そんなの知らない」
「家計簿付けてないのね…」
家計簿何て面倒な物は付けていない。
付けて無くても普通に生活できてるからヨシ!
「おかわり行ってくる」
「嘘!?もう食べたの!?」
「え?うん」
ごま塩はご飯が進む。
次は何のふりかけで食べようかな。
「おかわり下さいっ」
「もう空っぽなっちゃった」
「えー」
「えー、じゃありません。さ、帰った帰った」
残念。
ご飯が無くなってしまった。
私は渋々食卓に戻り、食器を片付ける。
「葵、先出てるからね」
「うん、分かった」
3月19日… 12:03… 千歳基地… アラート待機所…
現在、私は長津田大尉とアラート待機中。
私達は5分待機。
1時間待機は北宮中尉と西条少尉。
今日は1度もスクランブルが掛かっていない。
そろそろお昼ご飯の時間だ。
「お昼ご飯!」
「今日はカレーだぞ~」
「「おー」」
ディスパッチが岡持ちを持ってきた。
アラート待機中のご飯は運搬食。
食堂のメニューが岡持ちで運ばれてくる。
ご飯のおかわりが出来ないのが残念だ。
「ん?1つだけ山盛り…あぁ、中佐の分か」
「相変わらず…凄い量ですね、隊長」
「そう?」
「そんなに食べて、吐きませんか?」
「うん、吐かないよ」
「凄いですね~」
「いただきまーす」
今日もご飯が美味しい。
5分待機で装備を色々着けてるお陰で少しだけ食べづらい。
でも、この食べづらさにも慣れた。
「美味しいですね、隊長」
「うん、美味しいね」
「今日はまだ飛んでませんね」
「うん。走りたくないね」
「ですね~」
ご飯の最中にスクランブルが掛かったら最悪だ。
食べるのを辞めないといけないし、誰も保温をしてくれない。
戻った頃には冷めている。
「食べてる最中に鳴ってほしくないよね」
「分かりますよ、その気持ち」
「大尉もそう思うよね」
「はい」
ん?
ディスパッチが電話を取っている。
「大尉」
「はい?」
「フラグ立てちゃったね……」
「え?何i――」
「ホットスクランブル!!!」
ウウウウウウウウウウ……
ディスパッチが叫ぶと同時にサイレンが鳴り出す。
しぶしぶカレーを置いて、格納庫に走る。
あぁ、30分待機が良かったなぁ!
18:32… アラート待機所…
「晩御飯!」
待ちに待った晩御飯の時間だ。
お昼ご飯のカレーは3口しか食べられなかった。
だからいつもよりお腹が空いている。
「晩飯はいわしだ、昔は安かったんだがなぁ…」
昼ご飯の時と同様、ディスパッチが岡持ちを持ってきた。
いわしは今や高級魚。
「隊長、お腹空いてるんじゃないですか?」
「勿論、カレー食べ損ねたんだし。少尉は全部食べれたんでしょ?」
「そうですね」
「…羨ましい」
「そんな目で見ないで下さいよ…あぁ、ほら、いわしですよいわし」
「本当、隊長はご飯の事には目が無いですね」
中尉の言う通り、私はご飯に目が無い。
【食べきったら無料】みたいな物は特に。
「あれ、中佐の器だけ大きい様な…」
「あ、確かに」
月島二等兵曹の言う通り、私の分だけ器が大きい。
そして盛り付けられてるご飯も多い。
「そんなに食べて太らないの羨ましいですよ、ホント」
今日の晩御飯はいわしのしょうが煮。
ご飯とお味噌汁、それと白菜のお浸し。
加給食はペットボトルの胡麻麦茶。
「いただきます」
うん、今日も美味しい。
5本のいわしが丁寧に味付けされている。
ご飯が良く進む。
「美味しいですね、隊長」
「うん、そうだね」
大尉も同意見。
テレビでは夕方のニュースがやっている。
武器の密輸が増加しているらしい。
「あ、見て見て大尉」
「?」
「密輸されてる武器、自動小銃とかSMGばっかだよ」
「そうですね…昔は拳銃とかばかりだったのに…」
「物騒になったね」
「そうですね、1月の岡山もそうですし…陸軍の仕事が増えそうですね」
「増えてほしくないけど…増えそうだね」
「えぇ、そうですね」
3月20日… 07:03… アラート待機所…
昨日の夕食後、交代で仮眠を取りながら夜を過ごした。
幸い、スクランブル発進は無かった。
「朝ごはん!」
「隊長ってその顔じゃ考えられない事言いますよね、ご飯の時とか特に」
「え?そう?」
「隊長も女性だって事が良く分かりますよ」
「朝は鮭だよ~、鮭」
ディスパッチがいつも通り岡持ちを持ってきた。
今日は鮭だそうだ。
「ほい、中佐の分ね」
いつも通りご飯が沢山装われている。
おかずは他の人と変わらないけれど。
今日のメニューは焼き鮭とだし巻き卵、それとほうれん草のお浸し。
お味噌汁はいつも通りで、ご飯は今日は玄米ご飯だ。
加給食はペットボトルの緑茶だ。
「いただきまーす」
美味しいご飯を食べられて幸せだ。
アラート待機の良い点は、朝食と夕食を自分で作らなくて良い事。
何もしなくても、ご飯が出てくる。
「後1時間ですね、隊長」
「そうだね、少尉」
後1時間で待機が終わる。
待機が終わったら家に帰る事が出来る。
テレビは付けっぱなしで、朝のニュースが流れている。
昨日の武器密輸のニュースが取り上げられている。
ご飯を食べ終えたディスパッチは新聞を読んでいる。
新聞も毎朝届けられる。
「ごちそうさま」
空腹のお陰か直ぐに食べ終えてしまった。
おかわりがしたい。
食べ終えたら岡持ちに食器を戻す。
暫くしたら回収しに来る。
「食べるのも早いですね…隊長」
「そうかな?」
「早食いは太るって聞きますけど…太らないって良いな…」
長津田大尉が羨ましそうに私の方を見る。
大尉が私を見ている隙に、大尉のご飯を強奪しそうになってしまう。
駄目…抑えないと…食べ物の恨みは怖いから…。
この後、何事も無く交代時間である8時を迎えた。
荷物をまとめて、家路につく。
帰えるついでに、札幌でご飯を食べて行こうかな。
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