第零話 出勤
2023年1月3日… 07:11… 快速エアポート 4号車…
ガタンガタン…
雪が降り積もる郊外を電車は雪を巻き上げながら走る。
乗客は普段と比べて格段に多い。
正月だから、当然か。
私は空港に行く訳では無く、ただ単に出勤するだけ。
でも、座れないのは嫌だから奮発して指定席であるuシートに乗った。
uシートも見事満席。私の隣には若いサラリーマンが座っていた。
キャリーバッグも持っている。きっと、東京に帰るのだろう。
〈間もなく、千歳、千歳です。千歳線、苫小牧方面の普通列車と石勝線の普通列車はお乗り換えです〉
私は荷物をまとめて降りる準備をする。
定期を用意して、席を立つ。
〈千歳の次は、南千歳、続いて終着新千歳空港です………〉
ガタン…ガタン…
客室を抜けて、通路に出てドア前に立つ。
冬の北海道の寒さは段違い。電車にも徹底した寒気対策がされている。
プシュー。バタン。
ドアが開いて、冷気が流れ込んで来る。
この寒さにも慣れた。
「うぅ…寒…」
慣れたとは言っても、寒い物は寒い。
それなりに着込んでいるけれど、まだ寒い。
北口から駅を出て、バス乗り場に向かう
「やっぱり寒い…」
駅の待合室でぬくぬくしてれば良かったかな…?
千歳駅前5番乗り場… 07:30…
ブォォォォォン…
バスは定刻通りに出発した。
車内の温かさが身に染みる。
「あったかぁ…」
思わずもらしてしまった。
やっぱり冬の北海道の寒さは堪えるね…。
ピンポンパーン♪
〈毎度ご乗車、誠にありがとうございます。このバスは、泉沢向陽台行きです。次の停留所は……〉
乗客はいつもより少ない。
皆、正月でお休みなのかな。
私はスクランブル待機だから行かなきゃ。
ブォォォォォン…
07:19… 本町2丁目停留所…
ブォォォォォン…
バスは2分遅れで到着。
ここから少し歩けば千歳基地に着く。
ザッザッザッ…
「…やっぱり車買おっかな…」
横にカーディーラーがある。
ここを通るたびに車を買いたくなる。
国道36号を千歳基地方面に歩く。
既に基地の門は見えている。
ブォォォォン…
あっ、葵の車。
葵は私が隊長をしてる第203飛行隊の副隊長。
千歳基地に配属された時から一緒に居る。
…送って貰えば良かった。
07:41… 千歳基地…
守衛に軍務手帳を見せて基地内に入る。
そして、門を抜けてしばらく歩くと…
「なーぎちゃんっ!」
「うっ!?」
葵が後ろから抱き着いて来た。
「あ、葵…」
「おはよっ!」
「お、おはよう」
「今日の待機、一緒だね!」
「うん、そうだね」
今日のスクランブル待機は葵とペア。
正月だろうと関係無い。領空侵犯は起こる。
だからこうして基地に出向く。
「今日も頑張ろ~」
「は~い」
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