大人の恋心 80-2 +81
80-2.
遅くとも9時には家に居たかった私は、流石に家に9時
までに帰りたいとも言えず、電話の約束という口実で
亀卦川さんに伝えた。
駅周辺で何度か行ったことのある店に私たちは入った。
とんかつの専門店だった。
食事は大層美味しく、食事している間彼からの話は差し
さわりのない話題で終始した。
食べてる間は食事に夢中になり過ぎてしまい、終わって
から私は、今日彼は何で私を食事に誘ったのだろう? と
いう疑問に駆られた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ガキさん、実はさ、俺・・離婚したんだ」
私は驚き過ぎてすぐに反応できなかった。
どうして何の関係もない私なんかに、そんな話を。
「それでさ、今日の話っていうのは・・」
いうのは?
「結婚前提に俺と付き合わない? 」
何か聞いてると、私が断らないだろう前提みたいな
聞き方をされているように聞こえた。
今までの私たちの付き合い方からすると、そうなっちゃ
うのかな?
彼が石川さんと付き合っているのを知らずにいた頃なら
ううん、付き合っていた頃でも、私の方を選んでくれてい
たら二股さえも許して、OKしていたかもしれないもんね。
だけど・・・。
81.
「ありがとうございます・・」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
プロポーズではないけれど、それに近い言葉で交際を
申し込んだ、のに・・。
ガキさんは、うれしそうじゃなく、下に俯いたまま返事
をしない。
俺はこんな状況を全く予想していなかったので、続けて
どんな言葉を掛ければいいのか分からず、困った。
そして彼女の長い沈黙で、俺はハタと断られる可能性に
気付いた。やばい、非常にヤバイ。
石川に続いて、ガキさんにまで自分は振られるのかと
思うと、口の中が渇いてしようがなかった。
「今すぐに返事しなくても構わないよ。
その気になったら、声掛けてくれるとうれしいかな。
突然で驚かせてしまったね。取り敢えず今日はこれでお
開きにしますか」
1人で話を帰結させ、ガキさんを促して店を出た。
「じゃあ、気をつけて。
また飯でも食おう」
「はい。今日はご馳走様でした」
・・・
はぁ~、参ったな。
なんか、運気急降下だな、全く。
康之はあつい熱風に晒されながら、家に帰る気になら
ず夜の街に消えていった。




