大人の恋心 36
36.☑
" A Small Tomato プチトマト "
久しぶりに持参した知世が持たせてくれた弁当を開けて
さて食べようとプチトマトを口に入れようとしていた時だった。
外へいつものように食べに出ようとした小野寺が通りすがりに
俺に言った。
「今のプチトマト、旬で取り立てて゛おいしいっすよね」
と、ルンルンの軽やかな足取りで出て行ったのだった。
はて? 今まで奴とは春夏秋冬を一緒に何度か過ごしてきているが
プチトマト? こんな風に食のことなんて話しかけてきたことなど
皆無のヤツが・・。
プチトマトとかけて、その心は?
さっぱり分からん俺だが、ヤツの様子から新垣桂子との付き合いは
まだぶっつりと切れてはいないのかも(続いているのかも)しれないと感じた。
俺の本音としては自分のことは棚に上げ、小野寺が新垣桂子と
上手くいけばいいのか、すっぱり止めて新たにヤツより若い
年下の女性と縁があればいいと考えているのか・・紹介しておきながら
100%応援できない自分の胸の内に気が付いていた。
ふたりを合わせ紹介した日から妻の知世はふたりの前で話した
通り、完全に彼らに任せたようで、俺にも一切彼らの話を
振ってくることはなかったので、俺のほうも口を噤んでいるような
状況だった。
・・・・・
(一方)桂子は、次の約束もなく、連絡します、の一言も残して
いかなかった小野寺に翌週の週末、自宅でのディナーに彼を
招待することにした。
美味しいと言ってくれた彼に、プチトマトの入ったピザを
振舞いたかったから。
そして、また彼の放つ旨い、美味しい、という言葉が聞けたら
次の1週間パワーをもらい、それをよすがに自分はまた、元気に
過ごすことができそうだと思った、、から。




