大人の恋心 2
2.☑
" An Ambivalent Relationship - あやふやな(曖昧な)関係 "
お弁当作りは思ってた以上に楽しかった。
亀卦川康之から好きなものを聞き出し、彼の弁当を作るように
なってからは、自分の好みよりも彼の好物を優先した。
伴侶や子のいない桂子にとって誰かの為の食事作りは新鮮で遣り甲斐の
あるものとなった。
少し入れ込み過ぎ気味の桂子は、夕飯も時々康之を自宅に招いて
振舞うようになる。
そんな桂子のほだされた感満載のやさしさに付け込むように
亀卦川康之はまるでそうするのが当たり前のように桂子を抱いた。
夕食を振舞うと称しての自宅への招待。
それがいつの間にかまるで逢瀬のようになってしまい、その都度
繰り広げられる淫らな夜の生活。
少しの罪悪感と戸惑い・・があるものの、そのような奇妙な関係が
しばらく続いた頃、桂子は亀卦川が同じモデル仲間の石川という美しい
女性と付き合い出したことを知る。
桂子の出した決断、それは・・。
自宅には金輪際招かない。
自分は彼の恋人でもなんでもない存在であるということを
自分に再確認させること。
仕事場に持って行く彼の為の弁当は作り続ける。
・・ということだった。
・・・
そしてそんなやこんなで1年過ぎても桂子は生真面目に
亀卦川の弁当を作り続けていた。
自分から辞めるという選択肢がなかったのだ。
振られたから腹いせに弁当作りを止めたなどと、死んでも
彼に思われたくなかった。
ちっぽけなプライド・・。
亀卦川が断ってくるまでは、作り続けようとそんなふうに
決めていた。