大人の恋心 10
10.☑
" A Chance ご縁 "
「家庭を持ったら絶対旦那様を幸せにしてくれる良い奥さんになれる
素敵な人だと思うの。
長年同じ職場にいる私だから分かるのよ。
桂子さんのことを悪く言う人なんて一人も聞いたことないし
異性からだって、きっと何人かと付き合ったことのある男性で
見る目の備わってる人ならきっと、彼女の良さが分かると思う」
これまで個人的な付き合いはほとんどないと言いながら、知世は
相手の女性がいかに家庭的で素晴らしい奥さんになれるかと、太鼓判を押す。
まるで親友に対するような入れ込みようだ。
そんなこんなでギリなんとか話を持っていけるのが小野寺しかいなかった。
恋愛ならまだしも、そして頼まれてもいない相手に3才も年上のもうすぐ
四十路になろうとしている女性を紹介するはめになろうとは。
さて、どんなふうに話を持っていけばよいだろうか・・と、緒方は頭を
悩ませた。
しかし、途中で緒方はあることに気がつき、苦笑するしかなかった。
自分も恋愛で尚且つ若かったとはいえ3才年上の知世と付き合い
長い同棲期間を経て結婚していることに。
縁は異なもの味なものというじゃないか!
縁を結ぶきっかけを作る橋渡し役なんて人生にそうそうあるものでもなし
妻の知世がああまで力説するのだから素敵な女性なのだろう。
マイナスの感情は捨てて、小野寺にちゃんと話をしようと決めた
緒方だった。