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第29話 女王陛下

藍玉の間。

淡い水色の壁紙には、魚や貝のシルエットが散りばめられ、床には深い青色の絨毯が敷き詰められている。天井を彩る絵画には、上半身が人間、下半身が魚の男女が優雅に泳ぎ、さながら海の中に迷い込んだような錯覚を与える。本来ならば暖炉がありそうな壁沿いには、ささやかながら半円形の噴水があり、壁からにゅっと半身を出した白い魚の像が、口からちょろちょろと水を吐きだしている。置かれた調度品も、ほとんどが青と白を基調としていて、縁取りやアクセントにわずかに金や銀が見えるのみ。


中央に置かれた長四角の白い大理石の卓に収められた、紺色のビロードでできた椅子に座るよう指示され、ヴィルフリートの隣に腰を下ろす。思った以上に沈み込むので、少し驚いていると、ここまで案内してきた若い騎士は、全員が席に着いたのを確認し、姿勢正しく扉の前に立つと、「ここでお待ちください」と頭を下げ、扉の脇に立つ騎士たちに目配せしてから滑り出るように出て行った。


ローラントが騎士たちを横目に、身を乗り出すようにして真向かいのヴィルフリートに声を潜めて話しかける。


「で、反逆罪、身に覚えはあるのか?」


「寝耳に水だ」


ヴィルフリートは軽く肩を竦めた。


「だよな……噂すら小耳に挟んだことがない。ただ、イーヴォが噛んでることくらいは容易に想像できるな」


眉を顰めるローラントに、ヴィルフリートは口元とを歪め、自嘲気味に、


「嫌われたものだな。別段、目立つことはしてこなかったというのに」


 そう言って、息を吐いた。


「無実なんだから、堂々としているほかないな」

 

ローラントはそれきり腕を組んで黙り込み、壁の一点を睨みつけていた。ヴィルフリートは相変わらず、エルナの手を握りしめたままだ。時折、気が付いたようにエルナを見て微笑むほかは、眠るように目を瞑ってただ背凭れに体を預けている。マシロとチャチャも落ち着かないようだったが、騎士たちの目もあるからか、マシロはエルナの肩の上で仕方なく羽繕いし、チャチャは絨毯で前足の上に顎を乗せ、目だけをきょろきょろと忙しなく動かしていた。

 

間もなくして、若い騎士が戻って来た。


「謁見の間で、女王陛下がお待ちです」

 

扉は大きく開け放たれ、立ち上がったヴィルフリートの手に引っ張られ、エルナも慌てて立ち上がる。憮然とした顔のローラントが立つと、待ってましたとばかりにチャチャも続いた。


若い騎士の後に続き、ヴィルフリートはエルナの手を取ってかつかつかつと歩く。漆黒のローブですっぽり包まれたエルナの肩には、対照的に雪のように純白のマシロがちょこんと乗っていて、彼らの後ろにはローラントと、その足元にはチャチャが続く。最後尾には、彼らの逃亡を防ぐかのように、二名の騎士が固めていた。


「クロミツのにおい、してるよ!」

チャチャが、くんくんと鼻を動かす。


「本当⁉ クロミツが近いのかしら!」

マシロは興奮したように体を震わせる。


「きっとそうだよ!」

 

チャチャもつられて声を大きくすると、後方にいる騎士のひとりがわざとらしく咳払いをするので、一羽と一匹は同時に騎士に目を向け、彼の咎めるような目つきを目の当たりにして、しゅんと体を縮こまらせた。エルナは少しでも慰めたくて、マシロに頬を寄せる。布越しだが、マシロの体温が伝わってくる。

道すがら、時折、仕事着を身に着けた若い娘や騎士とすれ違う。彼らはヴィルフリートを見ると、決まって唖然としたように立ち止まり、幽鬼をみたような恐怖の色を浮かべたあと、慌てたように脇によって頭を下げる。

 

謁見の間の青い乳鋲の打ち込まれた扉の前には、剣を腰に携えた騎士が二人、直立不動で立っていた。


「ヴィルフリート様をお連れした」


騎士たちは鷹揚な仕草で扉に手をかけ、それぞれが左右に分かれ、大きく扉を開け放った。

若い騎士は背筋を正し、頭を下げてから、足を踏み入れる。


「失礼いたします。女王陛下! ヴィルフリート様をお連れいたしました。ローラント様と連れの者たちもおります」

 

朗々と声を張り上げ、振り向く。ヴィルフリートは軽く頷いてから、すっぽりローブで身を包んだエルナと向き合った。黒い布で隠されたエルナの深緑色の瞳を覗き込むように屈みこむと、名残惜しそうに握った手を離す。


「エルナ、しばらく手を握っていられない。君がどこかへ行ってしまわないか心配だけれど、少しの間我慢するよ。これから、女王陛下の前に出る。君は黙って、僕らの後ろに立っていてくれ。緊張するかもしれないが、そんなに長くかからないからね」

 

エルナを安心させるように微笑み、ヴィルフリートは謁見の間へ堂々と踏み込んだ。その背中を見て、エルナも一拍置いてから彼の後に続く。ローラントとチャチャもその後に続いた。

 

謁見の間には、厳かな空気が流れていた。青と白を基調とした室内は、波立った心も瞬時に鎮めてしまうような、そんな不思議な力が満ちているようだ。壁沿いに立つ何本もの円柱は白く、上下に銀色の彫刻が施されている。天井には、美しき水の精霊たちの姿が描かれ、その背には羽が見える。シャンデリアは、廊下で見た物よりも豪華で巨大だ。

 

広間の奥には、青い玉座が鎮座し、そこには美しい水浅葱色の髪を編み込んで、頭の上で束ねた、凛とした女性が座っていた。頭には様々な青い宝石が輝く、銀色のティアラを乗せ、ゆったりとしたきらめく水色のドレスを身に纏っている。まるで宝石を細かく砕き、それを振りかけたような、そんな幻想的な輝きを放つドレス。彼女の顔は、若くも見えるが、壮年にも見える。脇には、近衛兵が二人佇んでいた。

 

女王の前の、青い絨毯には、片膝をついた初老の男がいた。今まで見た水の民とは違い。若干小太りで、襟足の長い水浅葱色の髪を、前髪から後ろに撫でつけている。男の後方には、かなり間を空けて、彼に付き従う正装をした水の民が二人立ち、それに挟まれるようにどこか異質な少女が立っていた。肩で切りそろえた栗色の髪に、紫のワンピースを着た少女。

少女は逃げられないようになのか、両隣の男に手を掴まれている。

 

その姿を見て、エルナはぎょっとした。エルナだけではない。マシロもチャチャも思わず驚きの声を上げる。


「……私?」


そこにいる少女はエルナに瓜二つだった。いると思われていた黒猫のクロミツではなく、思いもしないエルナそっくりの少女が男たちに捕らわれているのだ。


「クロミツは……?」

クロミツの姿が見えないために狼狽えるエルナの肩に、さっと手が置かれた。振り返ると、ローラントが首を横に振り、小声で、「静かに。落ち着け」と諭すように言うので、エルナは戸惑いながらもこくりと頷く。

 

自分の生き写しの少女のこと、チャチャはにおいがすると言っていたのに、クロミツの姿が見えないこと。今すぐにでも答えが欲しいが、現状では黙って成り行きを見守るしかないのだ。

 

女王をはじめ、謁見の間にいた者たちの視線が、半年間も姿をくらませていた養いっこへ一斉に向けられる。


女王は時が止まったように動きを止めた。そして、咄嗟に立ち上がろうとしたのか腰を浮かせ、目を見開くと、唇を微かに動かし、何事かを言い掛けたが、やがてふっと表情を緩め、腰を下ろした。


「ヴィルフリート、よく戻りましたね」

 

努めて冷静な口調でそう言って、改めて我が子同然の養いっこの姿を眺めた。


「イーヴォの言っていたことは本当だったようですね。あなたの姿を外の世界で確認した者がいると報告に来たのです。そして、人間の娘にそそのかされ、戻る気がないと」

 女王は、にやつくイーヴォに冷たい一瞥を投げてから、ローラントに目を向ける。


「あなたは知っていたのですか?」

 

ローラントは嫌悪を隠さない顔でイーヴォの背中を睨みつけてから、軽くため息をつき、気を取り直したように背筋を正し数歩歩み出て、ヴィルフリートの隣に並ぶと、女王の目をまっすぐ見据える。


「恐れながら申し上げます。ヴィルフリート様は、ここ半年の間、冷たい眠りについておいででした。今は使われぬ古い魔法によって。ですから、断じて、人間の娘に惑わされたわけではございません」

 

女王がわずかに眉を動かした。


「イーヴォ、ローラントはこう言っていますが?」

 

話を向けられたイーヴォは大仰に頭を振った。


「いえいえ! 私の得た情報では、ヴィルフリート様は、自らの意志で娘を選び、国を捨てたのでございます。儀式を目前にして。当初は娘からの誘惑があったのでございましょうが、最終的に娘を選んだのはご本人様です。娘の家で共に暮らす姿も目撃されております。しかも、娘に(そその)かされ、この美しき水の国を我が物にしようと企んでいるという、(まこと)しやかな噂もございます」

 

滔々(とうとう)と語るイーヴォに、ローラントは忌々し気に一瞥を投げた。


(一体、何の話なの? 娘……?)


ヴィルフリートやローラントから聞かされた話の中には、イーヴォの話にある、ヴィルフリートが選んだとされる〝娘〟のことなど一度たりとも出なかった。


そもそも、ヴィルフリート曰く、出掛けてすぐに魔法に掛けられて眠らされたはずで、娘とやらに会う時間などなかったはずだ。彼の話を信じるならば、イーヴォの言うことは真っ赤な嘘ということになる。


(この人は、良からぬことを企んでいる人なんだわ)


エルナはイーヴォの背中に鋭い視線を投げた後、不意にイーヴォの付き人に挟まれているエルナ——とそっくりの少女に目をやった。少しも身じろぎもせずに、ただだらんと手を垂らし、どこか弱々しい。


(あの子、大丈夫なの……?)


どこの誰とも知れぬ少女だが、髪型や服装からして、どうやらエルナの代役のようなのだ。偶然、装いが被ったとは思えない。それに、確かに一度自分は捕らえられたのだ。何が起こったのかはわからないが、牢屋にエルナの姿が見えず、急遽代役を仕立て上げたのだろうことは推察される。


(私の身代わりで、あんな目に……ごめんねっ)


エルナは自分そっくりな少女に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


「よくもぬけぬけとそんな作り話を……!」


ローラントはイーヴォに怒りを隠さず、吐き捨てるように言い放った。


「その、この国の平和を脅かす、悪魔のような娘が、これなのです。女王陛下」


イーヴォ横にずれて、自分の部下に挟まれた人間の娘を手で指し示す。


「そうだな、娘。嘘偽りなく、真実を語るがよい!」

 

高圧的なイーヴォの言葉に、エルナ——の身代わりの少女がわずかに身じろぎし、俯きがちだった顔を、鷹揚に持ち上げた。そのひとつひとつの動作がひどく緩慢で、痛々しい。


「……はい。私は、この美しい水の国を自分のものにしようと考えました。なぜなら、ヴィルフリート様こそ、真の後継者だからです。真の後継者が国を治めて何が悪いのでしょう? それこそ、水の国が、水の国の民が、心から望むことではないでしょうか? 前女王様の選んだ、後継者——ジークリット様の忘れ形見、それがヴィルフリート様です。彼こそが、この国を治めるべき王。そして、それを支えるのが私の役目なのです」

 

淡々と語る、エルナの声をした少女。だが、まるで操り人形のように、無機質で、意志を感じられない声音だ。だらんとした両腕に、今にも首から転げ落ちそうな程、傾いた頭。自分の力で立てず、両側の男たちに支えられることで、かろうじて地面につけた足の裏。


ローラントは目を見張り、少女の後ろ姿を凝視している。一方、ヴィルフリートは目を細め、イーヴォの笑みを必死にかみ殺す顔を見据えていた。エルナも驚きのあまり、ただ茫然と少女の姿を見つめるばかりだった。彼女は本当に生きているのだろうか。そんな考えが頭を過り、さーっと血の気が引いていく。


それに、彼女の語る言葉は何だろう。真の後継者だとか、王女であるジークリットの忘れ形見とは、いったい何の根拠があって出てきた話なのだろう。ヴィルフリートは人間のはずだ。


「エルナ、あれはクロミツだわ‼ あいつらに操られてるのよ‼」


「え?」


耳元で、焦ったようなマシロの声が響く。

信じられないような言葉が飛び出し、エルナは一瞬思考が停止する。


「クロミツはエルナに変身したのよ! 私たち妖精動物の特技は変身なの。クロミツも、牢屋の中でエルナに変身したんだわ!」

 

マシロの声を聞きつけたのか、チャチャも小声で囁く。


「マシロの言う通りだよ! においでわかる! あのエルナがクロミツだ!」

 

そのとき、クロミツの居場所を尋ねたときに、エルマーの発した言葉が思い返された。


——猫には仕事があるんだ。大事なね。でも、心配しないで。傷つけてもいないし、移動させてもいないよ。

 

彼からそう聞いたときは、ただ単に牢屋に残っているだけだと思っていた。だが、違ったのだ。


(もしかしたら、エルマーが……無理矢理クロミツを私の姿に変身させたのかも。でもなぜ? そうか、イーヴォ邸の人たちに、私がいないと思われたくなかったのかも。きっと、そうだ。クロミツの仕事っていうのは、私の身代わりをさせるってことだったのね)

 

エルナはエルマーの言葉と今の現状が、頭の中でかちりとはまった気がした。


では、捕らわれて、抑揚なく話す少女は、クロミツとみてまず間違いないだろう。

操られているということに関しても納得できる。

どう考えても、クロミツらしからぬ発言であるし、この抑揚のない話し方はどう見ても普通ではない。


(これは魔法……?)


クロミツを自在に操っているこの力は一体何なのだろうか。魔法だとして、これは後遺症など悪い影響はないのだろうか。心にじわじわと不安が広がる。


「女王陛下、この者は操られております! 根拠のない話です! ヴィルフリート様が、我らを裏切るようなことを考えるはずもありません!」


ローラントが声を張り上げて主張するが、イーヴィも負けじと声を重ねる。


「陛下! ヴィルフリート様は、〈裏切りのジークリット姫〉の血を継ぐものです! しかも、あさましき人間の血も混じっている! 裏切り者と、薄汚い人間の血の混血など、恐ろしい怪物と同じ。いくら、この清らかな国で暮らしたとて、彼の心根が変わるはずもないのです。彼は、この国の乗っ取りを画策している! 曲げようもない事実なのです!」


女王は涼しい顔で、ローラントとイーヴォの顔を交互に見やり、そして、黙って状況を静観する、ヴィルフリートに目を向けた。


「なぜ、黙っているのですか、ヴィルフリート。あなたの口から説明すれば済むことではありませんか?」


ヴィルフリートはゆっくりと顔を上げ、まっすぐに女王を見つめた。感情の読み取れない、無機質な表情だった。だが、わずかに瑠璃色の瞳には苦悩の色があった。ただ、それを見せたのはほんの一瞬のこと。

 

彼は意を決したように、青い絨毯の上を進んだ。それから、操られるクロミツの横を通り過ぎ、イーヴォの隣に並ぶように立ち、片膝を床に付け、首を垂れた。


「まずは、帰還が遅れましたこと、お詫びも申し上げます。全ては私の不徳の致すところ、弁明の余地もございません」


「顔を上げなさい」

 

ヴィルフリートは顔を上げた。黒髪がさらりと揺れる。


「状況を説明しなさい」


「半年前、私は自らの意志で外へ出ました」

 

その場に動揺が広がった。ローラントは信じられないものを見るようにヴィルフリートを見、それから顔を歪め、唇を噛んだ。イーヴォは勝ち誇ったようにほくそ笑んでいる。エルナは状況がわからないながらも、彼の発する一言が、彼を追い詰めるような言動であると直感的に感じた。


「私には兼ねてより、恋焦がれる相手がおりました。その者に会いに、ここを出たのです。そして、相手の心も私と同じであると、確認したかった。私と共に生きてくれるという確証が欲しかった。そして、お互いが同じ気持ちだとわかれば、私はすぐに陛下にお伝えし、この国を出るつもりでした」

 

女王の瞳に戸惑いの色が浮かび、ローラントは息をのんだ。そして、イーヴォはますます笑みを濃くする。思わぬ僥倖に、喜びが隠し切れないようだ。


(何で、こんなこと言うの⁉ いわれもない言いがかりだと、一言いえばいいのに! それに、ヴィルフリートさんの恋焦がれる相手って誰……?)

 

ヴィルフリートの恋した相手。それは一体誰だろう。チクリと心が痛む。好きだ、結婚してくれと言われたのは自分だ。けれど、今ヴィルフリートの言っている〈恋焦がれる相手〉は自分ではありえない。彼は彼女の気持ちを確かめるために外に出たと言った。ということは、以前からの知り合いということになる。エルナは出会ったばかりだ。


彼はなぜ恋する相手がいるのにもかかわらず、エルナに思わせぶりな態度をとり続けたのだろう。好きだとか、結婚してくれなどと言ったのだろう。彼にとって、大した意味を持たない言葉なのだろうかなどと考え始めると、心が痛かった。ぎゅっと握りつぶされるような、そんな痛みが、顔を歪ませる。


(なんでだろう……?)

 

膝を折る、黒髪のヴィルフリートの背中を見つめた。


(なぜだかとても悲しい……)

 

じわりと視界が滲む。

ヴィルフリートに想い人がいるという事実が、エルナの心をひどく動揺させた。彼の包み込んでいてくれたときの手のぬくもりを思い出して、エルナはぎゅっと拳を握る。


(おかしいな……私はヴィーのことが好きなのに)


自分の気持ちに紗が掛かったようでよく見えない。心が抉られるような痛みが走り、エルナは目を細める。


(これじゃあ、まるで、ヴィルフリートさんに片想いしているみたい)

 

持て余していた感情が、すとんと胸に落ちた。


(恋してるというの……? ヴィルフリートさんに?)

 

認めたくないが、エルナはそれが真実だと思った。ヴィーを待ち続けていなければならないのに、いつの間にか自分はヴィルフリートに想いを寄せるようになっていたのかもしれない。


(こんな浮気者じゃ、主人公(ヒロイン)失格なのに)

 

色恋沙汰のことなど考えている場合ではない。

操られているクロミツ、反逆罪を問われているヴィルフリートの進退——それをこそ、まず第一に考えなくてはならないのに、エルナ心に渦巻くのは、ヴィルフリートへの想いばかりだ。他の思考を勧めようとしても、ヴィルフリートの自分に向けられた温かい言葉が、表情が、全てを押しとどめてしまう。


(ヴィー……ごめんなさい)


エルナは少しでも顔を覆い隠そうと、黒色のフードの裾を引っ張った。



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