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短編置き場  作者: 細井雪
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執事と家政婦の休憩話

異世界風。

四十年間同じ職場(伯爵家)で働いてきた執事と家政婦がお茶をしている一コマの、家政婦のゆるい一人語りです。





 あら。アーヴィングさん、休憩ですか?


 ええ、私も広間の掃除のチェックが終わって、今から休憩に入るところなんです。

 アーヴィングさんは、旦那様のお手伝いで領地運営の書類をまとめていたのでは……先ほど終わったところなんですか。それはお疲れ様です。


 そうだわ! お茶を淹れますので、休憩をご一緒してもよろしいですか? ふふ、ありがとうございます。


 ふう、一段落ついてからのお茶は美味しいですね。

 あ、気づきましたか? このお茶、とても美味しいと最近評判になっている茶葉なんです。奥様が先日のお茶会でお聞きしたらしく、取り寄せたものを少しだけ分けて頂いたんです。

 え? そんな貴重なものを自分にも分けて良いのかって?

 せっかく頂いた美味しいお茶なんですから、一緒に飲んだ方がより美味しいじゃないですか。アーヴィングさん、昔からお茶にはこだわりがありましたし。


 え? なぜお茶にこだわりがあることを知っているか?

 そんなこと、長年一緒に働いていれば知っていますよ。

 そういえば、もう四十年も一緒に働いていますね。周りはみんな結婚したり、他のお屋敷に移ったりして、まさか私が家政婦にまでなるなんて思ってもいなかったですけれど、アーヴィングさんがいて本当に良かったです。こうして一緒にお茶も飲めますしね。


 私はすぐに辞めると思った? 確かに働き始めたばかりの頃は故郷へ帰りたいと毎晩泣いたものですけど、これでも頑張ってきたんですよ。

 あら、冗談? 私が頑張ってきたのを知っている?

 まあ。優秀な執事のアーヴィングさんに褒めて貰えるなんて、こんな光栄なことはありませんわ。


 大げさ? そんなことありませんよ。

 私が十五歳でお屋敷のメイドとして働き始めたとき、アーヴィングさんだって執事見習いで私と年も変わらなかったのに、すぐに出世してしまったんですもの。

 アーヴィングさんは昔から冷静で、いつの間にか仕事を終わらせているし、慌てているところなんて見たことがないです。

 それに比べて、私はしょっちゅう失敗して慌てては怒られてばかりでしたわ。

 でも、アーヴィングさんは、困っているときは手を貸してくれたし、落ち込んでいるときには慰めてくださったから、そのおかげでここまで頑張れましたわ。


 ずっと、初恋の人ですよ。


 あっ! アーヴィングさんっ、そんなにカップを傾けたら中身が零れてしまいますよ!

 ええ、カップをゆっくり戻して……あら、そんなに一気に飲んで、喉が渇いていたんですか? もう一杯入れます? いらない? そうですか、じゃあ私はもう一杯。


 え? さっき言ったこと?

 あら、まあ、うっかり口が滑ってしまいましたわ。でも、ずっと言わないのもあれですし、おばあさんの独り言だと思ってください、ふふふ。


 ――あら、アーヴィングさん、いつの間に隣に?


 あの、私の手、何かついていましたか? ついていない? でしたら離して……あ、あの、私は引っ張られて一体どこへ連れて行かれるのですか?

 え? 旦那様のところ? なぜ――許可? 何の許可を取りにですか? はあ、大事な許可ですか、そうですか。


 それはそうと、アーヴィングさん、手を離してくださいませんか?

 こんなところ、若いメイドたちに見られたら示しが……いえ、私みたいな年でそんなことあり得ないと分かっていますが……あの、なぜ手の力が強くなるのですか?


 まあ! そんなに強く扉を開けるなんて、アーヴィングさんらしくないですよ。

 ああ、旦那様。突然申し訳ございません。もう、アーヴィングさん、こんな失礼な真似――あら、旦那様、なぜ笑っていらっしゃるのですか?


 アーヴィングさん、一体なにをそんな真剣な顔――え……?





主人公、のんびり家政婦。執事、優秀なイケおじ。という設定です。

十代、二十代以上の年齢の恋愛話も好きです。

主人公が自分のことをおばあさんと言っていますが、中世風の年齢ならという感じです。全然若い二人。

読んで頂きありがとうございました!


続編ができました。https://ncode.syosetu.com/n0967hn/25

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