表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バイクとマークおじさん

作者: 絵里子



カナダのハイダグアイ島に住むマークおじさんは、海岸線を車で走っているときに、コンテナが打ち上げられていることに気づきました。


「こんなところに、どうして……」


ふしぎに思いながらコンテナをあけてみると、そこに日本のナンバープレートがついたオートバイが入っていました。それは、ハーレーダビッドソンと呼ばれるバイクでした。


「ははあ、もしかしたらこれは、あの津波のときのバイクだな」


マークおじさんは、急に心配になりました。


10年前の震災の時の津波は、ただごとではありませんでした。実際に映像を目の前にして、おどろきましたし、背筋もこおりました。バイクの持ち主は、生きているのでしょうか。


どうすればいいのかわからなかったので、マークおじさんはとりあえず、日本の領事館へ連絡を入れました。


数日後、領事館から連絡がありました。


「バイクの持ち主は、生きています。横山さんというのです」


マークおじさんは、喜びました。


幸い、横山さんは英語ができる人でした。マークおじさんが、バイクを見つけてくれたことに感謝する横山さんに、マークおじさんは、こう言いました。


「どうでしょう。バイクをうちの会社のほうで修理して、そちらに輸送させていただきますよ。うちはバイクの修理工場をやっているんです」


横山さんは、何度もお礼を言いましたが、きっぱりとそれを断りました。


「そこまでしていただく理由がありません」


「いや、困ったときはお互いさまですし」


マークおじさんが言うと、横山さんは、電話の向こうでむせび泣きました。


「それより、やってほしいことがあるんです」






いま、マークおじさんは、ハーレーダビッドソンの博物館にいます。横山さんのバイクを展示してくれるように、館長さんにお願いするためです。


館長さんは、砂や海水の塩がいっぱいついたバイクを見て、


「これは、掃除したほうが見栄えがするよ」


と言いましたが、マークおじさんは、


「いや、津波の被害がどれほどのものなのか、みんなに伝えたいというのが横山さんの願いなのです」


と言い張って、ゆずりませんでした。




いまでもハイダグアイ島の博物館には、日本製のボロボロになったバイクが展示されています。横山さんとマークおじさんは、いまではしょっちゅうリモートで、酒を酌み交わしたりしているそうです。(了)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] リモート飲み会は海を越えるのか!
[良い点] ハーレーダビッドソンのモデルはマニアでは 垂涎 の的だそうですね。。。。 マークおじさんも凄い人だと思いましたが、横山さんの日本人らしい潔さが、改めて「日本人でよかった」と思いました。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ