誕生
まどろみの中、唐突に目が覚める。
真っ暗で何も見えないうえに、とても狭い場所に閉じ込められているようだ。
私はそこから出ようと体を動かす。
少し動くたびにぴしりと音がしてかすかに光が差し込む。
やがて私を覆っていたものはなくなり、私は外に顔を出す。
そこで私が目にしたのは、巨大な紺色の壁だった。
よく見ると鱗の様な形が見える。
上を向くと赤い月が二つ。
いや、それは月ではない。
一対の瞳だ。
ようやく全体が見えてきた。
私が見ていたのはいかつい顔の巨大な蛇。
おとぎ話に出てくるような恐ろしい形相の龍だった。
『ああ、なんということか』
龍がこちらを見ながら口を開く。
『我が子にこのような色が生まれてこようとは』
そこで私は初めて自分の体を見る。
目の前の龍とは似ても似つかぬ色のオーロラがかった様な白い鱗がそこにあった。
『いいや、よもやコレは我が子ではない』
我が子と言っていたのは私のことだろうか。
たった今我が子ではないと言われたが。
では恐らくこの龍は私の母といったところか。
龍は私には目もくれず、どこかへ行ってしまった。
さて、どうしたものか。
まずは現状の把握か。
私は先ほどの龍の子供らしい。
しかし、親と色が違うために捨てられたようだ。
ここはどこだろう。
暗い水の中だ。
私の他には誰もいない。
・・・・。
わかっていることが少ないな。
ん?待てよ・・・・。
そういえば私は何だ。
親が龍なら私も龍ということか。
・・・・。
何か忘れている気がする。
私は、私は、本当に龍か?
生まれたばかりの私がなぜ龍がおとぎ話に出てくると思ったんだ。
知らないはずのことを知っている・・・。
これは、記憶か?
私が生まれる前の私の記憶。
ふむ、どうやら私は前世の記憶を持ったまま転生したようだな。
しかし、自分のことが一切思い出せない。
知識に関しては普通に思い出せるようだが。
まあ、前世の自分を引きずるよりいいだろう。
だが、記憶から察するに私は人間だったのだと思う。
地球という星でこれだけの知識を持つのは人間だけだからな。
龍が存在するということは地球ではないようだが。
前世の知識の中に似たような状況があったな。
何と言ったか・・・。
そうだ異世界転生!
地球とは別の魔法などがある異世界に記憶を持ったまま転生することだったか?
詳しくはわからないが、そんなところだろう。
ならば自分を知るために一番手っ取り早いのが、ステータスだな。
できるかはわからないが・・・。
よし!『ステータスオープン』!
<ステータス>
名前 なし Lv1
種族 レヴィアタン亜種:幼体
称号 ?? 転生者
状態異常 衰弱 空腹
生命力 57/60
体力 23/50
魔力 50/50
物理攻撃力 15
魔法攻撃力 20
物理防御力 30
魔法防御力 30
素早さ 60
幸運 52
<スキル>
防御膜Lv1 水魔法Lv1 光魔法Lv1 熱察知Lv1 言語理解Lv10 成長補正Lv1