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hello,good-bye2

国境を越え、ファリス子爵領へ入った。宿のおかみさんが言っていた通り、現れる魔物は、雑魚ばかりで、ロスの呪文、もしくは、僕の槍の一振りで事足りた。昨夜、アレインから聞いた、『流浪の民』の話が、頭から離れなかった。(たち)の魔法のお師匠は、魔道士の塔の院長様の様な、はげた白髭のお祖父さんだったのだが、彼の孫娘のリ一ザ、、移動呪文で、僕を逃してくれた、双子の兄イリヤの恋人、、が、笛が得意で、彼女が、笛を吹き出すと、小鳥や獣たちが、集まって来ていたのだ。普段は、食う、食われるの関係にある、獣たちも、その一時は、大人しく、笛の調べに耳を澄ませていたものだった、、。

「言葉数少なだね。緊張しているのかい?」ロスが、訊いた。

僕は、いや、と、首を横に振った。

「不気味なほど静かだな、と、思ってさ。『救い主』様のご威光のお陰かな、なんて思ってた」「ジョシュア、気を付けた方がいい」ロスは、言った。

「魔物を押さえつけておける、ということは、逆に、魔物を解き放たれるだけの力を持っている、ということだ。領主一家が、脅され、何者かの意のままに、操られていないとも、限らない」

「何者か、、流浪の民の人たちの可能性は?」訊ねると、ロスは、驚いた顔をした。

「何処で、、誰に聞いたんだい?その話を」

「アレインが、僕が吹く笛の音が、その一族の人たちに似ている、って。実は、蛇女と戦った時にも、不思議な笛の音が聞こえて来て、それで倒せたようなものなんだ。だから、ひょっとしたら、って」

「ジョシュア、言葉に気を付けた方がいい」ロスは、言った。

「これから向かうファリス子爵は、彼らのことを、毛嫌いしていて、聞いた話によると、橋を造る際に、彼等一族の者を捕らえて、人柱にしたって話だからね。昔のことだけど」

「、、そうなんだ」と、僕は、答えた。そして、

「サ一シャは」と、言った。

「うん?なんだい?」

「不思議な髪の色をしているな、って思って。何処の地方の出身なのか、ロス、知ってる?」

「、、大きなショックを受ける出来事があって、それを境に、髪の色が変わってしまった、と、言っていたよ。後は、本人に、訊ねてみればいい」ロスは、言った。


街道沿いの町に、宿を取った。王都を含めて、これまで通過して来た国々で見てきた様な、魔物たちの襲撃を受けて、命からがら逃げ延びて来た、悲愴感に満ちた人々は、見られなかった。通りには、大道芸人すらいて、お手玉や綱渡りや猿回しで、見る人を楽しませていた。屋台も、出ていて、リンゴや杏のジャムを挟んだクレープや、串焼きの肉、麦酒などが売られていた。行き交う人々の目は輝き、笑顔に溢れていて、魔王の脅威が迫っていることなど、微塵も感じられなかった。

「私は、一足先にお城に参り、ご領主様からのご親書を届けて参ります。皆様は、ごゆるりと、お休みください」

昼食を終えた後、ルスランは、そう言って、丘の上にそびえるファリス城へと、出発して行った。ガレットを食べ、リンゴの発泡酒を飲み、チーズをつまみながら、僕たちは、顔を見合せた。

「何か、、変だよね」

「今のご時世、平和なのは、けっこうでございますが、ここまで危機感が無いと、却って不気味ですなぁ」

「まるで、ここだけ、時間が巻き戻ったみたいね。魔物たちが現れる前に」

「、、、、。」

「お嬢さん、ちょっといいかい?」ロスが、給仕の娘を呼び止めた。都会的な風貌のロスに、娘は、目を瞬いて、にっこりした。

「はい、何でしょう」

「隣の町で聞いたんだけれど、この国に、『救い主』が現れたんだって?どんなお方なんだい?」

「救い主様のことなら、この町で、いや、国中で、知らない者はいないねぇ」と、隣のテーブルに料理を運んで来た、おかみさんが、そう言った。

「この国だって、一月前までは、魔物たちが現れて、大変だったさ。特に、質の悪いのが、いてねぇ。お姫様を、人身御供として、差し出さなきゃ、国中の子どもたちを、コブタに変えて食っちまう、なんて、ぬかしやがったのさ、、!」

「へぇ、そりゃあ大変だ。それで、どうなったの?」

「皆が、ほとほと困り果てていたところに、救い主様が、、長い髪の、それは、お美しいお方だよ、、現れて、お付きの者二人と、お姫様が乗せられるはずだった、輿に乗り込み、魔物たちの根城まで行き、、見事、そいつの首級を上げて来ちまったのさ、、!あたしたち領民たちは、もちろん、ご領主様も、たいへん、お喜びになって、救い主様を、お城に召し抱えられて、、それ以来、魔物たちは、救い主様の霊力に恐れを為して、この国は、平和そのものになったって訳さ」

「へぇぇ、そりゃ、見事なもんだ」と、大げさに、ロスは、驚き、

「それで?その、魔物たちの根城ってのは、何処にあったんだい?」と、訊いた。

「お城の南東に、ご領主様ご一家の、ご先祖様が眠る、お墓があってね、魔物たちめ、そこに居座りやがったんだよ、、!」

「それで?魔物の頭というのは、どんな奴だったの?」アレインが訊いた。

隣の席に座っていた、赤ら顔の男が、

「デカいカエルの化け物だったよ。見せしめに、広場で、火あぶりにされたんだけど、奴め、首を落とされても、まだ、生きていて、火に焼かれながら、

『裏切り者、、』とか、ほざいていたなぁ」と、麦酒を飲みながら、言った。

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