And I love her,,,4
「ぶ、ぶ、無礼者ぉ!」
今にも掴みかからんばかりの勢いで、ルスランが言った。
「控えよ。ルスラン」お父様が、おっしゃった。「続けてみよ、ジョシュア殿」と。
「ご覧の通り、僕は、『預言の勇者』と呼ばれるには、まだまだ未熟な若輩者です。ここシャルトランにも、仲間たちの助けがなければ、到底たどり着くことも出来なかったでしょう。特に、アレイン姫様の存在無くしては」「、、、、。」
「明朝、お城を発ち、魔王討伐に向かうつもりでしたが、一日に何度も、あのような魔物たちが、押し寄せて来るのを目の当たりにしては、僕は、不安で、おちおち眠ることさえ出来なくなってしまう。この地に残して来た、アレイン姫様の身を案じながら、心を引き裂かれた状態で戦ったとしても、魔王に敵うとは思えません。それに、敵は、必ずや、僕の弱点を、突いて来るでしょう。アレイン姫様を、人質に取るなどして」
「、、つまり、更なる強力な魔物が、アレインを狙うて、この城に攻め寄せて来る、と?」
「それは、憶測に過ぎません。どんな、強大な力を持つ魔物が攻めて来ようとも、この私目が、身を盾にして、姫様を、お守りしてご覧に入れます、、!」
ルスランは、顔を真っ赤にして、そう言った。
「控えよ、と、申したではないか!!」お父様が、一喝された。
「現に、地の底から蘇りし、フィリップ目を倒せたのは、この方々の御力があったからではないか。恥知らずにも、魔王の門下に下り、アレインを欲した、あの者を、、ジョシュア殿の懸念は、最もだ。御一同が出発された後、あれらが出現していたとしたならば、我らは、公子のみならず、姫まで失うところであった。いや、もしかすると、この城まで」
「、、、、。」
「時に、ジョシュア殿、今のは、アレインに対する、求婚と、受け取って良いのだな?」
「はい」と、頷いた、ジョシュアの顔が、耳まで真っ赤になった。
「ご領主様、、!しかし、アレイン姫様には、隣国ファリス子爵家のブランドン様、という、れっきとした婚約者が、、!」
ルスランが、食い下がった。
「我が城が魔物たちの大群に襲われ、フィリップが命を落とし、大いなる痛手を被って、やむなく、ファリス子爵家に救援を要請したところ、子爵殿は、こう返事を返して寄越された。
『我が領地にも、魔物たちが現れ、人員を割く余地などありませぬ。どうぞ、シャルトラン公爵家に、神のご加護が舞い降りますように』とな。その様な、非情な返事を寄越す国に、操を立てる必要が、どこにある?アレイン」
「はい」
「そなたの人生だ。そなたの好きな道を選ぶがいい。これまで苦しんで来た分、そなたには、幸せになる権利がある」
広間が、水を打った様に静かになった。私は、震える声で、
「私は、ジョシュアと、、皆と共に参りとうございます」と答えた。
「そうか」と、お父様は、頷かれた。
「それでは、ジョシュア殿、娘を、よろしく頼むぞ。愚息に引導を渡してくれたこと、心より感謝致す。皆、宴の準備に取りかかるのだ!魔王討伐に向かう、勇者たちへのはなむけと、アレインの婚約祝いの宴の為の準備をな、、!」
その夜は、盛大に花火が打ち上げられた。広場にも、テーブルが出され、葡萄酒が抜かれてご馳走が並び、楽士たちが、この二月ばかり、奏でられることのなかった、舞踏曲が演奏されて、初めにジョシュアと私が、続いて居合わせた人々が、笑顔でダンスをした。宴は、夜遅くにまで続き、疲れはてて寝台にもぐり込み、私は、泥のように眠った。昼過ぎまで。
そして、私たちは、出発した。予想外だったことは、ルスランが付いて来たことだった。隣国ファリス子爵家への、私との婚約を無効にする、という、お父様の親書を携えて。