And I love her,,,
私たちを覆う淡黄色の光が消えると、懐かしい景色が、目に飛び込んで来た。私の故郷、600年の歴史を誇る、シャルトラン城、、西の白亜の宮殿と称されたこともある、そのお城の城壁は、魔物たちの攻撃によって破壊され、兵士たちが、土嚢を積み上げて、急場をしのいでいる状態だった。突然の私たちの登場に、警鐘が鳴らされる。けれど、御者台からルスランが、続いて、馬車の中から、私が飛び出すと、身構えていた兵士たちから、歓喜の声が上がった。
「姫様が戻られた!」「姫様のご帰還だ!ご領主様にお知らせしろ!我らの姫様が、戻られたぞ!」
いつやって来るか判らない、魔物たちの攻撃に備えて、戦々恐々としていた、兵士たちが、目に涙を浮かべ、両手を振って、歓迎してくれる。私たちの目にも、じんわりと、涙が浮かんだ。兵士たちの手を取り、私は、言った。
「皆、安心して!国王陛下は、私たちの願いを、お聞き入れて下さったわ!間もなく、物資と人員の支援が届くはず!皆、、よく、持ちこたえてくれたわね!」
「姫様こそ、、よくぞ、ご無事で、、」
感涙にむせぶ私たちを、嘲笑うかのように、ギャアギャアと、魔物たちの鳴き声が聞こえて来た。土嚢で一時しのぎをしている城壁の向こうにある、湖から、白波を立てて、こちらに向かってやって来る、魔物たちの姿が見えた。空が薄暗くなるくらい、大量のガ一ゴイルと、巨大な噛み付き亀の群れだった。
「魔物たちだ!者共!姫様を御守りしろ!指一本触れさせるなよ!」
狂ったように鐘が鳴らされ、弓矢と槍を持った兵士たちが飛び出して来る。醜悪な翼を羽ばたかせて、ガ一ゴイルたちが、急降下して来る。そこへ。
突如として空に湧いた雷雲から、雷鳴が轟き渡り、稲光が走った。一陣の風が吹き抜けた、次の瞬間、凄まじい雷が落ちた。サ一シャとロスが杖を振り上げ、続けざまに爆発呪文を唱える。上陸しようとしたところに、雷と、爆発呪文の直撃を受けて、魔物たちの硬い甲羅と、肉体が、木っ端微塵に吹き飛んだ。雷雲が晴れた時には、魔物たちの姿は、消え去っていて、兵士や領民たちから、歓声が上がった。
「よくぞ戻って来た。アレイン、ルスランよ。国王陛下からの親書が、先ほど届いたところだ。ありがたいことに、物資も人員も、明朝には、届けて下さるとのことだ。親書を届けてくれた魔道士殿も、先ほどから、怪我人の治療に当たって下さっている。そして、、勇者ジョシュア殿、戦士ファビアン殿、魔道士サ一シャ殿、ロス殿、二人をここまで警護し、送り届けてくれたこと、改めて御礼申し上げる。また、到着して早々に、魔物たちを、殲滅せしめてくれたとのこと。重ねて御礼申し上げる」玉座に座ったお父様は、深々と頭を下げた。その目に光るものがあるのを見て、私の胸も詰まった。
「今宵は、心ばかりの御礼の宴を開こう。見ての通りの有り様だが、どうか、ごゆるりと、寛いで行って頂きたい」
「お心遣い、感謝致します」
皆も、また、頭を下げ返した。
一月以上お会いしていなかった間に、お父様は、面やつれした様に見えたけれど、毅然としたご様子は、以前通りで、少なからず、私は、安心した。お兄様を失った、悲しみと悔しさに浸る間もなく、領主として、この窮地から、民を守らなくてはならない、という、強いご決意が、そうさせているのだろう、と、思った。