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第2話:生きてる意味 充

世間なんて腐ってやがる。

真面目といわれる奴ほど俺が嫌うものはない。

悪いことは真っ先に俺が疑われた。

窓ガラスが割れたときも。

誰かの金がなくなったときも。

真っ先に俺が疑われ、俺のせいにされてきた。

先生まで真面目を指差して「こいつを見習え。」口ぐちにいった。

じょーだんじゃねぇ。

紙切れ一枚が何なんだよ?

いける高校がねぇ?

あぁ。上等だ。

フリーターやってやるよ!

そんな毎日で、毎日がある意味も。

生きる意味さえわからない。

ムシャクシャして人殴って。

遊びで軽く人いじめたり、物を投げたりした。

真面目君はたいてい先生に好かれる。

そんな中、真面目が一人目に入る。

あいつもそうなんだろう。

だから。

いつもみたいにいじりに入る。

「うっわぁー何あれ!!」

見ただけで目間合いがしそうな字がびっしりでこれっぽちも挿絵がない本をその女子は読んでいた。

「あれさー梨本ってんだけどさー。存在自体“元”から“無い”よな?」=梨本。もとなし。

「そーそー!!頭悪いし笑わないし。最悪だよなー!」

ふーん?

俺が知ってる真面目とはだいぶ違うみたいだな。

気取らず、笑いものにされても顔色1つ変えない。

腐っちまってるよな。

やっぱ、この世界。

お前も腐っちまってる中にいることに慣れきったんだろう?

外見だけでものを言われるこの世界によぉ?

何故かはわからない。

この日から俺は梨本を気にかけるようになっていった。

外見だけで物事を。

すべてを判断されるこの世界に何のために俺らは生きるんだろう?

「生きてる意味ってわかんなくない?」

不意に出た言葉に梨本が少し反応する。

お前は生きてる意味がわかるか?梨本。

「そんなの、どーでもよくね?」

「そーだな。今が楽しけりゃそれでいいか。」

自分が出した質問にあっさりと答えが出ていた。

すると梨本が立ち上がった。

自分でも今の答えが本心じゃないことぐらいわかってる。

そして俺は何故か梨本の後を追っていた。

梨本が見つめる先には空があった。

何かに取り付かれているかのように青いその空は。

幸せと同時にいつも不幸せを描かせる。

幸せの青い鳥だったり。

悲しみの青だったり。

形を変えて何度も何度も生まれ消えていく。

今、梨本が見てる青は、どっちの“青”なんだ?

「おー晴れてるねー。」

梨本が振り向く。

俺の姿を見ると、無言で通り過ぎようとした。

「梨本さんにはわかる?」

彼女は足を止め、ゆっくり振り返る。

「何を?」といわんばかりだ。

どーやったらこんな少しのしぐさでこんなに感情を入れることができるんだろう?

「生きてる意味。」

少しだけ梨本が眉間にしわを寄せる。

困ってるとも、怒ってるとも取れる表情で、なんとなく顔をそらす。

「わかんねーよな。意味も。空の青さも全部。」

すると彼女の口が動く。

「あなたたちにわかんないよ。一生。今が楽しけりゃそれでいいんでしょう?」

そして顔をそらして床をにらみつける。

それは本気で迷惑がっているようにも、俺に当てられた何かのメッセージのようにも見えた。

「かったいなー梨本さん。」

少し怒らせてしまったかもしれない。

話題を変えるか。

「けど、誰にもわかんねーんだろうな。生きてる意味なんて。生きてる限り。さ。」

見つめられることには慣れていない。

睨みつけられることには慣れてるけど、梨本は怒ってもいなければ驚いたようすも無くて今梨本は何を思ってるのか知りたくて。

俺は笑いをとった。

「惚れた?」

確かに梨本は笑った。

でも、鼻で。

「私に惚れられてうれしいやつがどこにいるの?」

いや、別にみんな誰かに好かれたらうれしいんじゃん?

「いるんじゃない?種食う虫も好き好き。」

すると梨本は表情を緩め、言い放った。

つまり、苦笑したのだ。

「君がうらやましいよ。馬鹿やって騒いでりゃそれでいいんでしょう?」

そればっかじゃねーよ?

それじゃ、梨本はいつも本気でいきてんのか?

生きてる意味なんてわけわかんねーもん探したりしないのかよ?

「そー見える?はは。そんなに言うんだったら梨本さんも明るく……」

「君に私の何がわかるの?」

わかるよ。

腐った世界の中に慣れきって結局はどっかで現実から目をそらすんだ。

俺らと同じだろう?

「相変わらずだな梨本さん。けどさー、どーしてそーゆーふーにいっつもしかめっ面してるわけ?」

顔色ひとつ変えずにどこか一点を見つめたまま梨本は自分の顔に触れる。

「たまには笑えよ?」

「余計なお世話。」

そらそーだわな。

「……名前、何だっけ?」

聞いてはいけないことを聞いてしまったようで驚いた。

「は?」

「君の名前、何だっけ?」

顔や態度はどこも怒ってないのに声だけが起こってるように聞こえる。

時田(ときた) (みつる)……だけど……。」

「そ。じゃ!!」

そう言って俺が言葉を発する前に梨本は走り去って言った。

本を読んでる梨本。

…よし。思い切って邪魔してやるか…。

「梨本さん。」

振り向いた梨本の顔はすごく驚いてて、口が半開きだった。

「本ばっか読んで楽しい?」

「君には分かんないよ。」

そんな即答しなくても。

「何で私なの……?」

「え?何が?」

「何で私に話しかけるの?無視すればいいじゃん。」

「……なに?好きな男子でもいるのかな〜?」

冗談を言ったつもりが本気で怒られた。

「んなわけないじゃん!」

「まーまーおこんなって。何部?」

「……美術部。」

「へー。俺バスケ部。」

「聞いてないし……。」

梨本を見ると、本に目を戻してはいるけどうっすらと笑っていた。

「あー!!今、部活やってないだろ。とか思っただろ!!」

「思ってないよ。」

「嘘付け!」

「うん。正直思った……かも。だって、廊下とか校舎内に体育着とか着た金髪いたら目立ちそうだし。」

梨本の口が猫のようにくにゃっと曲がっていた。

笑うとなかなかかわいい。……かもしれない。

「もったいないなー。」

その声に梨本はすぐしかめっ面に戻ってしまう。

そのまま梨本を観察し続ける。

「何?あんまジロジロ見ないでくれない?」

「気にしない。気にしない。」

「気になるから!」

そんな日が何日か続いたある日。

「ねぇ。時間なんてさ、いつも同じようなこと繰り返してるって思うときない?」

「ん?」

「人を見下す奴ほど外見だけしか見てなくて、人間として低レベルだって思うこと……ない?」

あるよ。

めちゃくちゃあるよ。

「ないか。あるわけないよね!」

「あるよ。あるから何かに反発して生きるんだ。」

「そ……かぁ。不良でもそゆーことかんがえるんだぁ?」

「不良不良ゆーな!このくそ真面目!!」

仲良くなってわかった。

梨本も生きてる意味を探してる。

俺らとは違うやり方で。

梨本は誰も自分に触れさせないことで自分の考えから自分を守って。

それでこの世の中に反発してるんだ。

けど、鎧を身にまとうなんて見てて痛々しすぎる。

ほんとは一人じゃ何にもできないくせに。

一人じゃ辛いくせに。

だから本に逃げたんだ。

違うか?

って、何やってんだ。

梨本ばっか見てるじゃねーか。

梨本はほっとこ。

そう。

ほっとくんだ。



―――…。



「ねぇ?」

その一言で俺は振り向いてしまった。

呼ばれたのが俺じゃないかもしれないのに。

「生きてる意味。君ならわかる?」

「は?」

「君があの時私に聞いた言葉だよ。あの時の私も君みたいな顔してたのかな?困ってるような。切羽詰ってそうな。」

「はぁ?よくわかんねーんだけど。」

「いや。落ち込んでるようにも見えたから。一人の時間。邪魔しちゃってごめんね?それと、いつもみたいに元気にしてなよ?」

梨本から初めてごめんなんて聞いた。

それに俺のことなんか見てたわけ?

放課後で、荷物をまとめて帰ろうとする梨本を俺は呼び止めた。

「待てよ。」

「ん?」

「たまにはハメはずしたら?」

「ゲーセンはやだよ?頭痛くなるもん。」

「じゃーなんならいいのさ?」

「ん〜話すぐらい?」

思わず噴出した。

「何それ!」

すると梨本はふっと笑った。

「笑った。」

「笑っちゃわるい?」

「言ってねーよそんなこと。」

いつの間にか教室には二人っきりで。

あっちこっちから部活の音が響く。

これってカップルだったらサイコーなんじゃ?

ま。俺にはかんけーねーけど。

「なんだろーね?君と私って似ても似つかないのにこうして出会って。私を馬鹿にしてた奴とこんなふうになるなんて思っても無かったよ。」

「馬鹿にって……悪かったよ。真面目って嫌いなんだよ。くるくる目上の人のことばっかきにしてなくちゃいけないみたいで。」

「自分を偽る生きかたってやつ?」

「そう!それ!」

「はぁ〜。なんか駄目だ。私。君といるとおかしくなっちゃう。」

「ひど……。」

「なんだろーね?安心しちゃうのかな?」

はい?

「俺のこと男だと思ってないんじゃね?」

返事は来なかった。

梨本は何かを考え込んでいた。

鋭い目で睨みつけてる先は、“空”

そこにはうろこ雲がたくさん並ぶ青めの空があった。

ガチャガチャ。

「下校してくださーい。」

「はーい。」

2人で上辺だけの返事をして教室を出る。

「サボったんだね。」

「そっちもだろ。」

サボったとは、部活のこと。

仲間も連れてない。

このまま帰りたくない。

正直帰っても詰まらん。

「あーどーすっかな。まだ時間ありあり。」

「それはこっちも同じ。無断欠席だよ?」

「どっかにバックレよ……っても、あれか。ゲーセンやなんだよな。しゃーねー親の説教かよ」

「あ。じゃ、うち来る?」

「は?」

そう言ったとたん梨本は真っ赤になって否定した。

「や!うそ!!今のなし!!なかったことにして!!」

「親は?」

「遅くなるって。」

「ふーん?じゃ、行っていい?」

「え。でも。」

「何もしやしねーよ。」

「そうだよね。私が相手じゃね!!」

「だから……。」

『だからどーしてそうマイナスにとるわけ?』そう言いかけて言葉を失った。

梨本の顔を見てしまったから。

梨本の声は笑ってるのに。

顔は苦しそうだった。

「別に梨本だからってわけじゃねーよ。ただ……嫌われたくないだけ。」

「誰が?何を?」

何ってこと聞くんだ?この女。

「梨本さんが俺を!!」

「大丈夫!そのことはもう結果が出てるから。」

「あっそ。」

そのあと、いろんなことがあった。

とにかく、距離はだいぶ近づいたと思う。

「なしもっちゃん。」

「何、その呼び名。」

「いーじゃん最近なしもっちゃんしかめっ面なくなったよね。」

眉間にしわを寄せる梨本。

「もーいや。君といるの。」

「エーなんで?つーか君ゆうのやめよーよ。俺、時田って。」

「えー?じゃ、じた?」

どーゆーことだよ?何であの忌まわしい過去の名前を。

梨本が知ってるんだ?

何で、いまさらまた・・・・・・。

あのころの名が蘇るんだ・・・・・・?

「何でその名前・・・・・・。俺、じたって好きじゃないんだよね。」

「へぇー?そうっすか。じた君。」

「なしもっちゃん。俺のこと嫌い?」

「うん。嫌い。だって君といると私じゃなくなっちゃう。」

「どーゆーこと?」

「君の前にいると私、思ってること全部言っちゃうの。」

それは、嫌い=好きってことっすか?

「そっか。なしもっちゃん俺のこと好きなんだ?」

「はぁ〜?」

「ほら。否定しない。」

「そうね?否定する気にもなれない。どうしてあなたは私をそうかき乱すのかしら?どうして私に話しかけるのかしら?どうして私なのかしら?もう……。もう、私に近づかないで!」

「……いいよ。わかったよ。」

きょひられたのだ。俺は。

結局、梨本にとっちゃ、迷惑以外の何ものでもなかったんだろう。

話しかけない日々が続く。

「時田。怖い顔すんなよ。梨本移ったんじゃね?」

「移ってねーよ。」

梨本はゆーれーかっつーの。

「そういや、梨本も最近しかめっ面だよな。」

梨本が・・・・・・?

目の端に捕らえた梨本は本を手に、何かを必死でこらえてるような苦しそうな顔をしていた。

それは今までに見たことのない、今までよりずっとずっと怖い顔だった。

「にしても、この前の女?ふっちゃうにはもったいねーよな。」

うるせー・・・・・・な?

「時田って、梨本がすきなんだろ?」

「っ。はぁぁぁぁぁあ!!??」

んなわけねぇ。

んなわけ・・・・・・。

俺はふらふらと廊下に出る。

何かを求めていた。

梨本。やっぱわかんねー。

生きてる意味ってあんのかよ?

いつの間にか、梨本に初めて話しかけたところに来ていた。

外はどんよりと曇っていて、何故か苦しくなった。

俺は2つのものを失った。

ひとつは梨本のそば。

もうひとつはここ。

きっと、生きてる意味なんてねーんだ。

存在理由なんて、ねーんだ。

探したって、見つかるわけねーんだ。

苦しくなって俺はその場を立ち去った。

灰色のその空にも、俺の出した答えにも。

日の光が差し込むことはなかった。



それから、また何日が過ぎたんだろう。

あいつでもなけりゃ、こいつでもない。

俺は何を探してる?

何を求めてる?

わからないまま校舎内をすでに2週していた。

それでも俺はさらにスピードを上げ、歩き続ける。



「時田充!」



懐かしい声が響いたってきた。

いつもより、ずっと大きな声は、振り返ると息を荒くして肩を上下させていた。

きっと走ってきたんだろう。

何だ?

何を安心してるんだ?俺は。

「なしもっちゃん……?」

「ねぇ!私、わかっちゃったの!君が探してる問題の答え!」

「え?」

「ほら、人は何故生きるのか。生きてる意味!」

あぁ、とっくにあきらめた問題の答え・・・・・・ね。

梨本はあきらめてなかったんだ?

「へぇ?」

「みんなそれぞれ違うって言うじゃん?けど、そーゆー違う考えの人たちと出会うことで人は

それを喜びに変えるんだって。私と君はまったく縁のない人間だっておもってたよ。けど、私たちは出会った。そしてお互いの考えに触れることでそれを吸収して喜びや何かに変えて生きるんだって。そのために人は生きるんだって!そう思ったの。君がいたから。そう思えたの!」

その答えは俺が出したどの答えよりも率直で、正論で、なにより優しかった。

「わかったよ。由理奈(ゆりな)

ただ、うれしかった。

どうしてかはわからないけど。

答えを見つけられたことも。

梨本がそばにいてくれることも。

「何で……私の下の名前まで……。」

なんだろーな・・・・・・。

「どーせ君のことだ。俺のこと友達か親友ぐらいに思ってるんだろ?それだったら、ダチの名前ぐらいおぼえんだろ。」

この気持ちは・・・・・・。

「そっか。はぁ〜。なんってことをしたんだ。私は……。廊下で叫ぶなんて……。」

真っ赤になったその横顔に触れるにはまだまだ距離があるのだろうと思う。

でも、何かで迷うことは少なくなったんじゃないかと思う。

それもこれも、梨本のおかげだ。

なんだか急に恥ずかしくなって、俺は梨本から顔をそらした。



...Tokita-Mituru side End...

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