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第21話 -その女、トリリオネア-

 ちょっと短めの21話。でも次話は明日掲載!


 ※2021年10月24日トリオネア→トリリオネアに変更。

  元々どっちにしようか悩んで日本語の語呂を優先してたんですが、マジで目指す宣言をした大富豪がいるようだったので、そちらに合わせる形で。2030年に間に合うのかな……?

 オレの祖国が燃えてる状況を、『絶好の機会』などと酷ぇこと言いやがったその女、サクラは般若の笑みを浮かべ、オレを見下ろしていた。


「ふふふ……ねぇアナタ? 祝杯を挙げましょうか? ワインも今日ぐらいは付き合ってくれるでしょう?」

「そうだね、今回ばかりは、本当に肝が冷えたよ……」


 手に取ったグラスを、軽く合わせる2人。サクラはわざとらしく拗ねてみせる。


「あら、私を信じてくれなかったの?」

「その言い方はずるいよ桜……信じていたに決まっているだろう?」

「あー、お2人さん? いちゃついてないで、一体どんだけ勝ったんすか?」

「もう、せっかちな人は嫌われるわよ? いいじゃない、足掛け5年も、この瞬間を待っていたのよ?」

何?(What?) 5年? こうなるって5年も前から気付いてたって言うんすか!?」

「そりゃそうよ、このためだけに、資産を整理し、大部分を米ドル以外の通貨に換えておいたのよ。海外の口座にも分散させて、外国為替取引で運用益を出しつつ、今日この時にレバレッジの倍率ができる限り大きくなるよう配慮したわ。あとはタイミングを見計らって、全力で空売りを仕掛けたって訳」

「もし、失敗してたら天文学的な大損失が出るところだよ……どこまで影響が広がることかと……」

「計算してみましょうか? ええとね――」

「いや、知らない方が良いことだから、ホントお願い、計算しないで良いから。いやぁ、上手く行ってホント良かった、ホント良かったよッ!」


 慌てて計算を遮るコーヘイだった。


「で、どれぐらい勝ったんすか?」

「日本円に換算すると……そうねぇ、200兆円を超えるぐらいかしら。とりあえず、去年の日本の年間予算ぐらいは超えたいところだけど――」

「えっ? 桜、それだと多くないか?」

「やぁねぇ、世界中の市場は今、大混乱よ? 価格変動性(ボラティリティ)が高い状況でじっとしてる訳なんてないじゃない。こうやって会話してる間にも、システムトレードでガンガン利益を上げているわよ?」


 あまりの金額に固まったオレはようやく思考を再起動させる。


「200兆っすか!? 大体2兆ドル!?」

「いやだから、ドルは暴落したんだけど?」


 呆れるサクラの一言で、オレも今更ながら、やべぇ事実に気付いたっす。


「ああああああッ!? オ、オレの20億ドルが紙切れっすか!?」

「は? え、ケント君、貴方、資産どうなってるのよ?」

「ほとんど預金っす……利息で食えればいいやってほったらかしっす……」

「馬鹿なの……?」

「あー、まぁいいじゃないか、今の相場でも1千万円ぐらいにはなるだろ? 30歳ぐらいでそれだけ預金があるなら、普通に立派だと思うよ?」

「いやいやいやいや、コーヘイ、真顔で冗談止めてくださいっす!?」

「ああ、だよね、流石に無理があるか……」


 サクラが勝利の美酒を傾けるのを横目で見つつ、慰めるコーヘイと言葉を交わす。


「てか、サクラってこんな苛烈な性格だったっすか? もうちょっと大人しかったイメージあるんすけど……?」

「いや、あんまり――ああ、そうか、出逢った高1の頃はほら、君の方が金持ちだったろ? だから、多少なり抑えてたんだと思うよ? 遠慮が要らなくなっただけじゃないかな」

「んもう。いいじゃない、ちょっとぐらいやり込めたって……」

「「ちょっと……?」」ハモったっす。

「何よ、世界初の億万兆者(トリリオネア)よ? 久しぶりに逢った友人に自慢ぐらいしたっていいじゃない……」

「あー、そうか。ユーロ、英ポンド、豪ドル、カナダドル、香港ドル、スイスフラン、人民元……どの通貨でも1兆を超えるのか……確かに人類史上初だろうね……というか、それだけをキャッシュで持ってることが信じがたいんだけども。文字通りのお金持ちだね」


 頭の中で「お金持ち=Rich」と変換してたので、オレには文字通りの意味がよく分からなかった。


「えっと、どゆことっすか?」

「あー、昨今の資産家は、財産を株式で管理するんだよ。特に昨今は米国の株価は上昇していたし、世界の長者番付で上位に載るような人の資産内訳は、株式の評価額が多くを占めてるんだ。GAFAの創業者達なんかまさにそうだろ? 長期的な資産保全の方法は、通貨や貴金属、不動産や債権、暗号資産などよりも株式が一番というのは定説……だったんだよ、というべきかな? 今回のような事件を踏まえると、金やプラチナが一番安定しているような気もするけどね」


 要するに、オレみたいに利子で食えるなんて考える資産家はほぼ居ないという……やらかしたっすね。


 そんな気落ちするオレをからかうように、突然、モニターから少年のような明るい声が響く。


『おや? 皆さんお揃いですね? 冷たいなぁ、同窓会をやるんなら、呼んでくれてもいいじゃないですか!』

???『おやおや? 僕はまだ本気の3割も出していないよ?』

普通人「くっ……ダメだ、強すぎる……!」

億万兆「諦めちゃダメよ! 何が手が――」

不審者「そうっすよ! オレの禁断の必殺技を受けてみろ!うぉぉぉっ」

???『君の本気はこの程度か? なんてつまらない……』

不審者「む、無傷……っすか……!?」


???『――っていうのはどうだろう?』

不審者「あとがきにまで乱入するのは止めるっすよ!?」


 果たして敵か味方か? 物語の舞台裏を暴き出しにやってくる。彼の者の名は――。


 次回、『其れは傍にある幸福、あるいは唯のトリックスター』


 続きが気になる方、早く読みたい!って思ってくれた方いらっしゃいましたら、


 最新話のあとがき下のところから、評価を頂けると作者のテンションが上がります。是非よろしくm(_ _)m

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