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クローンの彼女  作者: 桂川蒼子
クローンは育つ
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3つの約束

子育てとは、僕が思っていたよりとても大変なものだった。 まあ、まだ子育ての真っ最中なのだが。



あれから三度目の冬。

僕は30歲、幸は3歲になった。



3年というのは意外と早いもので、

幸はいろいろなことができるようになった。



「ちぃくん!!さち、お腹空いた!!!おやつ!!」



「さっき、ご飯食べたばかりだろ。まだダメ。」


「ちぃくんのケチ!!!」




赤ちゃんの頃はめったに泣かない大人しい子だったのに、今ではすっかり駄々っ子だ。


幸はおやつをくれないことに、腹を立てて、積み木を積んでは思いっきり崩すのを繰り返してる。


ちょっと前、怒った幸が僕の本棚の本を乱暴に投げたことがあった。

その事を、キツく叱ってから幸はイライラすると積み木に当たるようになった。



おもちゃは積み木以外にもあるのだが、幸は積み木ばかりで遊ぶ。

お気に入りなのだろうか。



幸を横目で見ながら、僕はキッチンで夜ご飯のことを考えていた。買い物に行くのは面倒だから家にあるもので適当に済ませたい。


小さめの冷蔵庫を開ける。

中はカランっとしてて、調味料ぐらいしかなかった。


僕は諦めて、冷蔵庫を締める。


一旦自分の部屋に戻り、防寒具と財布、携帯を手にし出る。



「幸。お買い物行ってくるからお利口さんにしててね。」


「さちも行くぅ!!」



とてとて、と幸が小走りでこっちに来る。

今にも転びそうで危なっかしい。



「幸はお留守番。ちぃとの約束忘れた?お利口さんだから覚えてるよね?」



「さちは大きくなるまでお家から出ちゃダメ」



「ちゃんと覚えてる。幸はお利口さんだね。」



栗色の癖毛の頭をわしゃわしゃと撫でてやる。

幸は不満そうにほっぺをプクッと膨らます。



「ちぃはすぐ帰ってくるから待ってて。」



「……行ってらっしゃい。」



「いってきます。」




僕は幸に小さく手を振り家を出る。




幸が3歳になった日、僕と幸は三つ約束をした。





1つ、なにかする時は必ず僕に言うこと



2つ、体調が少しでも悪くなったらすぐ言うこと



3つ、大きくなるまで家の外に出ないこと



この3つ。

1つ目と2つ目はまあいいとして、

3つ目は幸には可哀想だと思う。



いや、そもそもここで生活させてるのもかわいそうだ。



僕と幸が、暮らしている家は窓がない。

テレビもない、ラジオもない。



テレビやラジオは、幸が外に出たいと思わないように僕が置かないことに決めた。 新聞も届かない。幸はきっと退屈だ。




だが、これもバレないようにするため。



幸が悲しそうな顔をするたび、胸が痛む。

けど、許して欲しい。



これは、僕と幸がずっと一緒にいるためだと。










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