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初めての年の近い友人(権力者)

 イケメン君に連れられる事、数分。すれ違う人がこちらを見てくるような気がする。今も中年男性が俺を見て、車椅子を押してるイケメン君を見て、驚愕した。そして俺を怪しい奴を見る目で見てくる。おかしいな、さっきの変な男なら、既に国の兵士に突き出したのに。

 何もしてないつもりだが、こうもすれ違う人の目線を受け続けては何か悪いことをした気分になってきた。少しずつ落ち込み始めてると、イケメン君から話題が振られる。


「貴方は旅人なんですか?」


 旅人……まだ住む場所も無いし、間違いでは無いかもしれない。金も無いとか、四肢が無い理由にも出来そうだし、そういう事にしておくか。


「そんなところだよ。俺はレイジ。こっちのメイドはフェルだ」


「そう言えばまだ名乗っていませんでしたね。私はミハエルです。妹はマリアと申します」


 ミハエルが名乗ると、周りを歩いてる人が勢いよく振り向いたり、水を吹き出したりと面白い反応がチラホラと見える。

 ちょっとした有名人であることは間違いなさそうだな。


「それじゃあ、ミハエル。敬語は止めないか? 俺たち、多分同い年くらいだろ?」


「……そうだな。じゃあ、レイジって呼ばしてもらうよ。よろしく、レイジ」


 ミハエルは俺の提案を受け入れた。やっぱり、敬語はくすっぐたいからな。年も近そうだし、異世界でも友達は欲しいし。

 俺達の自己紹介が終わったのに合わせたかのように、フェルとマリアちゃんの方からお腹が鳴った音が聞こえた。マリアちゃんかと振り向くと、


「……申し訳ありません、レイジ様。お腹が空きました」


 マリアちゃんはきょとんとフェルを見上げていた。代わりにフェルが冷静を取り繕っていた。耳まで赤面しているが。


「それなら、目的地に食事屋が有るから大丈夫。丁度見えてきたし」


 金も無いし、食料の当てもないから、ミハエルの提案はありがたい。初めて見る異世界の家に期待しながら、ミハエルの指した方向へ目を向ける。

 そこには、門をくぐる前から見えていた城が堂々とそびえ立っている。ま、まさか……!?


「あの城は……?」


「ハインリヒ城です。現当主はユリウス・ハインリヒ様。すぐ近くには王立ハインリヒ魔法学園も有ります。王立ハインリヒ魔法学園は、この王都ハインリヒのシンボルとなっており、食堂や教会が一般開放されています」


 なんだ、ミハエルが指したのはハインリヒ城じゃなくて、その近くの学校か……もしかしてミハエルが王族なのかと思って焦った。初めて知り合った友人が王族とか、二回目の人生ハードモードすぎる。

 冷や汗が額に滲むと、フェルがハンカチで拭ってくれる。汗くらい……自分で拭ければ良いのに。



 王立ハインリヒ学園の食堂に着き、俺達は食堂の四人席のテーブルに座った。俺はフェルに座らせてもらい、フェルがその隣に座る。ミハエルが俺の前に座り、隣では既にマリアが目を輝かせて周りをキョロキョロと見渡していた。

 やはり、ミハエルに視線が集まっている。どうも、マントの下まで多くの人間に見透かされているようで気分が悪い。


「改めて、礼を言わせてもらうよ。レイジ、助けてくれてありがとう」


「いやいや、実際になんとかしたのはフェルだ。俺は何も出来ないからな」


「私はレイジ様の命令に従っただけです」


 フェルの言葉は俺の胸に少し刺さった。俺は命令しただけなんだ。偉そうに、自分の自己満足の為にフェルに従わせた。手足が無いとか言い訳をして……フェルが言葉にして俺は初めて、自分の無力さを確認してしまった。

 困ったようにミハエルが頬を掻く。人前だった。落ち込むのは一人の時にしよう。


「あの、レイジさん、フェルさん、ありがとうございます。ミハエルお兄様も迷惑かけてごめんなさい」


 今まで黙っていたマリアちゃんからお礼の言葉が出てきた。マリアちゃんは涙目で震えていた。よっぽどあいつが怖かったんだろう。俺はマリアちゃんの目を見て微笑む。


「フェルはまた同じこと言うだろうし、俺が言うよ。どういたしまして」


 俺の言葉にマリアちゃんは涙を拭いながら、微笑んだ。タイミングよく、料理が届いたので食べ……始め……ここでもフェルの力を借りなきゃいけないのか? フェルの方をチラリと見れば、優雅に食事を食べ始めている。ここで声をかければ、食事を食べさせてもらえるだろうが、また従わせるのか?


「レイジ、どうした? 食べないのか?」


 食事をしない俺にミハエルは不思議そうな顔で俺を見る。その言葉にフェルが焦りながら自分の食器を置いた。


「レイジ様、申し訳ありません!」


 土下座しそうな勢いで謝るフェルに、気にするなと首を振った。ミハエルはついていけずに首を傾げる。また悪い空気が流れそうな時だった。

 俺の前に、俺の頼んだパスタが巻かれたフォークが差し出された。


「レイジさん、事情は分かりませんが……多分、レイジさんが自分で食べれそうにないんですよね? でしたら、私が食べさせてあげます」


 周りの視線が強くなった気がする。マリアちゃんの表情は笑顔だが、フォークを持つ手が震えている。緊張している。ここは食べてさせてもらわないと…マリアちゃんが可哀想だと、口を開いた時だった。


「光の魔力よ。弾丸となって撃ち抜け! ライトショット!」


 どこからか、声が聞こえて何かが迫る音が聞こえた。フェルが俺の右側に飛び出し、右手に白いオーラ状の魔力を纏う。身体強化された右手でフェルは俺に迫る弾丸を叩き落した。

 突然の魔法に、食堂が騒ぎ出す。俺の前でミハエルが小さく仕方ないと呟いた。


「皆の者! 慌てるな!」


 立ち上がりミハエルが大きく声を張り上げた。妙な反響がかかっているのは音声拡大の魔法でも使ったのだろうか。ミハエルの声に食堂の騒ぎは一瞬で治まる。


「私の名はミハエル・ハインリヒ! 王都ハインリヒの王ユリウス・ハインリヒの息子、王都ハインリヒの第一王子だ!」


 ハインリヒ…!? この国の名前じゃないか!? それが苗字ってことは……はミハエルは本当に王族だった!?

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