この世界について学ぶ
幻想世界シェーン。俺を殺した神(そういえば名前を聞いていない)が管理する世界の一つらしい。生活水準は中世らしいが、一部の国では魔力を電気代わりとした魔道具がある為に一部は中世というよりは現代に近い国もあるとのこと。地球に居る思いつくような動物は存在してるし、架空の生物も存在している。
俺が神から聞いたシェーンはこの位だった。そのまま伝えるとフェルはなるほど、と頷く。
「では、基礎的な知識を説明させていただきます。まずこの世界の言語ですね。言語は全世界共通で貴方様の居た地球で言うところの日本語となっております」
言語は日本語か。俺の読んでた転生・転移系では勝手に言語翻訳とかが特典に入っていたり、明記されていなかったりした。だけど俺にはその辺りに干渉してもらう事すら出来なかったので、日本語なのはありがたい。言語の勉強のやり直し、ましてや面倒な発音は勘弁だ。
しかし……
「なぁ、フェル。貴方様なんて呼び方は止めてくれないか?」
「それなら……なんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
なんて読んでもらうか……か。俺的には零司と呼んで欲しいが、メイドの属性が付いたフェルは許さないだろう。というか、異世界で零司なんて日本ネームはありなのだろうか?
「普通に零司って呼んでほしいけど、この世界で零司はありなのか?」
「少し変わった名前の扱いにはなりますが、問題は無いかと思われます。それではレイジ様とお呼びさせていただきますね。因みに言語は日本語ですが、文字はシェーン文字という独特のルーン文字ですので、街に着いた時に私が説明させていただきます」
呼び方はやっぱり呼び捨てにはならなかったか……それに言語のお勉強は避けられても、文字のお勉強からは逃げられなかったよ……
荒地を越え、景色に少しばかり緑が見え始める。自分で動かないのは楽だけど……そろそろ、自分で動かせない体が腹立たしい。
「フェル、俺の体を治してくれないか? 自分の体で動きたい」
フェルの方へと振り返りながら、治癒を命じる。しかし、フェルの顔は曇ってしまった。
「申し訳ございませんが、それは出来ないのです」
「出来ない?」
「はい……それではこの世界の魔法も一緒にご説明させていただきます。この世界の魔法は体内の魔力を練り上げ、放つ、スタンダードな方式となっています。属性は火、水、土、風、光、闇の六属性に無属性などが存在します。属性は基本的には1人につき得意属性が1~2つ。稀に全属性を得意属性とする方は勇者などと呼ばれるようです」
無属性というものがあるのは、先ほど創造系魔法を見ているので理解できる。なら回復系の魔法は無属性で存在しそうだが……
「そして回復の魔法、即ち治癒系魔法は存在いたします。しかしながら、この世界の治癒系魔法はそこまで万能では無く……取れた部位をくっつける事は可能ですが、無くされてしまった場合は再生する事は不可能なのです」
「…………さっき使ってた創造で創り出すことも無理か?」
「創造は体の一部や生命を創り出す事は出来ません……申し訳ありません」
俺の体はこのままなのか……フェルが居るとはいえ、俺だって人並みで良いから戦ってみたいという思いがあった。魔法はあるけど、武器をこの手で握ってみたかった……手なんて無いけどな……
「…………レイジ様、着きました。王都『ハインリヒ』です」
フェルの声によって、顔を上げる。落ち込んだ俺の視界に映ったのは、巨大な門と鎧の兵士、遠目から見える美しき城……憧れていた異世界の街の入り口だった