天の岩戸を攻略せよ 探索
呑気に欠伸をしながら歩いている大型の鬼のモンスター。全長は2.5メートルくらいはあるだろうか? カグヤに視線を向けると、彼女は静かに頷き、闇に紛れた。
凄いな……姿はギリギリ確認できるけど、気配を全然感じない。気配を殺すっていうのはこういう事か。
「…………じゃあね」
鬼のモンスターの背後に忍び寄り、カグヤの刀が一閃……鬼は声も無く崩れ落ちた。地面に倒れ、首がコロリと落ちる。
カグヤの刀の技量は高い。左肩を斬られたのに痛みを感じなかった。右腕で斬られた辺りを触る。痛みも無い、出血も少ない。普通なら有り得ないけれど、今回の天の岩戸の攻略には影響が少ない怪我なのが有りがたい。
「うん……近くに気配は無い、一旦休憩するべき」
「わかったよ」
天の岩戸の探索から既に2時間が経過している。俺の義足による足の負担も大きい。こまめに休憩を入れなければならない。何故なら、この天の岩戸が入る度に道が変わる+普段居ないような強い魔物が発生している+5階層まであるからだ。
壁際に座り、一時的に義足を取り外す。荷物から水筒を取り出し、一口だけ飲んだ。
「用意周到……」
「レオってメイドが持って行けってうるさくて……チョコ食う?」
「いただく」
…………なんだこのピクニックみたいな状況。実際にカグヤが強すぎて俺は歩くだけになってるけどさ。むしろ最初の丸太トラップ以外も落とし穴に落ちたり、大きな岩が転がってきたり、女郎グモというアラクネ型モンスターのハニートラップに引っかかったり……完全なお荷物になってるけど…………
「…………むぅ」
カグヤにジッと見られている。ハニートラップに引っかかったからか? それともチョコが口に合わなかった? それとも、罠に無警戒過ぎて怒らせちゃったか?
「レイジは弱いのに、何故ここに来た?」
「弱っ……!?」
「はっきり言えば、レイジは私より弱い。私が見張ってた奴は私より強い。でもショウは、レイジじゃなきゃダメと言う。何故?」
それは……そうだよな。さっき戦って分かったけど、太陽の腕を使ってもカグヤには勝てなかった。防御も普通の人よりマシってだけだし、経験の差もあってショウにすら勝てなかった。
「フェル……ここに居る奴の名前なんだけどな? フェルは俺の為に俺から離れてここに閉じこもってな」
「何かやったの?」
「この手足を斬り落とした」
「え?」
フェルの気持ちも分からなくもないしな。確かに、手足を奪わなければ俺は離れてしまったかもしれない。フェルに惚れたから離れるなんて事は無いんだけどな。ぶっちゃけ、男女の仲になってるし……俺の嫁って感じだし。
「じゃあ……復讐?」
「違うよ、説得に来たんだ。傍に戻ってきてくれってね」
カグヤは少し驚いた表情を浮かべていたが、小さく微笑んだ。
これは俺の本心からの言葉だ。手足を斬り落としたのがフェルでも、助けてくれたのもフェルだ。アイツのおかげで俺は人に頼む事を知った。だから今度は俺がアイツに教えてやるんだ。俺がフェルに傍に居て欲しいって。
「それなら……弱いレイジじゃなきゃ……駄目だね」
「そ、そんな弱くねーし!」




