悲しい現実
屋敷の自分の部屋に戻ってきて、ベッドの上で天井を眺めていた……だが、眠れる気は全くしない。まだ寝る時間でも無いし、疲労が逆に眠気を遠ざけている。それに……眠ったとしても、フェルが魔王に乗っ取られた瞬間とネルガの背中を夢に見て目が覚めるだけだ。
「レイジ様、飯作ってきたけどよ……」
「……食う」
「だよなぁ。やっぱ、食わね……食うの!?」
レオが持ってきたパンを受け取り、かぶりつく。味がしないし、吐き気も襲ってくる。それでも目に涙を滲ませながらでも、必死に噛んで呑み込もうとする。
お腹は空いているけど、食べる気分じゃない。だから体も食べたいと思っていない……そんな事は分かり切っている。でも、少しでも早く動けるようになりたい。その為には食事を神力に変えて、少しでも早く癒しの風を発動できるようにするしかない。
「レオ、もっと持って来てくれ……神力が足りない」
「あ、ああ……直ぐに用意させる」
そう言ってレオは俺の部屋を飛び出していく。小さなパンから回復できた神力は本当に僅かな量だった。呑み込むのだって辛い……それでも従者達が運んでくるご飯を呑み込んでいく。肉を千切り、野菜を噛み砕き、スープを呑み込む。胃に収めた物を片っ端から神力に変換していく。
「よく食べるなぁ……いや、何も食べない時に比べりゃマシだけどよ……」
「……ッ。食べた方が食べただけ回復も早くなるから。さて、そろそろかな?」
回復してきた神力を右脚に集中させると、吹き荒れる右脚のように癒しの風が集まってくる。それを体に纏わせる事で、体の痛みが薄れ何とか動けるようになってきた。食事の手を止め、ベッドから下りて、フラフラと部屋から出ようとする。
「おいおい、どこに行くんだよ? まだ完全に治りきってねえだろ?」
「守護神獣の所に行くんだ。フェルを取り戻す方法を知ってるかもしれないから」
「そう言うと思って、我らから出向いたぞ」
開けようとした扉が開き、人間の姿を取った守護神獣が4人入ってきた。ここで話してくれるというなら、無理に立っている必要は無い。レオに支えてもらいながら、ベッドに座り込む。
黙って魔王城に行き、勝手に魔王に挑んで……勝手に負けた。しかも先代勇者と、勇者よりも強いフェルを同時に失っている。その事について怒られるんだろうか。いや、怒られて当然か。
「アドヴェントがフェルの体を乗っ取ってしまったようだな……」
「ああ、だから引き剥がす方法を……」
「そんな物は無い。もう殺すしかなかろう」
…………え?




