最終決戦、開始
ここで決心を鈍らせては駄目だ。魔王を、アドヴェントさんを倒すと決めた……俺はシェーンの為に魔王を倒さなければならないし、アドヴェントさんはヘルの為に俺を倒さなければならない。戦う理由は十分にある……躊躇う必要は無い。
太陽の剣と雷光の盾に勇者の光を纏わせて強化。勇者の翼を展開し、勇者の光鎧と電気式肉体酷使、神力と魂のエネルギーで身体強化を重ねる。シルフとの戦いの疲れが取れてない今、短期決戦を目指すべきだ。
「オオオオッ、ラァァッ!」
「キャアッ!?」
自分の脚を竜人の脚に変化させ、地面の蹴りに合わせて爆発を引き起こす。一気に最高速でアドヴェントさんの前に辿り着き、勇者の光剣で斬りかかる。俺の動きに驚き、咄嗟に身を屈めるアドヴェントさん。
マズい!? このまま振り下ろしてしまえば、殺してしまう! そこまでする気は無い。今からアドヴェントさんの方に勇者の光壁の発動は間に合うか!?
「ぐっ!?」
鈍い金属音と手に伝わってくる痺れ、俺の勇者の光剣が鎌の刃のような翼に防がれている。押し返される力を感じ、こちらも押し込んでみるが拮抗させる事で精一杯だ。
魔王の翼か……! 勇者の翼に似ていると思ったが、自動で攻撃を防ぐのまで一緒だとは。いや、元々勇者と魔王は立場が正反対なだけで、似ている存在なんだ。だったら魔王の翼は勇者の翼に似ているという考えで良い筈……と言う事は!
「魔王の翼よ、行ってください」
「くっ!? 勇者の翼、防げ!」
魔王の翼が震えだし、こちらを突き刺そうと伸びてくる。こちらも勇者の翼を反応させる事で、何とか攻撃を受け止める。その勢いで無理矢理後ろに下がらせられるが……直接攻撃を食らうよりは全然マシだな。
魂と体が噛み合って無いように感じるのに、魔王の翼だけで充分に強い。もし完全に噛み合ったとしたら……自分と戦うようなものか。何とか完全に噛み合う前に倒したい。
「それでは、私も頑張って動くとしましょう」
アドヴェントさんから玉座から立ち上がるだけで、威圧感のような圧力が増していく。頬を流れる冷や汗を拭い、剣と盾を構えなおす。
夢の世界と違って、威圧感が凄まじい……体が重くなってきているようだ。さて、アドヴェントさんはどうやって戦ってくるんだ? 魔王の翼も凄まじい力だし……まあ、魔王なんだから一筋縄で行くわけが無いよな!




