全力全開勝負
竜の顔が描かれた扉を開き、赤い転移門へと一気に飛び込む。サラマンドラが得意な火山のフィールドだと思っていたのだが、視界に広がるのは和風な庭園だった。敷き詰められた小石、飾られた岩と松の木。そして、中央で仁王立ちをしている赤き竜人、サラマンドラの姿があった。
なるほど……サラマンドラらしい、正々堂々としたフィールドだ。こうやってサラマンドラと本気で戦うのは……ヴォルトの時以来かもしれないな。
「言葉は要らぬ……最初から、全力で来い! レイジよ!」
「悪いがここで止まるわけには行かない! 全力で行かせてもらうぞ!」
無限変化水流の左腕に水を纏わせ、水の一部を変化させる事で鉄の棒を作り出す。こちらに向かってくるサラマンドラを待ち受け、振り下ろされる刀を鉄棒で打ち返した。
この鉄の棒は始まりだ……無限に変化していく連撃を受けてもらおうか。
「まずは棍!」
根をしっかりと握り、振り下ろす。サラマンドラが体勢を崩した隙に素早く構え直し、今度は鳩尾を突いた。薙ぎ払う、振り下ろす、突く、押す……色々な武器での攻撃の形を出来るのが棍だ。
他の武器と違ってどこでも攻撃できるし、どんな使い方でも出来る例えばこんな風にな!
「フッ!」
地面に棒を叩き付け、高跳びの要領でサラマンドラの背後へと回る。ここで鉄棒の先を変化させ、巨大な槌へと変化させた。勇者の翼を腕に変化させ、バッティングフォームのように構える。
次は槌だ。使えるタイミングは少ないが、それでもこうやって強烈な一撃を叩き込めるのはこの武器だけと言っても過言ではない。
「喰らえっ!」
「そう喰らい続けるわけには行かん!」
槌の一撃に合わせて、サラマンドラが飛び上がる。そのまま面を両足で蹴飛ばされ、サラマンドラは大きく跳んでいく。両足で蹴られた衝撃で、腕が痺れて槌を手放してしまった。
くそっ……このままじゃ武器を握るどころか、まともな殴り合いもちょっとキツイ状況だな。
「だったら腕を使わなければ良いんだろ!」
落とした槌を強く踏みつける事で、水の球体に戻りながら顔の高さまで浮かび上がる。今度は鋼水のボールに変化し、吹き荒れる右脚で風を纏わせながら蹴り飛ばす。
「フッ……何と面白い戦い方だ。ならば、拙者の成長もお見せしよう」
サラマンドラが刀に美しく紅い炎を纏わせた。そのまま鋼水の球体へ真っ直ぐ振り下ろす。すると、鋼水のボールが真っ二つにされ、水蒸気となって爆発した。
鋼水は金属の見た目だが、性質は水のままだ。それを炎を纏わせた刀で斬り裂き、爆発させた。これは俺が使った炎属性で水属性を破った方法……? オルクスの誰かに披露した覚えは無いのに、何故……!?




