水に流されて
拳を構えつつ、勇者の光鎧を身に纏う。水の中での動きにくさが緩和され、地上での動きに近付いていく。これなら風の力で多少は水の中を動き回れる筈。
もう呼吸の制限は何も無い……ただ、加速が難しい点はまだ解決出来ていない。どうにか出来ないだろうか……鋼水じゃ変化させる前にウンディーネに気付かれる。
「動けないなら動けないなりにやりようがある……!」
「ボソボソ言われても聞こえないし!」
再びウンディーネが加速し、俺の周りを高速で旋回し始めた。動きが水の流れを生み、俺の動きを再び鈍くさせる。だが、この程度で焦りはしない……今は何も考えるな。直感に委ねて、この1撃に神経を集中させる。
激しい渦潮の中でも落ち着いていられるし、良い感じに体勢を維持できている。これも勇者の光鎧のおかげだろうか? この身体強化は便利だな……他にも何か隠されている能力はないだろうか。
「ッ!」
「そこだっ!」
俺の太腿を狙って、ウンディーネの鋭い突きが迫ってくる。直感の反応に体を動かし、ウンディーネの槍を掴んでこちらへと引き寄せた。槍を持っているウンディーネは体勢を崩し、槍を手放す間もなく俺の目の前へと引っ張られた。
踏み込む事は出来ない……なら、遠心力を利用して攻撃をするしかない。頼む、当たってくれ!
「駄目だし!」
「うっ!?」
遠心力を生みだす為に足を振り上げた瞬間、ウンディーネが俺の事を突き飛ばす。そんな反撃をされると思っていなかった俺は見事に体勢を崩され、水の中で大きく後退させられた。
戦闘が苦手とは言え、ウンディーネもオルクス四天王の1人。ああいう状況でも反撃してくるか……だが、海流の鎧と勇者の光鎧のおかげでダメージは全く無い。
「勇者の……光弾!」
勇者の翼を大きく開き、6つの白色の光弾をウンディーネに向けて放った。水中でも高速で動く光属性の弾丸がウンディーネへと襲い掛かるが……
「無駄!」
ウンディーネの口から波紋のような物が広がり、俺の頭に何かが入り込んでくる。その瞬間、勇者の光弾がウンディーネに掠りもせず、大きくUターンをして加速しながらこちらに迫ってきた。あまりの速度に盾を用意する暇も無く、自分の魔法が自分に直撃する羽目になった。
「くっ……俺の魔法でも、効くな……!」
そう、ウンディーネには魂を直接揺さぶって、俺の攻撃をあらぬ方向に捻じ曲げる事が出来る。それは分かっていたが……まさか俺の魔法の支配権を奪ってくるなんて。少し考えれば分かる事だった……やっぱり、近接戦闘に持ち込むしかない。




