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終わったら、何したい?

 フェルと同時に転移門を潜り抜ける。転移門の先では大地は荒れ果て、草木と呼べるような物は無い。空は全て暗く分厚い雲に覆われている。

 ここが……魔王城の近くか? 確かオルクスって国なんだったっけ? 嫌な空気だな……フォレストハイドを発動させたいのに、上手く行かない。自然の気配を感じる事が出来ない……オルクスの自然で発動させる事は出来ないのか。


「レイジ様、魔王城の方角は……」


「こっち……だろ?」


 俺が正面を指すと、フェルは小さく頷いた。周囲に建物のような物が見えるわけじゃない。この方向に魂が引かれるような感覚がある。

 勇者の魂と魔王の魂は引かれ合う……そういう事なんだろう。俺にこうやって魂が引かれている感覚があるのなら、アドヴェントさんも同じように俺の事に気付いているだろう。


「何もしなくても近くに来ている事が分かるのは、羨ましいですね」


「フェルは俺の場所とかいつも分かっているだろ?」


「そうなんです。そうなんですが……いえ、少し違うかもしれません。レイジ様も分かっている事が羨ましいのです」


 そう言う事か。フェルは無力な俺を守る為に、俺の位置は常に分かるし俺の望んでいる事を読み取って口にしなくても察してくれたり実行してくれたりする。でも、俺にはそんな高度な事は出来ない。人の心読み取れるような魔法は使えないし、どんな場所に相手が居ても分かる程、神力や魂のエネルギーを広げる事も出来ない。


「魔王と戦った後に、出来るように練習するよ」


「ありがとうございます」


 魔王と戦った後……か。勇者の役目を果たしたら、俺はシェーンで何をしよう? 勿論領主としてやらなければならない仕事はあるし、夫としてフェルを愛し、親としてユウキを守らなければならない。だがこれはやらなければならない事で、やりたい事では無い。異世界での生活は今まで余裕が無かったからな……


「なあ、フェル…………暇になったら、俺と何かしたい事は無いか?」


「レイジ様としたい事……ですか?」


 俺のしたいことなんてのは、きっと直ぐに見つかると思う。だから、フェルとしたい事を考えよう。簡単には思いつかないかもしれないけど……


「あります。1つだけ……レイジ様と2人きりではありませんが、1つだけ」


「何だ?」


「レイジ様やユウキ、レオやネルガ……皆でお弁当を食べたいです。景色の綺麗な場所で私の大切な人達と……」


 大切な人達……そうか、俺にとって大切な人はフェルにとっても大切な人になっているんだな。皆とお弁当か、それは是非ともやりたい。未来に向けての事を思うだけで、少し勇気が湧いてくる。

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