魔王の正体
ネルガの突然の告白に、言葉が出なかった。ネルガが結婚してたのか? とか、何で魔王の体がネルガの奥さんなんだ? とか、疑問が次々と浮かんでくるが……それが口に出る事は無い。俺はネルガの言葉の続きを待つ事しか出来なかった。
「どうして……ネルガの奥さんが?」
「リフィは妻であり、共に戦う仲間でした。私が魔王と戦う時も、私の背を守ってくれていたのです」
あの優しそうな女性が、ネルガが背中を守っていた人か。何となく絵を想像してみると確かにしっくりくる気がする。肉体武器に敵を殲滅するネルガと後ろで守られていながらネルガをサポートしていたであろうリフィさん。
「私が魔王を討ち果たした時、魔王は魔法を撃ってきました。神核によって魔法攻撃を受け付けない私は、その能力を過信し盾となろうとしたのです。ですが、それが過ちでした」
「一体、何が……?」
「あの時は理解を出来ませんでしたが、今考えれば魂のエネルギーという物だったのでしょう。魔王の魂は私の体をすり抜け、リフィの体を奪い取ってしまったのです」
魂のエネルギー……勇者の翼を発動する為の第四のエネルギー。でも、ネルガは勇者でありながらそのエネルギーを扱う事は出来ない。
「でも、ネルガの実力ならリフィさんの体を傷つけずに魔王の魂を追い出すとか出来たんじゃないか……?」
「……リフィも神核持ちだったのです。都合が良い事に物理攻撃を無効化するという特性で、私との相性は……最高というべきでしょうかな」
味方としては最高……だろうな。でも、アドヴェントさんが乗っ取ってしまったのなら、最高の相性は反転して牙を剥く。
「お互いの事を、お互いが傷付けられない……ですが、リフィの意識が魔王を封じ込めてくれていたのです。ですが、その封印はもう……」
「それは違うと思う」
「レイジ様……?」
夢の世界でアドヴェントさんが弱いと感じたのは気のせいじゃ無い。疑問に思っていたが、ネルガの言葉で意味が分かった。
「リフィさんはまだ抗っているんだ。アドヴェントはまだ目覚めきれてはいなかった……リフィさんが頑張っているのに、ネルガが諦めるのはおかしいと思う」
「そう……ですな。リフィが頑張っているのに、私が諦めてはいけなかった」
何とかネルガを元気づけられた……かな? でも問題も出てきた……アドヴェントさんが下手したら体を乗っ取ってくるという事だ。魂のエネルギーがあれば対抗できるだろうか? ちょっと、俺の元気が無くなってきたかも……




