希望
朝、隣で寝ているカガミを起こさないように太陽の腕を引き寄せる。あまり着けるなとは言われてるけど、もう独りで歩けないと思うと我慢が出来なかった。
「闘気の腕」
右腕に闘気を纏い、伸縮自在な疑似右腕を造り出す。その疑似右腕を伸ばし、義手と義足を掴み、自分の体に装着する。
これを作ってくれたフェルは……今、何をしているのだろうか。この弱体耐性を解除すれば彼女は俺に話しかけてくれるだろうか。今すぐに……声を聞きたい。
(妙なことを考えている顔だな)
聞こえてきた声に顔を上げれば、そこには天照がお座りの姿勢で襖を開けて座っていた。
やべっ…勝手に義手と義足を着けてるのバレた。弱体耐性で読心はされてない……はず。
(闘気の揺らめき……我が敷地内で感じ取ったからな。我も自分で動けないストレスは良く知っている。散歩にでも行くか)
天照に連れられ、社の裏へと歩いていく。そこには背の低い草原が広がっていた。天照はゆったりと歩いていくのを、俺はゆっくりと追いかける。
義足が踏んだ土が柔らかい。気分が落ち着く草原だ。
(素晴らしかろう? 我が自慢の草原よ)
何もない草原に見える。けれど、何もないからこそ、朝焼けが美しくて。何もないからこそ、空気が澄んでいる。
「綺麗だな……」
(そうであろう! そうであろう!)
天照は嬉しそうに尻尾をブンブンと振っている。やっぱり犬みたいだ。
でも自慢したくなる気持ちも分からなくはないかな。
(して、貴様はフェルと戦えるか?)
「それは………」
(気持ちは分からなくは無いがな……ここに居ればヤパンの中では貴様に手足はある。カガミも貴様を好んでいるようだし、幸せではあるだろう)
「…………それは」
(貴様はフェルを取り戻すことを決意した。しかし、一人で出来る力を失う事を恐れている。故に後押しをしよう。魔力・闘気・神力を使わぬ義手と義足はあると)
「本当か!?」
(然り。希望を持って前へ進め。貴様の道を加護無くとも我が照らそう)
お散歩したかったんです←




