ショウの魔法講習会
天照の社の和室で、俺は義手と義足を身に着けて胡坐をかいている。隣にはカガミが座っており、正面には黒板の前に眼鏡をかけたショウが火のついていない煙草をくわえている。さっきはついていたんだけど、天照が頭ごと噛みついて消していた。ちょっとトラウマを思い出す齧られ具合だった……
「まぁ、魔法ってのは知識だ。時々感覚派もいるけど、そいつらは例外。魔力を集め、必要な詠唱と鮮明なイメージ、それが魔法だ」
先ほどの組手で、身体強化が緩かったという理由でこの魔法講習会が開かれている。カガミは隣でウトウトしてい……いや、もう寝てる。まぁ、学校で習った事だもんね。
というか……身体強化が緩いって、あの時は弱体耐性も発動してたし難しいんだよ……2つを維持するの。
「魔力を集めるってのは簡単だ。魔力を……レイジの場合は闘気を感じて魔法を使うための部分に集める。この時、魔力を多く集めりゃ良いってもんじゃねぇ。それは身に染みてるだろ?」
確かに……夢の世界では何回も腕が爆散した。あの時は集めた魔力を放つのでは無くて体に留める魔法だったからかな。
……よくよく考えれば現実でも爆散してもおかしくなかったんじゃ……
「俺の千里眼によれば失敗の未来は1つも無い。感覚を掴んでるだろ?」
爆発は無くなったけど……魔力集めすぎて体が熱くなるし、完璧とは言えないけれど弱体耐性は使える筈というか……現在進行形でフェルにバレないように使ってるんだけどね。
「次は詠唱だな。これははっきり言って必要無い。理由としては俺達のような異世界から来た人間は、この世界の人間よりもイメージが鮮明だからだ」
「イメージが……鮮明」
「まぁ、正しくはシェーンの人間の方が複雑に考えすぎるってのが正しいんだけどな」
イメージが複雑って……炎なら炎を浮かべれば良いし、水なら水を思い浮かべれば良いだけだろ? 複雑な事なんて何も無いはずだ。
「俺達は炎の魔法と言われると、手から炎が出るってイメージする。そのイメージに魔力が勝手に反応して魔法を発動させるわけだ。しかし、シェーンの人間は余計な一手間を加えちまうんだ。それは魔力を変換するイメージ」
「なんか……よく分かんないな……」
「詠唱ってのは言葉にする事で、イメージを強化する手段だ。だから、俺達は結果しか考えないから単純で鮮明なイメージを出来るから詠唱が要らない。シェーンの人間は過程を考えて複雑でぼんやりしたイメージだから詠唱が要るって事」
なるほど……詠唱が必要なのはイメージを鮮明にする為……か? いやでも、待てよ?
「ショウはさっき、詠唱してなかったか? 要らないんじゃ無いのかよ?」
「それは俺が闘気で魔法を使ったからだ。闘気で属性を付ける場合は詠唱が要る。レイジにも教えれば使えるんだろうけど、今回は教えない。魔法を使おうとして、弱体耐性が疎かになって負ける未来が視えたからな」
今は……弱体魔法に身体強化、それに詠唱の要らない無属性の闘気魔法だけで頭がいっぱいいっぱいだ。フェル相手には無属性の闘気魔法だって考えてる暇は無いだろうな。
こんな事教わっても……闘気を使えるのも、手足を持って戦うのも今回限りなんだよな……
「そんな暗い顔すんなって…お前とメイドの戦いの詳しい未来は神の力が関わってるせいで視えない。でも、視える。いつか分からんが、お前がお前の意思で、メイドの隣で戦う姿ってのがな。安定はしてないけど、お前がその未来を切り開け……なんてな」
視えるって書き方、凄い好きです←




