憎悪の一撃は……?
無限回転突きは、突きという名前の通りに拳の為だけの技ではない。手で持って、突く事が出来る武器ならば使う事は可能だ。その中でも剣で放つのが一番えげつなくなる……貫通した後に、傷口を抉るんだからな。
この回転する腕が持つ剣を、この魔物に刺す事に躊躇いは無い。突き刺し、抉り、回転を止めて斬り裂く……友の命を奪った償いは、苦しみで払ってもらう。
「くっ……させるか!」
「そうはいかないな」
金髪の光速の突進を、同じく光速へと到達した直感の分身が止めてくれる。魔物へと1歩踏み出すと……周囲の空気の感触が変わった。俺の動きを封じるように空気が固められた感覚……だが、無限変化水流の憎悪の変化で空気を元に戻す。
太陽の憎悪、雷光の憎悪、吹き荒れる憎悪……ちゃんとした筈の神具なのに……何かが決定的に違う。
「おいおい……このままじゃお前は死んでしまうな?」
「くっ……!」
騒がしい俺が女を追い詰めている……止めなきゃいけない気がするが、頭に靄がかかって意思が薄れていく。目の前の魔物への殺意しか、脳の中に残ってくれない。
もう1歩……踏み出した瞬間に太陽の憎悪で刀身に黒い炎を宿す。吹き荒れる憎悪による黒い風で炎を燃え上がらせる。黒い風には雷光の憎悪で黒い雷を纏わせ、無限変化水流の憎悪で雷を強化するつもりだったが……四属性は完成せずに、逆に全てのエネルギーが消え去った。
「…………まあいいか。属性なんて付けなくても、この技だったら充分に殺せる」
回転し続ける剣の切っ先を、魔物へと向ける。もうどんな風に動かれたって、当てる事が出来る。胸へ突き刺し、肉を抉り、回転を止めてその体を両断する、
だが…………殺意しか浮かばず、殺意しか残らない頭の中で何かが引っかかるような気がする。忘れてはいけないような何かが、俺を引き止めようと必死にしがみついている気がする。
「その技……放てば後悔するよ?」
「…………お前が死ぬ事に、後悔は無い」
踏み込み、地面を蹴り、勢いよく切っ先を魔物へと突き出す。その瞬間、無限回転突きと逆回転の風の渦が発生し、回転を止められた。ただの突きは魔物に弾かれてしまう……な、何が起こった?
「その技だけは……ちゃんと防ぐ手立てを用意していたさ」
「…………っ!」




