シルフを動かせ
シルフが目の前で構えている……この前も戦った時もハインリヒの森だったな。あの時の俺は本当に不甲斐なかった……だが、今は違う。シルフと拳を構える覚悟は出来ている。
でも……その時は今じゃない。心は熱くなっていても、頭は冷静に行こう。どうすれば自然にシルフを遊撃隊の元に誘い出せる……?
「勇者の翼よ!」
シルフの魔力を捕捉し、勇者の翼から4つのレーザーを放つ。大きく膨らみ左右から2本ずつのレーザーがシルフへと襲い掛かる……がシルフが指を鳴らすと風が吹き荒れ、レーザーは大きく軌道を変えた。
やっぱり魔法じゃシルフの方に分があるか……だが、近接戦だったらどうかな?
「させるか!」
シルフが放ってくる風の矢はそよ風のマフラーで風を起こして、同じように逸らしてやる。だがフォレストハイドで矢が後ろから戻ってくるのが分かった。やっぱり受けとめなきゃか……背中に刺さろうとする矢は勇者の翼をカッターの刃のようにして斬り捨てる。
「フンッ!」
「うわぁっ!?」
爆発によるノーモーションの加速でシルフの背後に現れる。俺の事を見失ったシルフの背中に全力で太陽の剣を叩き込み、爆発により魔王軍の本陣のような場所から吹っ飛ばす。
こうやって吹っ飛ばして遊撃隊の元まで運べたら楽なんだけど……そうはいかないだろうな。とにかく、こっちに戻って来られては困る。
「僕は研究者だから、戦いは得意じゃ無いのに……!」
「泣き言を言うな! お前が決着をつけるって言ったんだろ!」
地面に四つん這いになっているシルフに迫り、思いっきり尻を蹴っ飛ばす。蹴っ飛ばしたシルフを追いかけていく。
後もう3発くらい蹴っ飛ばしたら遊撃隊の位置まで運べるだろうけど…………無理だな、今の2回はシルフが当てさせてくれたんだ。俺が感じた手応えから予測できる距離よりも吹っ飛んでいる。周りの魔物が邪魔しないように……シルフが気を遣ってくれたんだろうな。
「さーて、ここからが本番、アレエエエエエエッ!?」
先ほどと違い吹き飛ばされても構えた状態で俺を待ち受けるシルフ、今度は攻撃などせずに真横を通り抜ける。ここで慣れない揺さぶりをかけようとしたら、逆にボロを出してしまうかもしれない。シルフには申し訳ないが、ここは黙って逃げさせてもらう!
「君らしくない動きだね……でも、研究の為には無茶も必要さ! 罠であってもかかってあげるよ!」
ああもうやっぱり罠ってバレてる……! でも、シルフは引っかかってくれるみたいだし……ついてきたもらおうか!




