戦いの刻は近い……!
とうとう……この日が来た。いや、来てしまったと言うべきか……魔物の大群がハインリヒに向けて進み始めた。斥候チームが急いで報告に戻ってきてから、フォレストハイドで確認してみると……確かに大群はこちらに向けて動き出している。
体力を温存する為だろうか……かなりゆっくりとした速度だな。30分はかかるだろうか……今のうちに準備しておかないとな。
「騎士団、良く聞けぇ! 俺達が最前線で盾となり壁となり、第一の矛となるっ! 覚悟せよ、俺達の働きが勝ち負けに大きく響くと!」
「うおおおおおおおおっ!」
テントの外ではリッターさんの号令と、それに答える騎士団の雄叫びが聞こえてくる。中ではミハエルが各クラスの代表者と話しており……俺の前にはDクラスの3人が集まってきていた。
もうそろそろ……戦闘が始まる。俺が……いや、俺達遊撃隊が真っ先に行うべきなのは、シルフを倒す事だ。守護神獣から授かった神具と、それを元に使いやすくフェルが改造してくれた装備がある……きっと大丈夫。
「今から少ししたら、シルフと……フウと戦う事になる。人間の姿で同情を誘ってくるかもしれないし、魔物としての姿で恐怖を煽ってくるかもしれない……」
シルフは俺達の弱点を正確に見極め、容赦なくそこを突いてくるだろう。いや……確実にそうしてくる。もしかしたら俺達の策や陣形なんてとっくに推測されていて、対策を取られているかもしれない……でも、
「それでも、戦わなければならない時が今なんだ。かつての友達と戦うのが辛くなったら、俺が皆の分まで戦うから……どうか俺を助けて欲しい」
だからと言って逃げるという選択肢は無い。フェルと過ごして、皆と出会って、ユウキが生まれたこの街を護る為には、戦う奴が俺だけになっても戦い続けてやる。
「だけど……もし出来るのなら、シルフは殺したくない。見逃しちゃ……駄目かな?」
皆に怒られるのを覚悟して、言ってみたが……Dクラスの皆には既に分かっていた事のようで、レッカもピグマも、アンさんも笑っていた。
「テメェがそういう男だってのは分かってるからな。まあ、フウの奴は魔物なんだろ? 全力で闘ったって死にゃあしねえとは思うけどよ」
「そういう風に優しいから……私の邪魔をするんですよね……良いと思います。貴方らしい貴方を殺したいから…………従ってあげます」
「僕は元からそのつもりだったよ。君がそう命じてくると思っていたからね」
大きな戦いを前にしても、3人はいつも通りの雰囲気だ。おかげで、こっちも少し気分楽になってきた。そして……覚悟も出来た。必ず……シルフを倒す!




