勇者の翼・炎
だらりと腕を下げ、膝の力を抜く。1度構えを解いて、大きな隙を作る……が、ピグマは動かない。しかし、自分を死なせるような動きをする為に腕を動かそうとすると、ピグマもピクリと動きを見せる。
勇者の翼を使っても良いとは言っていたが……目の前で発動させてくれるわけ無いよな。だったら……新しく考えておいた発動方法を試してみるか!
「使用する事は構わないが、目の前で黙って見ているわけないだろう?」
「そうだな……だったらこうだ」
心臓の辺りに火属性の魔力を集中させる……体が内側から弾き飛ばしそうな莫大なエネルギーを作り出し、ピグマの方へと駆け出した。急な特攻にピグマは戸惑うが、魔力を探ったのだろう。急に表情を変えて、俺から距離を取り始めた。
「しょ、正気か!? そのままじゃ自爆で死ぬぞ!」
「ピグマには言って無かったか……?」
最大限までエネルギーが高まり、俺の体を引き裂く直前にまだ戦いたいと願う。勇者の翼は無事に発動し、翼を形成する魂のエネルギーが心臓に集めていた魔力を取り込んでいく。そのまま勇者の翼を展開したが……いつもより大きく、炎が混じった不死鳥のような翼を形成した。
なるほど……自爆魔法で勇者の翼を発動させると、勇者の翼が属性を纏うのか。学園では炎属性でしか発動できないけど、卒業すれば他の属性でも使用できるようになる。なるほどな……魔力と組み合わせる事も可能なのか。
「この翼の発動条件は死にかける事だ……さあ、まだまだこっちから行くぞ!」
勇者の翼の1部分を体内に取り込み、身体強化を発動させる。いつもの身体強化とは違い、内側から滾ってくるような……これが属性の身体強化か。火属性の属性強化は、確か筋力……つまり攻撃力が上がる効果だった筈。
「くっ……受けて立とう!」
爆発による加速で一気に駆け出すと、ピグマが速度強化で俺を迎え撃つ。超速度でピグマが動くのなら、こっちも超速度で連続攻撃を仕掛ける。右拳と左拳に炎を纏わせての魔力神速連打を叩き込む。だがしかし、ピグマはこの連打をギリギリで躱し続ける。
何とかピグマの動きが見える……身体強化した俺の目なら、ピグマの速度もギリギリ捉える事が出来るか。攻撃力が上がろうと、当たらなければ意味が無い。このまま躱され続けて時間切れを待つのも良いけど、ここは少し攻め方を変えるか。
「炎流貫手!」
「う……ぐっ!?」
腕の軌道を不規則にうねらせて、2本の指で貫手を叩き込む。俺の動きを見ることは出来ても、動きが複雑な攻撃は避ける事は出来なかったようだ。二本貫手はピグマの鳩尾へヒットし、ピグマの動きを止める。
義手だから、一本貫手も可能なんだけど……そこまでやる必要は無い。さて、ここからは柔拳で攻めさせてもらおうか!




