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答え

 俺達の目の前には手足がある俺が地面に眠っていて、フェルがそれを光の消えた瞳で見下ろしている。手に持つのは武器。斬れれば何でも良い。俺の目には片手持ちの剣が握られている。

 夢の世界は俺の想像を映し出している。ちょっとずつ気付いてはいたんだ。


「嘘……フェルちゃんが……?」


(女神シェーン……神には人は創れぬ。産み出し、共に成長させるべきだった)


 偽物の俺の手足をフェルは斬り落としていく。肉の抵抗も感じさせない、骨に躓く様子も無い。あっさりと、4回、その剣は振るわれた。俺の手足は分かれ、フェルは淡々と俺の手足を異空間収納に放り込む。フェルが手を翳すと、俺の手足の傷は塞がれる。

 奪ったのがフェルなら、塞いだのもフェルだ。多分フェルの目的は、俺をフェルに頼り続ける存在にする為だ。


(救うために、傷つける。可能な事を、不可能にさせる。非効率的で効率的な物だな……)


 次にフェルは腹部に腕を突き刺した。血は溢れ出し、地面に流れていく。

 あの時、感じた暖かさは魔力で暖められた水溜まりなんて都合の良いものではなかった。俺の体から溢れ出た血だったんだ。


「嘘……そこから、魔核を……?」


 シェーン……様の言う通り、フェルは魔核を取り出す。血に塗れながら虹色に輝く球体が取り出され、握りつぶされる。そして、フェルは俺の元から離れる。フェルが俺を見つけたのが遅くなって、こうなってしまったかのように!

 考えれば可能性はあった。血の付いた証明書、夢の世界の黒い影、救いのようなフェルの義手、創作のような気付けそうな違和感は有った……なのに、気付けなかった。


「天照……なんで俺に気付かせたんだよ」


 シェーンが座る天照を睨みつける。シェーンが降りると天照は立ち上がり、俺の目を見つめ返した。


(レイジよ、我は言ったな? 女子は混沌の心を持つ……と。決して善とは言えなかった。今の通り、貴様を無力にする事に躊躇いが無かったからな。かと言って悪とも言えぬ。それはレイジ、貴様が理解しているであろう?)


「………さあな」


 答えを濁す俺に、天照は微笑んでくる。


「でもさ、真相を知った事がフェルちゃんにバレなければ……」


(無駄だ。女子は既に知っておる。故に女子は暴走し、今は悪へと堕ちてしまった。故に我は、レイジの夢に現れたのだ)


「レイジ君の夢に……?」


(レイジ次第だがな……さて、問おうか?)


 天照が俺を真剣な表情で見つめてくる。

 天照の来た理由が俺次第……?


(うむ、我は女子の居場所を知っておる。貴様の選択次第では居場所を教えても構わぬ)


「俺の……選択」


(女子に憎悪を持つも当然だ。女子に感謝を捧げるも当然。選ぶが良い、女子への感情を)


 ……当然だが、俺は手足を奪った奴を憎んでた。それがフェルなんて思いもしなかった訳で、知った時は何も考えられなかった。太陽の剣を突き付けられたり、夢で殺されかけたりした時はフェルに裏切られ死にたくなった……それでも…………


「レイジ君……」


(……答えは決まっておるのだろう? 今更、何を悩んでおる)


 そうだ、悩む必要はない。小説の主人公や大成した有名人のように、切り捨てたり、全部許したりしない。平凡と非凡を経験した俺の答え。


「フェルの事なんて好きに決まってんだろ。今のフェルが……手足を奪ってでも俺の傍に居ようとしたフェルでも……好きなんだよぉぉぉぉ!」


 フェルが好きだ! だから、文句言って、許して、無かったことにしてやる。会いに行って、傍に居ろって抱きしめてやる。


(女子がそれを望んでなくともか?)


「当然だ! フェルだって、俺の気持ち無視してんだ。俺だって1回くらい無視しても罰当たんないだろ!」


「うん、当てない!」


 当てるのお前かよ……まあでも、フェルは思い込みが激しい。思い詰める前に、手遅れになる前にフェルの元に行かないと……


(然りだ、そして、よくぞ言った。女子の居場所は天の岩戸。貴様のお望みのヤパンに存在しておる。故にヤパンの我の社へ来い。さすれば、一時的に貴様を1人立ちさせてやる。女子と合流してから、望むものを探すが良い)


「うん、君が行くと決めたなら、私は見守るよ。でも、気を付けるんだよ?フェルちゃんのチートもだけど、ヤパンには転生者が居るんだから……」


 ヤパンに転生者……か。いや、今は考えてる暇は無い。一刻も早く、フェルに会いに行く。

 夢の世界の崩壊は始まる。シェーンも天照も俺に微笑んでくれる。俺が立ち上がると、右腕の鎖が解ける。良かった……これで最後に……


「いや。ここまでややこしくなったのお前のせいだろ! 何。応援する女神ポジションに移行しようとしてんだよ!」


「ですよねー!?」


 太陽の腕からの灼熱の光線で、シェーンにお仕置きを放つ。

 異世界に来たのは良いけど、手足が無くなったのはこいつが俺を気絶させて異世界に送り込んだからな!



「マジかよ……めんどくせえの来るなぁ。やっぱ、平和に暮らす中の恩恵(ギフト)なんていらねぇなあ。うわあ、しかも名前知られてるよ…………でも」


「でも?」


「こいつは良い奴だ。助けてやりたくなる、平凡な男だ。待っててやるよ。“杉谷 零司”」

1人立ちは誤字では有りません。

レイジ……惚れる←

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