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フェルとイチャイチャ まずは朝

 目が覚めた時、信じられない事が起こっていた。信じられなくて、信じたくて……俺は、銀色に煌めく両手で顔に触れた。冷たい感触が顔から伝わる。顔に触れてる、触覚を感じる。

 嘘だろ……鎧のような腕と足が俺の体に装着されている。


「レイジ様、おはようございます」


 俺の横で寝ていたフェルが起き上がり、ニコリと微笑む。肩に置かれているフェルの手から暖かい何かが流れている感覚。これは魔力を義手に供給されているのか?

 足を引き寄せる、膝を曲げる、手を開いたり握ったり、ああ、体がある!


「フェルが……用意してくれたのか?」


 誰かに購入を頼んだわけでもない。なら俺が義手や義足を求めているのを知っているのはフェルしか居ない。ああ、一時的な腕でも、これなら……

 フェルはゆっくりと頷き、俺の正面に移動して頭を差し出す。俺は差し出された頭に銀の仮初の腕を置いた。


「フェル……お前に触れるの。もっと先だと思ってた……」


「私も……レイジ様に触れていただけて……嬉しいです」


 フェルの髪はサラサラとしていて何時までも撫でていたい。手を頬へと滑らせる。この世界に来て初めて触れた人の温もり。

 フェル、お前はこんなに暖かいんだな。俺の傍に、居るんだな。


「フェル!」


「んっ……フフッ」


 俺はまだこの世界(シェーン)に来てから数日しか経ってない。だけど、手足を失い、殺されかけ、魔力も無いと判明して……はっきり言って平凡じゃなくなった事を後悔してた。心が平凡な俺には耐えきれなかった。けれど、フェルが居てくれたから、フェルが支えてくれたから、フェルが見捨てなかったから、俺はまだ生きる事を諦めていない。

 フェルへの想いが、感謝が、爆発して、俺はフェルを抱きしめて、押し倒した。突然の俺の行動にも、フェルは戸惑わず俺を抱き返してくれる。


「……急に抱きついてごめん」


「いいえ、大丈夫です。レイジ様……暖かいですね」


「ハッハッハッハッハ!、朝です………うむ、お若いですな! 失礼!」


 ネルガがドアを開け、直ぐに閉める。違う!確かにイチャイチャしてる自覚は有ったけど!誤解を解かなきゃ!!

 飛び上がり、ベッドから飛び降りる。


「ガッ!? ……痛ってぇ……!」


 床に足が着いた時、手足の感覚が消え、思いっきり転ぶ。鎧は外れ、床にお尻を打ち付けた。……当然立てない。

 何で……?


「レイジ様、アグラ様が常に魔力を供給されなければいけないと言っていたでしょう?」


 フェルがベッドから降りて、指を鳴らす。黒のネグリジェはいつものメイド服へと変化し、散らばった義手と義足を取ってきてくれる。フェルが背中に手を回し、俺の体をゆっくりと起こしてくれ、まず足の義足を着けてくれる。魔力が流れ、足の裏で地面をしっかりと踏む。


「本日は私が魔力を供給致します。私から離れないでくださいね」


「ああ、頼む……」


 更に義手を着けてもらい、握って開いて、感触を確認する。そのまま、久しぶりに現実で立ち上がると、フェルが右腕の義手に自身の腕を絡ませてきた。

 銀の鎧みたいな腕なのに、冷たくないのかな……? それに、腕と義手の中間くらいに、何とは言わないけど当たってる。


「行きましょう、レイジ様」


「まずはネルガの誤解を解かなきゃな……」



 食堂にはネルガにミハエル、マリアちゃんが集まっていて、領主の館で働くメイドさんが、料理を用意してくれている。歩いている俺に、ミハエルとマリアちゃんが目を見開く。


「レイジ……お前、歩いてるのか?」


「うぅ……フェルさんが羨ましい……」


「まずは、ご飯をいただきましょう」


 フェルの言葉にそれぞれが適当に近くに座り、食事を待つ。メイドが持ってきた料理を見て、俺はフォークを右手に取った。

 フォークが手に取れる…それだけの事なのに……涙が……


「レイジ様、あーん」


 フォークを持てた事に感動をしていると、フェルが左手で俺の右肩に触れながら、フェルのフォークにウィンナーが刺されて俺の前で差し出される。

 あれ……? 俺、義手があるんだけどなー?


「あっ……!?」


 フェルが肩から手を離した。服の袖を通っているため、取れる事は無いものの、力が抜けフォークを落とした。

 これ、あれだ、食べないと駄目なやつだ。


「……あ、あーん」


 まあ、いいか。歩けるようになったのもフェルのおかげだし、手足外して抗議されたんなら……

 フェルの差し出したウィンナーを一口、頬張った。

歩けるようにはなったね?(ゲス顔)

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