ピグマの屋敷 攻略完了!!
筋肉!!!!!!!!!!!!!
フリーズした俺は分身フェルによって本体フェルの唇と自身の唇が重ねられてしまう。柔らかい感触とフェルの香りに体が硬直している。
唇が離れ、フェルがゆっくりと瞼を開ける。そこにはルビーのような真紅の暖かい瞳で俺に微笑みかけていた。美しかった銀髪が艶やかな黒髪に染まっていった。
「主人への愛……これこそ私の信念です」
違和感を覚える。分身のフェルの顔を見る。その瞳の色は地球でよく見かけるような光の当たり方で黒とも茶色とも見れるような色だった。あの髪で、あの目の色で思い浮かべるのは……
「ほほーう、妖艶な容姿だ。しかも魔力の質が桁違いだ。私の筋肉が期待で疼いているぞ」
「主人の許可を取らないキス……これだけで神にでも負ける気がしません。ああぁ……ご主人様ぁ……今すぐ勝利をお届けいたします」
熱っぽい視線と蕩けた声、まるで悪魔。それも夢魔の類のように見える。頼めば真似事もしてくれるんだろう。
しかし、要らない。フェルの言った通り、俺が求めるのは勝利。
「神にも負ける気がしない……か。なら、神と並ぶと呼ばれたこの筋肉! 神と並ぶと呼ばれたこの信念!超えて見せよ!」
ネルガの筋肉が膨れ上がる。芸術的な肉体美を保ちながら、ネルガは魔力を無しに自身を強化して……消えた。フェルも飛び上がり、空中を蹴って消える。
いや、空を蹴るとかおかしいでしょ。この異世界では常識なの?
「信じられない……本体も……あのネルガという男も」
「どういう事だ?」
「私は分身とはいえ、本体と同スペックは保持しています。その私ですら、見えないんです。どちらが攻撃しているのか……防御や回避を行っているのかすら、全く分からないんです」
分身のフェルが言った言葉は、信じられない事だった。あの通常のフェルが確認することが出来ない実力。フェルならそこまで驚くことではない。チートの使い方を教えれば簡単とは言わなくても辿り着いただろう。しかし、ネルガは既に筋肉と努力だけで辿り着いていたのか?
何かがぶつかり合う音、どちらかが叩き付けられる音、激しく床が蹴られて地面を抉る音、魔力の収束なく放たれる光線、弾かれた音と共に落ちる剣……何が起きてるか分からないけど、フェル……勝ってくれ。
◆
(フェル……勝ってくれ)
レイジ様の応援に私の体から溢れる桃色に近いような身体強化の魔力が激しく吹き荒れる。ああ、レイジ様から頼られる…なんて幸せなんでしょう。
「悲しい、君の愛には私の筋肉が写っていない。しかし、私の本気を相手に手加減する程に強くなっているのも事実」
「手加減、気付かれていらっしゃるんですね」
放たれる乱打を全て見切って躱し、懐に潜り込む。そこに私はレイジ様の記憶から得た刺されば傷が治らない呪いを与える黒き銛のような槍、ゲイ・ボルガを創造し打ち込む。しかし、ゲイ・ボルガは筋肉に弾かれ、地面に転がる地球の伝説の武器の1つになった。
仮にも最高の武器に、私の最高質の魔力で最高の速度で叩き込んでいるというのに、かすり傷すらつかない。腹が立ってくる。
「私もそうなんだが、この筋肉は武器を持てば使えない。理由は語るまでもないだろう?」
ネルガは地面から自身の肉体で打ち負かしたアロンダイトという名を持つ刃こぼれしない剣を拾い、片手で振り下ろしてくる。しかし、躱す必要はない。その剣は私に届く前にネルガの力に耐えきれずに折れてしまったからだ。
「ええ、私たちが全力を出して耐える剣は一瞬で創造できる訳が有りません。長い時間をかけて、材質、強度、付与する能力……あらゆる手を尽くして製作しなければなりません」
「その通りだ。君も同じであろう? 私の筋肉での攻撃を体で受け止めているというのに、効いている様子が見えんのだ。しかし、君は武器でしか攻撃をしてこない」
ネルガの体がブレ、私の腹部に膝蹴りが決まる。大きく吹き飛ばされるが、空中でくるりと回って着地し服の埃を払う。確かに今の私には、ネルガの攻撃は効かない。前にレイジ様に説明したように言うならば、当たった事にはなっているが0ダメージになっているという感じだ。
「そうですね。ですがそれは貴方の筋肉と違って筋肉の鎧で防いでる訳では無いのですが……しかし、ダメージが無いというのは貴方も同じでは?」
地球であれば伝説になるような、神の呪いが込められた弓を20程創造し、魔力で創造した矢を撃ち出す。しかし、放たれた矢はネルガに当たるも、ゲイ・ボルガのようにかすり傷すら付けられない。
恐らく、彼の体は……
「それが君の手加減ではないか。君も気付いているだろう?私の筋肉は魔力完全無効である事に。つまり魔力での攻撃は完全に無効化される。だと言うのに、先ほどから魔法や魔力で創造した武器でしか攻撃してこないではないか!」
ネルガの渾身の右ストレートを片手で受け止める。そのままもう片方の拳を握りしめ、弓のように引き絞る。
対人データは多少、取れました。それにレイジ様の地球の知識も頂けた。レイジ様へのキスという愛で記憶を引き出さねばなりませんが、役得ですし、レイジ様への愛で強くなれるなんて嬉しい。
「ならば、これで終わらせましょう」
身体強化を解除する。イメージするは闘気。体から橙色のオーラが溢れる。これもレイジ様への愛で目覚めた力。
「私の筋肉が敗れるか……これもまた人生よ」
拳を振り上げ、顎を撃ち抜く。レイジ様の要望通りに殺す気で撃ち出しましたが、彼は気絶しただけでした。骨折の手応えも感じません。
「貴方の筋肉……勝ちはしませんでしたが、敗れたとも言わないでしょう」
殺せなかった。しかし、レイジ様のオーダー通りですから、良しと致しましょう。
今回、主人公とフェルのしたキス(唇を閉じて触れ合う程度のキス)はプレッシャーキスと言うそうです。
一般的にはフレンチキスと呼ばれてますが、間違いだそうです。
逆にフレンチキスは舌を絡めあう、ディープキスの一種だそうです。
色々合ったんで、皆さんも調べてみてくださいね←




