依頼 タコボウズ撃破
俺の体を中心に、球体上に広がっていく闘気。タコボウズの動きを捉えた……って、これは!?
「鋼水変形盾!」
右腕を簡易的な盾にして、タコボウズの素早い攻撃を防ぐ……が、盾が薄く衝撃に耐えきれずに、体が大きく吹き飛ばされる。
コイツ……腕代わりの足を解いて、攻撃してきやがった。素早い動きへの対応策もあるって訳か……!
「空気変化道……よっ!」
空気の道を作り出し、鋼水の踏み場を作ってその場を離れる。鋼水の踏み場に脚が振り下ろされ、海底に叩き落された。
壊れる事は無いが……叩き落されるのは海の中でもマズそうだ。鋼水粘液も通用するとは思えないし……というか、何処を攻撃すれば良いんだ?
「レイジ様、タコボウズは打撃が効くはずです!」
打撃か……相当デカい鋼水を頭にブチかましてやらないと、大したダメージになるとは思えない。問題は……デカい鋼水を作り出すのは時間がかかる。
「ウオッ!」
素早い2本の足がこっちに迫ってくる!? 空気の道を作り、足の間をすり抜ける。鎧を掠ったが、問題なっ!?
「吸っ……盤……? 引き寄せられるっ!?」
鎧の腕部分に吸盤が張り付き、俺の体は後ろに引っ張られかける。このまま捕まってるのはマズイ……左腕の鎧を全て普通の水に変化させ、体の自由を取り戻す。
離れても不利だ……むしろ近付いて張り付いてぶん殴る!
「ハァァァアアアッ!」
空気変化道でタコボウズまでの一直線の道を作り出す。小さな踏み場を蹴り、タコボウズの頭らしき方向へと突進する。鎧が残っている右腕に更に鋼水を纏わせ、殴る為に大きく、硬く、重く!
「オオオオオオオッ!」
タコボウズの腕に勝るとも劣らない鋼水の右腕。タコボウズは雄叫びを上げ、対抗するかのように足を束ねなおして拳を突き出してくる。
上等だ……! 俺は、お前を正面から……
「ブッ飛ばすっ! 水中突撃徹甲弾!」
俺の右腕とタコボウズの腕がぶつかり合う。強烈な水流に右腕が肩から引き千切れそうだが……負けてられるか。ここは無茶してでも……!
「はい、そこまでです」
フェルの声がした直後、俺の右腕が切り離される。そのまま誰かに抱きかかえられ、タコボウズの頭上に転移させられる。
あのまま、殴り合っても……負けが見えていたからな。仕方ない、フェルの力を借りるか。
「テザリングゴッデス! さあ、レイジ様!」
フェルの魔法らしき鎖状の魔力が、タコボウズの体をガッツリと縛り上げる。後は、タコボウズをぶっ潰せるほどの鋼水を、真上に作ってやるだけだ。さっきの一撃よりも大きく、硬く、重く……
「ちょっ! タンマ、そんなんで潰したら、食材として使えないし! どうにか原型は保ってよ!」
「……マジか。フェル、頼めるか?」
「勿論です」
フェルが指を鳴らすと、瓶からコルクを抜いたような軽快な音が鳴り、タコボウズが膝から崩れ落ちていく。
……俺1人じゃ、倒す事が出来なかった。次があるか分かんないけど……もし、戦うとしたら、ちゃんとフェルの力を頼ろう。水の中でも十分な機動力が確保できた。使い慣れればもっとジグザグとした動きも出来るはずだ。
本日の余談
レイジ:今回は無理矢理な単語が多かったな……
フェル:因みに、ブレイクウォーターは防波堤。アンダーシートンネルは水底トンネルという意味です。ピアシングショットはアーマーピアシングショットで徹甲弾となります。所で、レイジ様。
レイジ:なんだよ?
フェル:ハンドガンやショットガンは地球のゲームでよく見かけますが、ブレイクウォーターなんて滅多に聞きません。なのに初めて使う時も、ガッツリ技名言ってますよね? 何故なのでしょう?
レイジ:確かに……なんでだろ?