依頼開始 地上との違い
ウンディーネの依頼は簡単な食材の調達だった。ご飯を食べているフェルには……伝えなくて良いか。ヤバくなったら呼べば良いし、折角俺の故郷の料理を楽しんでるんだ。邪魔したくない。
「名前の限り、そこまで危なそうに思えないし……俺1人でも充分だろ」
無限変化水流の左腕もあるから、フェルから離れても問題は無い。それに……皆の為に戦うと決めた。だったら、俺自身が経験を積んで、少しでも皆の役に立てるようにならないとな。
「じゃあ、行こっか! 着いてきて頂戴!」
ウンディーネが城の出口へと泳ぎ始める。俺も鋼水の脚をフィンに変え、後を着いていく。
海の中での戦闘か……さっきの激流飛拳の感覚を考えると、一筋縄では行かなそうだ。
◆
ウンディーネが依頼してきた食材は3種、どれも生き物だ。今はその1体目、ヤマタノウツボの住処の近くに来ていた。妻石の原石を採取した岩柱の近くにある、巨大な海底洞窟のような巣穴。
……名前を聞く限り、頭が8つあるウツボなんだろうな。危なそうでは無いが……厄介そうではある。
「それじゃ、ユーシャ様。行ける?」
「ちょっと待ってくれ」
流石に水着で戦ったりしたら、攻撃を喰らったら一撃で死にかねない。体の周囲の水を黒い鋼水に変化させ、更に鎧の形に変化させて体に纏う。軽く叩いてみると、コンコンと良い音が鳴る。
物理攻撃も魔法も防ぎ、軽くて扱いやすい……水があれば簡単に用意できるなんて……やっぱ、変化の性質は便利すぎる。
「良し……行ってみる!」
ヤマタノウツボの住処へと駆け出そうとした時だった。体がふわりと地面から離れ、上手く走る事が出来ない。
そうか……水の中だから、1歩でも踏み出せば体のコントロールが効かない! と、なると……泳いで戦うしか無いのか?
「ユーシャ様、来てるよ!?」
俺の目の前にポセイドンと同等の大きさの8つの頭を持つ魔物、ヤマタノウツボが現れた。地球のウツボの頭が8つに分かれているような姿、あっちと比べて牙も多く、何よりデカい。
1つの頭が素早くうねって頭突きをしてくる。両手を前で交差してガードの姿勢をしてみるが、正面衝突。衝撃が腹か背中へと駆け抜け、大きく体を持って行かれる。
「ガハッ!?」
体の酸素が吐き出され、気泡となって吐き出されていく。が、鎧が軽減してくれたようだ。少し息苦しいが、呼吸はそこまで乱れてない。実際にぶつかった両腕がビリビリ来ただけで、ダメージは少ない。
「ちょっ! 囲まれてるし!?」
吹き飛ばされる先の水を鋼水粘液に変化させ、体を受け止めてもらったが……その隙に俺の周りをヤマタノウツボの頭が囲んで、鋭い蛇のような目つきで睨んでいる。
なるほどな……これが海の中って事か……! 面白くなってきた!
海 特徴
・水生生物以外、動きが鈍くなる
・風属性以外、走る事が不可
・打撃属性のダメージが軽減される
・火属性の魔法が発動不可
久しぶりにゲームっぽく!