アタシの能力
フェルとシーがガツガツと食べ続ける中、お腹が満たされた俺は食堂の外で休憩していた。
いやあ、水の中でもご飯ってちゃんと食べれるんだな。フェルは闘気の回復の為に、まだまだ食べそうだし……ん?
「やっほー、ユーシャ様は満腹?」
「ああ、とっても美味しかったよ。ご馳走様」
食堂から出てきたのはウンディーネだった。食事の感想を告げると、子供のような無邪気な笑顔で返してくれる。さて……試してみるか。
「悪いな……激流飛拳!」
俺の鋼水の右腕が、水を掻き分けてウンディーネへと迫っていく。間違いなく顔面直撃のコースだったのだが……
「魔力で運命を捻じ曲げる……アヴォイドダンス」
ウンディーネが呪文を唱えると、確実に当たる軌道だった俺の右腕が急に向きを変える。軌道が逸れて俺の右拳は壁に吸い込まれた。
やっぱり……こうしてフェルの一撃も避けた。いや、避けてもらったのか。
「マジでびっくりしたっ! 右腕飛ばしてくるとか予想外だし!?」
「魔力で相手の攻撃を捻じ曲げたんだな……?」
詠唱自体は簡単な下級魔法だった。多分、下級魔法しか逸らせないような弱い魔法なんだと思う。だけれど、マーメイドが魂へ直接魔法をかけているなら……話は別だ。
こっちの魂に逸らす様に訴えかければ……フェルですら攻撃を逸らしてしまうって訳か。
「バレちゃったかー、でも戦う気は無かったのホントだし! てか、アタシはこの回避魔法以外は使えないから! 特に攻撃魔法とか超苦手なんだもん!」
「分かってるよ。そのつもりなら毒でも仕込んでただろうしな」
もしそうだったしても、フェルが気付いてただろうし……多分。
「アタシは毒なんて仕込まないし! オルクスにだって料理人としてスカウトされてるんだからね!」
確かにあのたこ焼きやお好み焼きの美味しさを考えれば……納得できる。だけど、料理人がオルクス四天王って言うのは……気になるな。
「それで回避魔法が見込まれてオルクス四天王になったのか?」
「まぁね! ……あっ」
なるほど……回避魔法が見込まれたのか。ウンディーネは表情に出ちゃうな。
これで判明した四天王も3人。1対1に優れたサラマンドラに、守護神獣すら洗脳するヴォルテール。そして、フェルの攻撃すら逸らしてしまうウンディーネ……それぞれが強力な能力を所持している。となれば……
「風の四天王が気になるな」
「いやいや、それは流石に……無理っしょ」
「誰か……教えてくれないかなー?」
ウンディーネは押せば、教えてくれる気がする。このチャンス、逃しは出来ない!
「えー……しょうがないなぁ。アタシの手伝いしてくれたら教えてあげる」
手伝いか……良し、やってやる!