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オツェアーン名物料理

 案内されたのは城の食堂だった。地上よりも机と椅子が少し高めに設置されてるのは、マーメイド達が尾ヒレをあまり折り曲げないで済むようにする為か……座ると爪先が床に着くか着かないかギリギリだな。


「よーし、作ってくるからこれでも飲んで待ってて」


 そう言ってウンディーネがキッチンから取ってきたのは、大きな泡の中にコップが入っていてストローが突き刺さったものだ。

 飲んでって言う事は飲み物なんだろうけど……これは一体?


「シー、これって水なのか?」


「そうよ。マーメイドは普通の水を飲む事で、食道や胃の中の塩を洗い流す必要があるの、だから、海の水を真水に変えて飲めるようにするのよ」


 なるほど、マーメイドも水を飲むんだな。となると、この泡は水と海水が混ざらないようにする為か。他の料理も泡に包まれて出るんだろうか?

 それにしても……


「ハァ……」


 フェルの落ち込み具合が激しい……未だに顔を俯かせ、一言も喋らず、椅子に座って溜め息ばかりだ。心の声で呼びかけても返事をしてくれないので、念話も聞いていない。

 フェルにとって攻撃を完全に避けられたのはかなりショックなんだろう。しかも、大して魔力を持たないウンディーネにというのが、な……


「フェル、そう落ち込むなって。慣れない水の中だったし、ウンディーネだって偶然避けたかもしれないだろ?」


「いえ……あの動きは完全に見切られた動きです。レイジ様が思っていた通り、私は力でゴリ押ししか出来ないから避けられてしまったのでしょうか……」


 フェルめ……ちょっと根に持ってるのか。でも、ウンディーネは見切った……のだろうか? 正直言って目に見えるような一撃じゃ無かった。だとしたら、フェルがわざと外した……なんて、まさかそんな事。

 と、考えているとテーブルの上に泡が包まれた大皿が置かれる。


「はーい、まず簡単なものからね! オツェアーン名物、ラビフィッシュ!」


 大皿に盛りつけられていたのは、花弁のようなオレンジ色の魚肉……これって刺身か!? 色からして、これはサーモンだな。そうか、マーメイドなら当然、海で取れる物を食べるよな。まさか生で食べるとは思わなかったが。


「これは……生の魚ですか?」


「その通りっしょ! ニンゲンは生もの食べる文化が無いと思うけど、めっちゃ美味しいんだから!」


「そ、そうですか……レイジ様は……あれ?」


「へえ! 醤油みたいなものがあるんだな! うわっ、舌の上で蕩けそう……美味い」


 この異世界でも刺身が食べれるなんて! ハインリヒじゃ魚なんて店にすら出てないし、ヤパンでも刺身は神様専用って食べさせてもらえなかったし、もうシェーンじゃ食べれないのかもと諦めていたけど……まさか、食べれる国が海の中にあるなんて!


「へえ、レイジって刺身に抵抗が無いのね。ニンゲンは結構、刺身を食べないのよ?」


「まあ、ちょっと事情があってな。フェル、お前も食べてみろよ。美味い物食えば、ちょっとは元気出るだろ」


「……レイジ様がそう言うなら、いただいてみます」


 フェルは恐る恐る刺身を手で掴み、醤油の味がする茶色の調味料を少し付ける。そのまま、口に入れ噛み始めると……目がほんの少し輝いたような気がする。


「……美味しいです!」


「でっしょ! 他にも色んな料理あるから、食べちゃって!」


 久々の刺身は……ちょっとズルいかな! 色んな疑いが吹っ飛んでしまう!

本日の余談


レイジ:刺身は料理なのか……?


ウンデ:捌くの大変だし、料理っしょ!

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