アタシ、戦う気無いんですけど?
ウンディーネか……確かに魔力を探れば、弱そうな魔力だ。フェルは疎か、俺でも勝ててしまいそうな魔力量。武器になりそうな物も持ってないし……強いて言うならその胸が武器に……いや、止めとこう。
「というか、噂のユーシャ様は何してんのー?」
ウンディーネは気軽に俺の肩に手を回してくる。
なんなんだ……俺達は一応、敵同士だぞ? しかもオルクス四天王なんて……しかもあのサラマンドラやヴォルテールと同じ役職なんだろ。それなのに……敵意を全く感じない。
「無視すんなしー! そんなにアタシの事信用できないんだ?」
「……自己紹介が強烈だったからな」
「レイジ様、原石の掘り出し作業が完了……どなたです?」
フェルが超弩級の青い宝石を持ち上げて戻ってくる。凄いな……この原石、小さな家位はありそうだ。それを軽々と持ち上げて、人魚の姿で泳ぎまわるフェルは……やっぱ頼れるな。
……じゃ、なかった。この状況をどう説明すれば……?
「あーっ! もしかしてサラマンドラが褒めてたメイドちゃんっしょー!? マジ凄いんですけど?」
ウンディーネはスルりと俺から離れ、フェルの方へと泳いでいく。が、フェルは岩を真上に異空間収納の門を開き片付けると……
「……あれっ?」
「もーっ! 戦う気無いって言ってんじゃーん!」
俺は……夢でも見ているのか? 近付くウンディーネを、フェルは確かに迎撃しようとした。放たれる必殺の手刀、天照に鍛えられた俺の目でも見えない速さの一撃を……ウンディーネは避けて、フェルに笑顔で抱きついていた……?
嘘だろ……コイツ、実はとんでもない奴なんじゃ……
「ほーらっ、もう戦う気無いんだから、ユーシャ様も武器収めてよ! 一緒にオツェアーン戻ろ!」
……今、ウンディーネと戦うのは得策じゃない。何より……
(申し訳ありません……申し訳ありません……申し訳ありません……)
フェルの精神的ショックが流れ込んでくる。この状態のフェルに戦ってほしいなんて頼めない。相手の言葉を信じるしか無いか……最悪、無限変化水流の左腕なら時間を稼げる……と良いんだけど。
「あっ、ウンディーネさん!」
「ウンディーネさん、お帰り」
「わーい、おっひさしぶりー!」
「チィーッス! 元気してたか?」
……有名人みたいだな。どうやらオツェアーンが故郷っていうのは本当みたいだ。目的の妻石の原石も手に入ったし、とりあえず、オツェアーンに戻るとする……
「あっ、そうだ! ユーシャ様もアタシの料理食べるっしょ?」
料理……? 魔物の料理!? 何が出てくるのか……気になるけど、オルクス四天王が作るのは……怖いな。